フェローインタビュー fellowinterview

学校内外で学びと実践を繰り返し「人々が自分らしく生き生きと過ごせる社会の実現」を教室で叶える

今回は、フェロー第8期生の大久保秀晃(おおくぼ・ひであき)さんをご紹介します。フェロー修了後の現在も教師として活躍中の大久保さん。フェロー当時の実践内容を伺ったところ、3つも話していただきました。フェロー時代から現在も教えるだけの教師ではなく、学校を飛び出して自らも学習者として学び続けている姿が印象的でした。

本記事では、そんな大久保さんがTFJのフェローになった背景や今後の展望などについてもお聞きしています。教員免許を持っているけれどなかなか一歩を踏み出せずにいる方、教育業界の中でも教師という仕事に興味関心のある方、フェロー修了後も引き続き教師として活躍したい方には、特に参考になる内容となっています。ぜひ、最後までご覧ください。

出身大学慶應義塾大学 商学部 商学科
職歴富士通株式会社(アカウント営業)
TFJフェロー(小学校)

赴任前研修が決め手。コロナ禍でも熱い同志と繋がり、教師への想いを強固にできた

まずは、フェローに応募した経緯を教えてください。

TFJを知ったのは、会社を辞めて教員免許を取得するために通信制の大学に通っている時でした。勉強会の企画などを行う学生会に所属していたのですが、そこで知り合った仲間が紹介してくれたのが、当時TFJの職員だった小林さんです。

小林さんに話を聞く中で、TFJのフェローには赴任前研修として様々な学びの場が提供されていることを知りました。それまでは免許を取得するための勉強しか出来ていなかったので、これら以外にも教師として学べることは何でも学びたいと思ったんです。

研修で特に良かったのは、自分が教師として何を目指すのかビジョンを深く考えられたことですね。過去の経験を振り返って掘り下げたのですが、その中で教育現場でどのように指導していくのかをしっかりと考えられ、自分のブレない軸が出来たと感じています。

また、同期のフェローは50代の方、自分と同じように民間企業出身の方、新卒の方と本当に多種多様なバックグラウンドを持っていたので、話しているだけでも学びが多かったですね。互いに教育に対する熱い想いを話し合う時間は、自分の教育への想いを更に強固にしてくれました。

研修も終わりに近づき、赴任する2か月前には、泊まり込みの武者修行合宿もありました。同期たちとオフラインで会えて嬉しかったですね。それぞれが意気込みを表明し合う場があったのですが、本当に先生になるんだと身が引き締まったのを覚えています。

また、私は教員免許を取得して参加したので、教員採用試験で受かっていた東京都三鷹市にも同期がいましたし、研修もあったのですが、それらすべてがオンラインだったためになかなか横のつながりを作れなかったんです。そんな中で、自分にはフェロー同期がいたことは心強かったですね。TFJのフェローとして教師人生をスタートさせられたことは幸運だったと思います。

ICT教育、特別活動、課外研修と走り抜けた2年間。今後の教師人生にも役立つと確信

続いて、当時の実践内容について教えてください。

フェロー期間中は、大きく分けて3つの内容に注力しました。

まず1つ目は、GIGAスクール構想に関する取り組みです。フェロー1年目の1月、私の学校でも子ども1人に1台のタブレットが配られました。タブレット導入当時はどのように使えばいいのかわからず、周りの先生方が頭を悩ませていたので、自主的にタブレットの使い方マニュアルを作ったり、研修会を企画したり、自分のクラスでの実践内容を事例として紹介したりしました。その甲斐もあって、多くの先生方がタブレットを活用した授業を行うようになりました。

そんな中で迎えたフェロー2年目には、市の教育委員会の方が視察に来てくださることになり、本校のタブレットを積極的に活用した実践を注目してくださいました。その後には、なんとApple社の社員の方まで視察に来てくださり、好評をいただきました。そうするうちに、校内では「タブレットについてわからなかったら大久保に聞く」という立ち位置になりましたね。

2つ目は、TFJの採用面接でもお話したことなのですが、特別活動に関する取り組みです。いわゆる、クラブ活動や学級会、委員会(児童会活動)、学校行事などがこれにあたります。

注力したいと思っていた理由は、特別活動は「なすことによって学ぶ」ことを方法原理としており、子ども達が自ら学び、アウトプットする中で自ら成長していける領域だと思っていたからです。特別活動は、人間関係形成、社会参画、自己実現の3つの視点が指導する上で重要な視点と言われているのですが、この3つは社会人経験から考えてもとても大切だと思っています。

子どもたちが学校で生活する上で、集団として行動する以上、教師の指示で行動せざるを得ない部分が非常に多くあります。ただ、それを当たり前と思って生活すると、受動的な人間が作り上げられてしまいます。私自身もこれまでの人生を振り返った時に「受け身で生きてきたな」と感じており、自ら考えて行動することがあまりできていなかったなと思っているんですよね。ですが、社会に出ていく中で自ら考えて行動し、振り返って改善するというプロセスをまわせるようになっておくことは大切だと実感していました。

