SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の内容と日本の取り組み例とは
- コラム
政治や教育、ビジネスなど、最近さまざまな場面でよく目にする「SDGs」。SDGs17の目標のうち、SDGs目標4は、「質の高い教育をみんなに」と設定されています。質の高い教育はなぜ必要なのか? どうやったら目標は達成できるのか? 今回は、SDGs目標4の内容と意義、さらに日本における取り組み事例について紹介します。
SDGsとは?
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。SDGsは17の目標、169のターゲット、232の指標から構成された国際目標で、2015年9月に開催された国連サミットで全会一致で採決されました。各目標は互いにつながっており、先進国を含むすべての国がアクションを起こし、2030年までに達成することを目指しています。
SDGs 目標4 質の高い教育をみんなに
SDGsの17の目標のうち、目標4が「すべての人に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」です。
(画像引用元:SDGsのアイコン|国連広報センター)
世界には学校に通うことのできない子どもたちや、文字の読み書きができない人が多くいます。また、貧富やジェンダーによる教育格差もあります。教育課題があるのは、日本も例外ではありません。世界各地にあるさまざまな教育課題を解決して、すべての人に包括的な質の高い教育を提供することで、持続可能な開発につながると考えられています。
世界の教育課題についてのより詳しい記事はこちらから
Teach For Japanの取り組みについてはこちらから
10のターゲット
目標4は、さらに10のターゲットにわけて捉えることができます。目標4を構成している10個のターゲットは、以下の通りです。
※表は横にスライドできます。
4.1 | 2030年までに、すべての女児及び男児が、 適切かつ効果的な学習成果をもたらす、 無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。 |
4.2 | 2030年までに、すべての女児及び男児が、 質の高い乳幼児の発達支援、 ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、 初等教育を受ける準備が整うようにする。 |
4.3 | 2030年までに、すべての女性及び男性が、 手頃な価格で質の高い技術教育、職業教育及び大学を含む高等教育への 平等なアクセスを得られるようにする。 |
4.4 | 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、 雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた 若者と成人の割合を大幅に増加させる。 |
4.5 | 2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、 障害者、先住民及び脆弱な立場にある子どもなど、 脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。 |
4.6 | 2030年までに、すべての若者及び大多数(男女ともに)の成人が、 読み書き能力及び基本的計算能力を身に付けられるようにする。 |
4.7 | 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、 人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、 文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、 全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な 知識及び技能を習得できるようにする。 |
4.a | 子ども、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、 すべての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。 |
4.b | 2020年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、 ならびにアフリカ諸国を対象とした、 職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、 先進国及びその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を 全世界で大幅に増加させる。 |
4.c | 2030年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国における 教員養成のための国際協力などを通じて、 資格を持つ教員の数を大幅に増加させる。 |
なぜこの目標が必要なのか?
10のターゲットからわかるように、世界には学校に通うことができない子どもがまだ多くいます。その要因はさまざまあり、高い貧困率や武力紛争などの緊急事態が子どもたちを学校に通うことを阻んでいます。
また、同じ国のなかでも女児や農村部に住む子ども、障がいを持つ人や少数民族は教育受ける機会が狭められているなど、ジェンダーや地域などの違いは教育機会の格差にもつながっています。教育を受ける機会がないと、文字の読み書きや基本的な計算の能力も身に付けることができません。
このような状況では、就ける職業も限られてしまいます。また学校に行くことができても、黒板や教科書といった学校の設備が整っていなかったり、教えられる先生が十分にいなければ、質の高い教育を行うことが難しくなります。
すべての人が初等・中等教育を受ける機会が得られるようになると識字率が上がり、さらに職業訓練の平等な機会が提供されるとジェンダーや貧富などによる格差の解消につながります。格差を解消することで、質の高い高等教育機会を全世界で提供できることにもつながります。だからこそ、目標4にあるように「質の高い教育をみんなに」行き渡らせることは大切なのです。
またSDGsの目標はそれぞれつながっていることから、目標4の達成は他の目標の達成にもつながり、他の目標の達成は目標4の達成にもつながります。
SDGs目標4達成のための日本における取り組み
ここまで、SDGsの目標4の内容と意味についてご紹介しました。ここからは、日本におけるSDGs目標4達成のための取り組みについて、日本政府、民間企業・団体、教育機関の3つの視点にわけ、具体例をみていきたいと思います。
日本政府による取り組み
