【大学生向け】新卒で教員になる迷いを越えて、教室に飛び込む魅力とは
- コラム
各自治体の教員採用試験の応募が始まり、夏の採用試験を控える春。教員を目指してアクションをとっている学生も多い時期かと思います。一方で、ファーストキャリアとして教員になることに迷いを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな学生の皆様にとって、新卒で教員になられた方々の声は非常に貴重なものだと思います。今回の記事では、新卒で教員を目指すにあたり教員というキャリアの社会的意義や学校現場への入り口をご紹介すると同時に、Teach For Japanのフェローシップ・プログラムを活用し、新卒教員として学校に赴任された3名のアラムナイ(修了生)の声をお届けします。
新卒で教員を目指す
記事前半では、教員の魅力や、新卒で教員になるための学校現場への入り方を簡単にご紹介します。
教員の魅力
教員採用時期の春、教員の魅力を伝えるべく、各自治体が現役の先生方の体験談を掲載してます。中でも文部科学省が掲げている教員の魅力は、一つの指標になるのではないでしょうか。文部科学省が発信する教育の社会的意義、教員の魅力を参照してみましょう。
教育は、自立した人間を育て、個人の能力を伸ばすとともに、国家や社会の形成者である「国民」を 育成する役割を担っています。個人が幸福で充実した生涯を実現し、また我が国が一層の発展を遂げ 国際社会に貢献していく原動力となるものは、教育をおいて他にはありません。
今日の教育が、個人の明日をつくり、社会の未来をつくります。
教員は、人間の成長に携われる魅力的な仕事です。
(引用元:教員をめざそう|文部科学省(2009))
教育は社会の基盤、未来を担う人間を育てる重要な社会的営みであることが伝わるメッセージです。
新卒で教員になるためには?
では、新卒で教員になるためには、どの様な入り口があるのでしょうか。今回の記事では大まかに4つの入り口をご紹介します。
1. 教員採用試験を受け教諭に
教員採用試験を受け、晴れて合格すると、教諭として働くことができます。令和2年度の文部科学省の統計によると、採用倍率は全国平均で3.9倍。学校の区分(小・中・高)や都道府県により採用倍率は異なりますが、近年、採用倍率は低下傾向にあります。教員採用試験への受験申し込みから採用までの大まかな流れは次の通りです。
(参考資料をもとに筆者作成)
2. 臨時的任用教員、非常勤講師
教員採用試験を受け教諭になる以外にも、臨時的任用教員や非常勤講師として各自治体に登録し、講師として働くことができます。任用までの大まかな流れは次の通りです。
(参考資料をもとに筆者作成)
臨時的任用教員は、常勤講師となり、ほとんど教諭の先生と同じ働き方をすることができます。一方、非常勤講師は時間講師となるため、担当する授業時間のみ働きます。また、講師として働きながら、再度教員採用試験に挑戦し、教諭として働くことを目指すこともできます。
※講師と教諭の違いについてまとめたコラムも是非ご参照ください▼
「講師」と「教諭」ってどう違うの?〜「講師」という働き方〜
3. 私立学校への就職
各自治体による教員採用試験は、公立学校へ勤務する教員を募集しています。一方で、私立学校の教員になるという入り口もあります。その場合は、各自治体による教員採用試験とは別の対策が必要となりそうです。教育新聞も次の様に呼びかけています。
私学の採用選考は、公立の教員採用試験とは異なる対策が求められ、「公立がダメだったから」との理由で臨んでも合格するのは至難の業です。
(引用元:教員採用試験 落ちた場合の進路は?|教育新聞)
4. Teach For Japanのフェローシップ・プログラム
TFJでは、教育への情熱と成長意欲を兼ね備えた人材を、教員免許の有無に関わらず採用し、各自治体との連携を通じて、学校現場へ教師として送り出すフェローシップ・プログラムを運営しております。
最近では、新卒の参加者も増加傾向にあり、2021年4月に赴任した54名の9期フェローのうち21名は新卒の方々です。
TFJの取り組みの概要、フェローシップ・プログラムの選考プロセス及び研修内容、フェロー候補生の声など、全てまとめてご紹介している2020年次報告書も是非ご覧ください。
参考:
応募から採用までの流れ|東京都教育委員会
教員をめざそう|文部科学省(2009)
教員採用試験 落ちた場合の進路は?|教育新聞
教員採用試験スケジュール|協同出版
東京都公立学校臨時的人用教員の募集について|東京都教育委員会
令和2年度(令和元年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況ポイント|文部科学省
新卒教員として活躍したTFJアラムナイの声
記事前半では、教員のやりがいや教員としてキャリアをスタートする方法を簡単にご紹介しましたが、「新卒×教員」のキーワードで検索をすると、ネガティブな情報を多く目にする方もいらっしゃるかと思います。近年、SNSの進展により、学校現場からの声を目にし易くなっている反面、情報に踊らされてしまうこともあります。そこで、記事後半では、新卒で教員というキャリアに挑戦された方々の、当時の迷いや悩みもお伝えしつつ、新卒教員としての魅力・ポジティブな声も一緒にお伝えしてしていきます。
新卒教員としてご活躍されるフェロー、ご活躍されたアラムナイは複数おりますが、今回は下記の3名にご意見を頂戴しました!