そんなことを考えながら迎えたフェロー2年目に、チャンスが舞い込みました。1年間の児童像を設定し教科別に授業内容を考える、校内研究を推進する部に所属していたのですが、そこで「学級会をやらないか」という話が出たんです。学級会は意外とおざなりになりがちで、本格的に取り組んでいる先生がいなかったため、みんなで一から学び直そうという話になりました。

そこで、私が通信制大学時代にお世話になっていた先生をご紹介して、特別講師として指導をお願いしました。ここでの学びを、研究授業として私のクラスの学級会で実践しました。1つ目でお話ししたICTと組み合わせたり、掲示物を工夫したり、クラスのみんなが自発的に考え、学級会に参加できるように子どもたちと一緒に試行錯誤しましたね。

学級会とは、子ども達がみんなで話し合ってみんなで納得する考えを出す合意形成の場です。そんな学級会を研究すればするほど、自分の役割や立ち位置についての悩みは尽きません。見守る、指導するの割合には今でも悩んでいますし、他の先生の学級会と自分の学級会とを比較して出てくる「こうしたい」という自分の願望と、あくまでも子ども達に任せている学級会という場でどのように立ち振る舞うのかについては、毎回考えさせられます。

私は45分間の学級会のうち、子ども達だけで話し合う35分間と、子ども達だけで振り返る5分間、そして私が今日の会を見てまとめたコメントを話す5分間に分けて行っています。35分間は私は一切言葉を発さず、だれが何を言ったのか、話し合いの雰囲気はどうか、助言できることは何か、褒めてあげられることは何かなどを記録しています。

そうしていると、子ども達は言葉を発さない私の体の揺れや目線など、細かいところにも敏感に反応していることが分かるんですよね。最後の5分のコメントではなく、逆に話さない40分の方が見られているんだと感じます。このことから、授業中や普段の生活など、自分が教師として行っている全ての言動を意識して過ごさないといけないなと思わされましたね。

最後3つ目は、三鷹市と三鷹市内にある塾「探求学舎」がコラボした研修会で、塾の先生方が培ってきた様々なノウハウを学び、それらを基にオリジナルの授業を作ったことです。探求学舎さんはよくある勉強を教える学習塾とは違い、子ども達ひとりひとりの探究心に火をつける興味開発型をうたうユニークな塾です。

研修会はフェロー2年目の5月から始まり、土曜日に6回ほど集まって学びました。一通り学び終えた8月頃から授業づくりがスタートし、当初は11月にクラスにて授業を行う予定でしたが、コロナウイルスの感染拡大を受けて、フェロー期間修了翌年の4月に行いました。

その際、小学館の教師応援誌「教育技術」を母体とした、小学校教員のための教育情報メディア「みんなの教育技術」さんで、私の授業の様子を取り上げていただきました。(探究的な学びのプロに研修を受けた小学校教師の授業例:前編|みんなの教育技術 (sho.jp)

探求学舎の研修では、具体的に3つの大切なことを教えていただきました。1つ目は、子ども達が自ら考えたくなるような問いを設計する「ドライビングクエスチョン」という考え方で、2つ目は、通常の授業のような演繹法で教えるのではなく、幾つかの事象を示してそこから子供たちが自ら1つの答えを導き出せるように授業を設計する「帰納的な学習法」という考え方です。そして最後3つ目は、ドラマの演出のように共感、試練、克服の流れで授業を作る「ドラマツルギー」という考え方でした。これら3つの視点を意識した授業作りはなかなか大変でしたが、とても学びが多くためになっています。

今でも日々の授業に活かしているのですが、よく覚えているのが算数の授業での出来事です。普段はあまり落ち着きがなく、授業にも積極的に参加できない子がいたのですが、自ら手を挙げて黒板の前まで出て答えてくれたんですよね。ジェスチャーを交えながら説得力ある回答をしてくれて、授業がおおいに盛り上がりました。授業後には「頑張ったね」と声かけをしたのですが、それ以降はとても前向きに授業を受けてくれるようになりました。嬉しかったですね。

勉強が楽しいと思える授業を作りたい。子ども達が生き生きと過ごせる教室を実現する

それでは最後に、今後の展望について教えてください。

まずは、これからも教師を続けていく予定です。授業の面では、子ども達がただ楽しむだけでなく、楽しみの中にも学びがあって、勉強が楽しいと思ってもらえるような授業を作っていきたいですね。

また、最近よく考えているのは、教室内での集団と個の在り方についてです。具体的には、子ども達それぞれに自由に過ごしてもらいたいと思う反面で、集団生活の中では規律を守ることも大切であると伝えたいと思っており、そのバランスが取れた心理的安心を感じられる空間づくりについて日々考えています。自身の社会人経験から、個を大切にすることと集団の中での立ち振る舞いはどちらも大切で、重要な学びになると感じているからです。

そして、大きなところで言うと、私のビジョンである「人々が自分らしく生き生きと過ごせる社会の実現」を教室の中でも実現できる人になりたいと思っています。そのためにも、興味のある分野を学び成長し続けていきたいですね。最近では非認知能力や哲学を学びたいと思い、関連書籍を読んでいます。

あとは、教師として絶対に上から目線にはなりたくないですね。だから私も子ども達と一緒に学び続ける学習者であり続けたいと思っています。