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コラム column

「令和の日本型学校教育」を担う教師に求められる資質能力と53の改革具体策

昨今、日本では「令和の日本型学校教育」の実現に向けて継続的に議論が行われています。中央教育審議会(以下、中教審)は2022年12月に、教師に関する改革の方向性をまとめた、『「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等のあり方について〜「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成〜(答申)』を発表しました。後半記事では具体的な改革計画や、複数のステークホルダーと連携し改革を進めていくビジョンを紹介いたします。

教師の養成・採用・研修等の改革に向けて

文部科学省は近年、「令和の日本型学校教育」の実現に向け、35人学級、教科担任制、平成29・30・31年改訂学習指導要領の導入と、様々な視点から制作を打ち出してきました。そして、中教審は、教師に関して改革の必要がある事項及びその方向性を示した答申を2022年12月に発表しました。

前半記事では、今後の改革の大まかな3つの方向性について紹介しました。
①「新たな教師の学びの姿」の実現
②多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成
③教職志願者の多様化や、教師のライフサイクルの変化を踏まえた育成と、安定的な確保
>前半記事はこちらから。

本記事では、教師に求められる資質能力、そして、改革の具体策を見てみましょう。

令和の教職員像と教師に求められる資質能力の5つの指標

今回の答申の導入では、令和の日本型学校教育を担う教職員像を次のようにまとめています。

変化を前向きに受け止め、教職生涯を通じて学び続ける
子供一人ひとりの学びを最大限に引き出す役割を果たす
子供の主体的な学びを支援する伴走者としての能力も備えている
多様な人材の教育界内外からの確保や、教師の資質・能力の向上により、質の高い教職員集団を実現する
多様な外部人材や専門スタッフ等とがチームとして力を発揮する
教師が創造的で魅力ある仕事であることが再認識され、教師自身も士気を高め、誇りを持って働くことができる。
(引用元:『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等のあり方について〜「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成〜答申(概要)|文部科学省, p.2)

教師自身の学びの姿、個別最適な教育における役割、人材の多様性、教師の魅力の再認識など様々な点に触れています。

答申本文では、文部科学省が令和4年8月31日に改正した、教師の資質能力を考慮する際の指標である5項目に再度言及しています。

  1. 教職に必要な素養
  2. 学習指導
  3. 生徒指導
  4. 特別な配慮や支援を必要とする子供への対応
  5. ICTや情報・教育データの利活用

令和時代に応じて新に明示された資質には、ICTスキルや、データを読み解き個別最適な学び等に応用できるデータリテラシーなどがあります。他には、子供たちの主体的な学習の「伴走者」とあるよう、ファシリテーション能力が重視されています。そして、教職員が集団として力を発揮することが一層期待されることに付随し、教師同士のコミュニケーション、連携協働などが強調されるようになったのが特徴的です。

参考:
教師の資質向上に関する指針・ガイドライン|文部科学省
教師に求められる資質能力の再整理|文部科学省

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複数の具体策とステークホルダーで動かす改革

今回の答申にまとめられた改革の具体策は非常に多く、改革工程表(案)に列挙された項目は実に53点です。この複雑な改革案を支えるのが、複数のステークホルダーとの連携です。

工程表(案)には、どのステークホルダーがどの具体策に関与するのか、年次と併せて整理されています。実際に、2つの例を見てみましょう。

多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成

この改革エリアには、4つの大軸があり、そのうち「優れた人材を確保できる様な教員採用等の在り方」という項目があります。

この優れた人材の確保に向けては、文部科学省・教育委員会・大学が連携し、教員採用選考試験の早期化及び複線化に取り組むことになります。同時に、文部科学省と各教育委員会が協働し、特別な選考ルートで入職した教師の活躍等の調査し、多様な入職ルートの在り方の効果等が精査される予定です。

教員免許の在り方

この改革エリアには、2つの大軸があり、そのうち「教員免許更新制の発展的解消及び教員研修の高度化」という項目があります。

この免許更新制度の解消に向けては、既に実施済みである、免許法の改正に加え、大学が免許更新講習の知見を活用した現職教員向けの研修を行うことが求められます。他にも、文科省は研修履歴を記録するシステムの構築を予定しており、研修履歴を元に各教育委員会が現職教員に研修の受講を奨励することが期待されます。それに並行し、教職員支援機構は研修を見直し、新たな研修の実施が求められています。

