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コラム column

教師必見!「令和の日本型学校教育」を担う教師に関する今後の3つの方向性

学校教育の将来を考える際に、欠かせないのが教師の存在です。最近では、教師に対し資質・能力・研修などを求めるだけではなく、「教師のため」に彼らを取り巻く環境も変わっていく必要性が重視されています。今回、中央教育審議会(以下、中教審)が2022年12月に公表した『「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等のあり方について〜「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成〜(答申)』の要点を2記事にまとめて紹介します。

「令和の日本型学校教育」と教師

中教審は2021年に「すべての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学び」が「令和の日本型学校教育」であるとのまとめを公表しました。それ以来、新しい学習指導要領の着実な導入や、様々な政策の制定、細かい改革の方向性が示されてきました。

そして2022年12月に、教師を取り巻く改革の方向性をまとめた答申が公表されました。まず、「令和の日本型学校教育」の実現に向け、教師の役割が、どの様に位置付けられているのか見てみましょう。

「令和の日本型学校教育」を担う教師について

中教審は、答申のはじめに、教師の、そして教師を取り巻く環境の重要性を、次のようにまとめています。

学校教育の成否は、教師の力に大きく依存していることは言うまでもない。今後、「令和の日本型学校教育」を実現できるかどうかも、時代の変化に応じた高い資質能力を身に付けた教師の安定的な確保と、教師のライフサイクルの変化も踏まえ一人一人が生き生きと活躍できる環境の整備にかかっている。

同時に、一人一人の教師の力だけで学校現場が抱える多くの課題を解決することは困難である。校長をはじめとする学校管理職のリーダーシップの下で、多様な専門性を有する質の高い教職員集団を形成し、組織の力で一人一人の児童生徒等に向き合っていく、そして国及び地方自治体が支える、という姿の実現を期待するものである。

(引用元:『令和の日本型学校教育』を担う 教師の養成・採用・研修等の在り方について(答申), p.4, 太字筆者追加)

この引用部分からわかるとおり、今後、教師に対し資質・能力を求めるだけでなく、教師を取り巻く関係者・環境も変わっていく必要性が強調されています。

教師に焦点を当てた3つの方向性

中教審は、今後の方向性を大まかに3点にまとめました。

①新たな教師の学びの姿の実現

まず初めに、教師自身の学ぶ姿が変わっていく必要性に言及しています。

子供達の学び(授業観・学習観)とともに教師自身の学び(研修観)を転換し、「新たな教師の学びの姿」(個別最適な学び、協働的な学びの充実を通じた、「主体的・対話的で深い学び」)を実現。(引用元:p.22)

児童生徒の「主体的・対話的で深い学び」に並行し、教師の学びのも、教師の主体性を尊重する重要性が強調されています。児童生徒のロールモデルとなる、「変化を前向きに受け止め、探究心を持ちつつ自律的に学ぶ教師」を育むことを目指し、教師たちは、自らの目標設定や振り返りを踏まえ、行動に移していくことが求められます。

これまでの時代の学校教育を経験した教職員の中には、個々の主体性を重視した学校教育を受けたことがなく、2020年の学習指導要領改訂当初、戸惑った方々もいます。「主体的・対話的で深い学び」を掲げる平成29・30・31年改訂学習指導要領の体現に向けても、教師自身が主体性のある学習者であることが期待されます。

また、現職教師の研修の在り方だけでなく、養成段階についても言及しています。

教職大学院のみならず、養成段階を含めた教職生活を通じた学びにおいて「理論と実戦の往還」を実現する。(引用元:p.22)

上述の方向性に関する説明をもとに、「理論と実践の往還」を簡単に図示化してみました。

具体的には、理論知(学問知)と実践知の両方が重要であることを踏まえ、理論を現場での実践に応用でき、現場での実践を理論に基づいて省察できる教師の育成を指しています。このような省察力のある教師を育てることは、今後の日本型学校教育で重視する「子供一人一人の学び」を支えになると考えられています。

②多様な専門性を有する質の高い教職集団の形成

学校組織のレジリエンスを高めるために、教職員集団の多様性が必要。

教師一人一人の専門性を高めるとともに、民間企業等の勤務経験のある教師などを取り込むことで、教職員集団の多様性を一層向上させる。(引用元:p.24)

学校を取り巻く多様な課題に対応するためには、教師一人一人の資質能力の向上に加え、学校が組織として進化し、教職員の集団としての多様性を強化し、レジリエンスを高める必要があるとまとめられています。そして、教師だけでなく、学校現場に携わる人材が一貫となって児童生徒の教育に対応する、「チームとしての学校」の理念の重要性が改めて強調されています。

また、教師の多様性の強化に向けては、教師やカウンセラー、部活指導員など、それぞれの教職員が専門性を活かすだけでなく、民間企業での社会人経験がある人材が教師として働くケースが増えることが期待されています。

学校管理職のリーダーシップの下、心理的安全性の確保、教職員の多様性を配慮したマネジメントを実施。(引用元:p.24)

教職員各々の最大限なパフォーマンスに不可欠な心理的安全性を確保するために、業務量の改善、働き方改革だけでなく、学校管理職のリーダーシップが一層重要になるとまとめられています。

特に、これまで必要とされてきた資質能力に加え、「令和の日本型学校教育」において要となる資質能力も整理されました。

③教職志望者の多様化や教師のライフサイクルの変化を踏まえた育成と安定的な確保

多様な教職志望者へ対応するため、教職課程の柔軟性を高めることが必要。(引用元:p.25)

現在の教職課程の規制、学生や免許取得を目指す者への負担を踏まえ、今後は、教職課程の柔軟性を高める必要があるとされています。

更に、教職課程の見直しに加え、2つの対応点が挙げられています。まず、各教育委員会は、志願者に選んでもらえるよう、教員採用の在り方を見直しをするよう求められます。そして、国に対し、教員採用試験の時期の見直し及び入職ルートの研究を呼びかけています。

産休・育休取得者の増加、定年延期など、教師のライフサイクルの変化も見越し、採用や配置等における工夫が必要。(引用元:p.25)

教師のライフサイクルの尊重と、安定的な教師の配置を両立させるために、臨時的任用教員の活用が期待されています。また、臨時教員の採用の在り方だけではなく、彼らの研修等についても改善する必要性が強調されています。

今後の方向性とTFJの活動の親和性

今回の答申でまとめられた今後教師を取り巻く改革の方向性はTeach For Japanのフェローシップ・プログラムと親和性があります。

フェローシップ・プログラムでは教育をより良くしたいと考える多様な人材を、選考・研修を通して育み、2年間教師として学校現場に送り出しています。社会人経験のあるフェローも多いため、今後の方向性の一つである、多様な教職員集団の確保に繋がる活動と考えられます。また、赴任前は、フェロー候補生が自ら問いを立て、答えを考えるという学習観を大切にした研修を実施しています。教師自身が主体的な学習者であることが強調される今後の方向性に対応した研修モデルと言えます。

まとめ

今回、2022年12月に公表された教師に関わる改革の方向性をまとめた答申の要点をご紹介しました。全てが新しい観点というわけではないですが、整理された3点の方向性は、今後の学校教育を見据える上でとても重要と言えます。そして、教師に何かを求めるだけでなく、教師のために様々な事柄が変わっていく必要性の認識も、とても肝心です。教師なくして、学校教育は成立しません。変化が見えにくい節もある学校教育ですが、今後、計画が実行されていく過程に引き続き注目してきましょう。

参考:
『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について~「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成~(答申)本文

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