磯依里子さん
赴任期間 | 3期フェロー 2015~2017年 |
赴任先 | 大阪府 |
校種 | 中学校 (1年目:中3副担任 、 2年目:中1副担任) |
教員免許 | 英語科 (中学高校) |
中島直哉さん
赴任期間 | 5期フェロー 2017~2019年 |
赴任先 | 福岡県 |
校種 | 小学校(1年目:3年生担任、2年目:2年生担任、3年目:2年生担任) |
教員免許 | 小学校 中学校社会 |
佐藤史崇さん
赴任期間 | 5期フェロー 2017~2019年 |
赴任先 | 福岡県 |
校種 | 小学校(1年目:3年生担任、2年目:支援級担任) |
教員免許 | 中学・高校免許 |
新卒で教員を目指す迷いと思い
まず、教員というキャリアを目指すにあたり、迷いや悩みを抱えられたか伺ってみました。
磯さん:ファーストキャリアということもあり、教員の世界以外にも様々な選択肢がある中で、本当に教師でいいのか? と思いましたが、やはりその時は、教師という仕事以外に強い魅力を感じなかったため、あまり深くは悩みませんでした。私の場合はTFJがやりたいことドンピシャでしたが、同時に東京都の採用試験にも合格していたため、待遇面・条件面的で、少し迷いは生じました。しかし、結果的に、やりたいことのど真ん中であることや、切磋琢磨しあえる仲間がいることへの魅力を感じ、フェローになることを決意しました。
中島さん:もともと新卒で教員になろうと思っていたので、TFJで学ぶことができてラッキーな気持ちでした。ただ、根底には教員に始まり、教員に終わる社会人人生はずっとしないだろうなという直感、展望がありました。
佐藤さん:通っていた大学には教職課程があったのですが、実際、卒業後に教員になるという人は1割以下でした。とりあえず教員免許を取っておいて今後何かあったら教員をやったらいいかなという温度感の友人ばかりでした。周りがそうだと、「本当に教員でいいのかな?自分も東京に来たからこそチャレンジできる職業があるんじゃないかな」という思いがあり何度も悩みました。
その中でファースストキャリアとしてフェローを選んだ理由として、就活時に2つの観点でキャリアを考えました。1つ目が、 「自分は今誰に何を価値提供したいか」「どんな人たちとファーストキャリアを歩みたいか」という2軸で考えたこと。2つ目が、「自分は今誰に何を価値提供したいか」という軸から教員を選んだのですが、定年まで約40年も続けようとは正直思えず、短期間で最大限コミットできる環境であることも重視していました。この2点からフェローになることを決めました。福岡で教員という自分も予想できないファーストキャリアでしたが、フェローから始まったからこそ今の自分があると思っています。
みなさん、一度迷いはあったものの、「教員になりたい」という思いが強く、教員というキャリアに進まれたことがわかりました。また、3名ともTFJフェローシップ・プログラムとキャリアビジョンが重なったことが、新卒教員として働く決め手となったことが興味深いです。
TFJを通して新卒教員になる利点
フェローシップ・プログラムを通してファーストキャリアで教員を選択した点を踏まえ、TFJを通して新卒教員になる利点が何かあるか、お聞きしました!