この様に、一つの改革の方向性に向け、誰が何をするべきであるのか、綿密に整理されています。

参考:
「令和の日本型学校教育を担う教師の養成・採用・研修等に関する改革工程表(案)令和5年2月21日最終更新|文部科学省

教師という職の魅力向上

今回の答申で繰り返し強調されている点が、教師という職業の魅力を向上する必要性です。中教審は、昨今「教職」「教師」を取り巻くネガティブな意見や見方を現実的に認識しています。

近年、教師の長時間勤務の問題や、教員採用選考試験の倍率の低下、「教師不足」などが一体の問題として取り沙汰され、教職全体がいわゆる「ブラックな職業」 であるとの印象を持つ学生も少なくない。一方、毎年約 10 万人が教員免許状を新たに取得し、公立の教員採用選考験では、新卒既卒合わせてのべ 12 万 6 千人あまりが受験し、約3万4千人が新たに教師として採用されている。民間団体等の調査によれば、小中高校生の将来なりたい職業で、教師は引き続き上位に位置 している。少なくない子供たちや学生、他の職種の経験者等が教職を志すのは、子供たちの人生に影響を与え、成長を実感できるという、他では得がたい経験のできる教師という職業に魅力を感じているから、との見方も可能である。(引用元, p.55)

課題を認めると同時に、新規免許取得者の多さや、教員採用選考に応募する母数、将来なりたい職業としての人気度などから、教師の魅力への認識があることにも触れています。

教師の魅力にまつわる現状を踏まえた上で、どの様な再認識を望んでいるのか、答申で使われている表現をまとめてみました。

教師を目指す次世代の若者が増えるだけでなく、現職の教師の方々の志気を高めることも目標とされていることがわかります。

これらの望まれる認識や変化を踏まえ、実際に、どの様に魅力的な仕事としての認知を高めるのか?と疑問に思うかもしれません。いくつかあげられている具体策の中には、学部や教職大学院との連携を高め、学生に対し、教職の魅力を伝える機会を設けるとされています。他には、今回答申にまとめられた教師の養成・採用・研修の一体的な改革を通して、教師の在り方・働き方が改善され、結果として、魅力的な職としての認知度が向上すると期待されています。

TFJネットワークに寄せられる教師の魅力

Teach For Japanのフェローシップ・プログラムは、教育をより良くしたいと考える多様な人材を、選考・研修を通して育み、2年間教師として学校現場に送り出しています。プログラムに参加し教師として活躍した方々が発信する、教師の魅力について、いくつか紹介したいと思います。

中学校に赴任している10期生の石黒フェローは、次のようにメッセージを寄せています。

子供たちとの毎日で大切にしていること・・・それは「なぜ?」「どうして?」と問い続けることです。その問いに対して、子どもたちから紡ぎ出される言葉の数々は、想像を超えて来ることに日々驚かされています。
(引用元:2022年 年次報告書|Teach For Japan

他にも、9期生で小学校に赴任した9期生の水野フェローも「子どもから学ぶことも多くある」とメッセージを寄せています。

また、各々の教師が多種多様なビジョンを持って児童生徒に向き合うという教職の特性に、中教審も強調する教師は創造的な職であるという魅力を見出すことができます。

例えば、小学校教諭として活躍されてる西川アラムナイは「幸せになれる人を育てること」をビジョンとし、「その為に、子どもたちがたくさんの人と出会い、自他ともに認め合い、高め合うことを意識して学習活動を行っています」と声を寄せています。小学校に赴任した9期生の大竹フェローは「でこぼこを楽しむ学級」というテーマで、「聞くこと、待つこと、後押しすること」という行動指針を大切にした学級づくりに取り組みました。

自らビジョンを掲げ、そのビジョンを30人40人の児童生徒と一緒に築き上げるというプロセスは、とても創造的だと感じられます。

最後に、中教審の委員でもありTeach For Japanファウンダーの松田氏は、「教師ほどインパクトを目の当たりにできる仕事は意外と世の中では少ない」とメッセージを発信しています。

引用元:
「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について~「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成~(答申)(中教審第240号)|文部科学省

まとめ

教育を変えていくとき、どんなに小さな改革でも、関与するステークホルダーと連携・協働していくことはとても大事です。今回紹介した答申には、実に綿密な改革計画や指針が整理されています。数年かけて実施される改革であり、変化を実感できるのには、少し時間がかかると思われます。しかし、肝心なのは、国が、課題を認識し、関連するステークホルダーを巻き込み、変えていこうと動いていることです。学校教育に欠かせない教師の方々の在り方・働き方が、教師のために、令和の日本型学校教育のために、そして日本社会のためにどの様に改善されていくのか、引き続き、注目しましょう。

参考:
『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について~「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成~(答申)本文

 

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