日本政府は国内と国際協力の両面でSDGs達成のために取り組むため、総理大臣を本部長、官房長官、外務大臣を副本部長、全閣僚を構成員とした「SDGs推進本部」を2016年に設置しています。また日本の取り組みの指針として「SDGs実施指針」があり、この指針をもとにSDGs推進のための具体的施策をとりまとめた「SDGsアクションプラン」が毎年決定されています。
ここでは、目標4の教育に関する取り組みの例を紹介します。
・アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(African Business Education Initiative for Youth)
ABEイニシアティブとも呼ばれるこのプログラムでは、アフリカの若者が日本の大学や大学院で教育を受けるとともに、日本企業でのインターンシップに参加する機会を提供しています。なかでも、JICAが行っている「修士課程およびインターンシップ」プログラムでは、アフリカ諸国で産業開発を担う優秀な若手人材を日本へ受け入れ、日本の大学での原則英語による修士課程教育と企業見学・インターンシップ実習を実施しています。
・持続可能な開発のための教育(ESD)
持続可能な開発のための教育とは、「Education for Sustainable Development」の訳で、ユネスコが主導している持続可能な社会を創造する担い手を育てる教育です。ESDの実施には、人格の発達や人間性を育むこと、他者や社会、自然環境との関係性を認識した、「関わり」や「つながり」を尊重できる個人を育むこと、この2つの観点が特に重要視されています。
(画像引用元:ESD(Education for Sustainable Development)|文部科学省)
日本政府は、SDGsの目標4と他の目標のためにESDを重要な原動力として主流化するように努めるとしています。
参考
ESD(Education for Sustainable Development)|文部科学省
G20 持続可能な開発のための人的資本投資イニシアティブ ~包摂的で強靱かつ革新的な社会を創造するための質の高い教育~ (骨子)|外務省
・みんなの学校プロジェクト(School for All)
日本の国際教育協力として有名なものの一つが「みんなの学校プロジェクト」です。地方行政と地域住民のコミュニティによる学校運営を支援することで、保護者や住民の教育への意識に変化を与え、子どもたちの学びの質を向上しています。
参考
【アフリカ・教育】【JICAの教育協力(1/6)】Dream ~みんなの学校が開く未来~
民間企業・団体による取り組み
・パナソニック株式会社
パナソニック株式会社では、SDGs達成貢献のために「ソーラーランタン10万台プロジェクト」を行っています。このプロジェクトは特にSDGsの複数の目標に着目し、目標7(エネルギーをみんなに そしてクリーンに)を通じて、目標3(すべての人に健康と福祉を)、目標4(質の高い教育をみんなに)、目標5(ジェンダー平等を実現しよう)につなげ、さらに目標1(貧困をなくそう)の達成につなげる内容になっています。特に目標4に関する取り組みとしては、カンボジアで活動するNPOやNGOなどにソーラーランタンを寄贈したことで農村部でランタンを使った夜の識字教室が開かれ、識字率の向上につながったことなどがあげられます。
参考
COMMITMENTS | 100 THOUSAND SOLAR LANTERNS PROJECT|Panasonic
・認定NPO法人Teach For Japan
TFJは、世界60ヵ国以上に広がるTeach For Allというグローバルネットワークの一員で、「すべての子どもが、素晴らしい教育を受けることができる世界の実現」をビジョンに活動する認定NPO法人です。
主な事業は、教育をより良くしたいと考える多様な人材を、選考・研修を通して育み、自治体との連携により、2年間「教室」に教師として送り出すフェローシップ・プログラムの実施です。応募の時点で教員免許状の有無は問わず、選考や赴任前の研修プロセスを経て、臨時免許状や特別免許状を活用し教員になることができます。
Teach For Japanについてはこちらから
教育機関での取り組み
・国立大学法人岡山大学
岡山大学はアジアで初めてユネスコチェアの認定を受けた大学であり、SDGsを推進しており、SDGs達成に貢献するために先ほど触れたESDについても推進しています。
特に、ESDの教師教育を積極的に推進しており、教師教育推進に向けた国際研究拠点の構築を行っています。その他にも、SDGsに特化した大学のWebサイトがあり、大学の研究・活動とSDGsの取り組み事例が紹介されています。
・江東区立八名川小学校
江東区立八名川小学校では2010年から全校体制でESDを中心とした教育を進め、ESDを中心にSDGsを推進してきたことから第1回ジャパンSDGsアワード特別賞(2017年)が授与されました。
具体的には、教育実践の中から主な取組の単元名や実施学年を「SDGs実践計画表」にまとめたり、「八名川まつり」に毎年参加して、子どもたちがSDGsに関する取り組みを通じて学習・実践したこと、考え・感じていることなどをまとめてプレゼンテーションを行うなど、学校全体でSDGsに取り組んでいます。文部科学省の「教育現場におけるSDGsの達成に資する取組 好事例集」では、八名川小学校の実際の資料なども見ることができます。
第1回ジャパンSDGsアワード以降も、第3回に徳島県上坂町立高志小学校(2019年)、第4回に川崎市立平間小学校(2020年)が特別賞を受賞しており、引き続き、教育現場でのSDGs活動は注目を集めています。
参考
江東区立八名川小学校|文部科学省
SDGsパートナーシップ賞 川崎市立平間小学校|外務省
SDGsパートナーシップ賞 徳島県上坂町立高志小学校|外務省
SDGsパートナーシップ賞 江東区立八名川小学校|外務省
まとめ
今回はSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」について、その内容と意義、日本での取り組み事例についてご紹介しました。SDGsは一個人や一企業、一政府によって達成できるものではないからこそ、さまざまなセクターが目標達成のために取り組むことが大切です。一人ひとりがまずSDGsと各目標について詳しく知ることで、SDGs達成に貢献できるのではないでしょうか。
参考
2030アジェンダ|国連広報センター
目標4: 質の高い教育をみんなに|国連開発計画(UNDP)
持続可能な開発目標(SDGs)推進本部
平和と成長のための学びの戦略|外務省
ESD(Education for Sustainable Development)|文部科学省
G20 持続可能な開発のための人的資本投資イニシアティブ ~包摂的で強靱かつ革新的な社会を創造するための質の高い教育~ (骨子)|外務省
教育現場におけるSDGsの達成に資する取組 好事例集|文部科学省
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