中島さん:多様な仲間と学び合えること、視座が上がった状態で、なおかつ謙虚に学校現場に入るとができること。多くのつながりを子ども達に届けることができること。
佐藤さん:新卒でフェローになる上で、社会人を経験したフェローと一緒に研修を受けたり赴任後の研修で議論できるという経験は僕にとって大きかったです。社会人フェローは様々な役職を経て教育に課題を感じたり思いを持って入っている中で様々な角度から教育について考えている方ばかりで、とても刺激になり、僕自身も視野が広がりました。まずは授業の質や学級経営の質を上げて子どもの成長を作っていくことは大前提なのですが、キャリア教育の必要性など「どうしたら目の前の子どもたちがより成長し充実した学校生活が送れるのか」をより広い視点で考えることができたのは大きかったです。いずれ教員を続けた場合にも、様々なアプローチで子どもたちの成長にコミットしていけるのではないかなと思いました。
フェロー候補生には多様なバックグラウンドを持ち合わせた人材が集まるため、赴任前研修期間にお互いに刺激し合えるたことが、赴任後の職務にプラスに働きかけたことがわかりました。また、TFJのネットワークや同期フェローとの繋がりが、自身の成長だけでなく、子どもたちとの関わり合いにも応用することが可能であることもわかりました。
新卒教員を振り返って
新卒教員として、そしてTFJのフェローとして、奮闘された日々を振り返っての思いをお聞きしました。
磯さん:今から振り返ると、社会人としての基礎スキルもないまま飛び込んだので、思いがあったからこそ突き抜けて行動できた部分もありました。一方で、もっと社会人としてのスキル (職員室での上下関係や、管理職との付き合い方、根回しの仕方など) を身につけていれば、もっとコミュニケーションが円滑にいったのではと思ったところもあります。
結果的に、ファーストキャリアとして本当に良い選択をしたと思います。理由は2つあり、一つは子どもたちから自分の人間性を突きつけられる経験をすることによって、人間としての幅や器をとても広げてもらえたと思うからです。もう一つは、ライフステージ的な話になりますが、単身で乗り込み、「思い」だけを持って飛び込めたことで、「やりがい」しかない環境で、仕事だけに没頭できた2年間でした。
中島さん:新卒ということもあり、周りの先生方、保護者の方にすごく助けてもらって、やっとこさ先生という職業を全うすることができました。常に感謝を忘れず行動したと思っています。また、次のステップに進んだ現在、教員として培った仕事のスキル・職場の先生方から教わったこと、なにより子どもたちに教わったことは生きているという実感があります。
佐藤さん:まずは出会うこともなかったであろう子どもたちと出会えたことは何にも替え難い経験で、TFJにも子どもたちにも感謝したいです。僕自身、特別支援の担任も持たせていただき、今のキャリアに繋がりました。僕が3年間の教員生活で感じたのは「守破離」の大切さです。まずは同僚の先生で良いなと思った先生の学級経営や授業を徹底的に参考にして真似していくことがとても大事かなと思います。「真似するなんて、、」と思うかもしれませんが、まずはそういった姿勢を見せることが自分のスキルや他の先生との関係性にもつながりました。天才的な学級経営ができればそんな必要はないとは思いますが、学級経営や子ども理解の本質は赴任先にいる先生方が1番知っていると思い僕はそうしました。
新卒で教員になることを考えている学生へのメッセージ
最後に、教員というキャリアを志している学生の皆様に向け、メッセージをいただきました!
磯さん:その「思い」が本物であるなら、ぜひとも飛び込んでみてください!子どもたちの人生に大きく影響する仕事なので、熱意と覚悟を持ってから挑まれる方がいいかと個人的には思います。
中島さん:迷ったら、一度話聞いてみたら良いと思います!TFJコミュニティーの先生方・アラムナイはとっても親切な人が多いですよ!
佐藤さん:素直にうれしいです!辛いことがあるかもしれないですが、目の前の子どもたちとしか描けない軌跡をつくってほしいです。「教員は安定だよ」などと囁く人も周りにいるのではないかと思います。何を判断基準に教員を職業にするのかは人それぞれですが、自分が教員になる上で「どんな教員になりたいか」「どんなクラスにしたいか」「子どもたちにどんな変容をもたらしたいか」などをしっかり考えて自分の意見を持ち、一度やると決めたら貫き通してください!
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まとめ
今回、新卒教員というキャリアをテーマに、教員のやりがい、キャリアの始め方、そして新卒教員としてご活躍された3名のアラムナイの声をまとめてご紹介しました。様々な思いをもち学校現場に入られ、TFJ・フェローの仲間、赴任先の教職員の皆様との関わり合いを通し、子どもたちと思いっきり向き合われてきたことが伝わるメッセージでした。そして、教員経験が、人生を確実に豊かにしたという振り返っての思いも伝わりました。今回の記事が、教員というキャリアを視野に入れている方へのエールとなりましたら幸いです。
今回メッセージを寄せてくださったアラムナイの方々のインタビュー記事もぜひご一緒にご一読ください。赴任中の取り組みを深く知れる内容になっております▼
磯さん:教育格差を目の当たりにしたからこそ教師に。新卒教師が向き合った日々。
中島さん:世界を旅して見つけた「多様性」を教室へ!新卒小学校教員のチャレンジ
佐藤さん:特別支援学級でしか描けない成長曲線。新卒小学校教員のチャレンジ!
他にも、新卒でフェローシップ・プログラムを通して教員になられた方々のインタビュー記事一覧はこちら。
また、新卒で教員になられた方に限らず、アラムナイの皆様が、「教員経験がどのように人生を豊かにしているか、その後の人生にどういかされているか」に着目したアラムナイインタビューシリーズはこちら。
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