fbpx

コラム column

学校のICT化とは?ICT活用状況とGIGAスクール構想の要点整理!

2019年11月に安倍総理が国家意思として、パソコンが1人1台あることが当然であると述べたように、学校のICT化は子どもたちの学びを深めるための大きなテーマです。今回の記事では、学校のICT活用状況を解説するとともに、withコロナ時代のICT活用の方向性、GIGAスクール構想の4つのポイントをご紹介します。

学校のICT活用の現状

ICTとは”Information and Communication Technology”の頭文字を取ったものです。学校のICT活用は、この情報通信技術を活用した教育活動全般を指します。

具体的には、電子黒板を使って授業を展開したり、子どもがタブレットを使って作成した資料をクラス全員に共有したり、海外の学校と交流したりする遠隔教育などが考えられます。

2011年に文部科学省が「教育の情報化ビジョン」を公表し、「情報活用能力の育成」「教科指導における情報通信技術の活用」「校務の情報化」の3つの側面からICTを活用して教育の質向上を目指すとしました。

その後、第2期教育振興基本計画では、「ICTの活用などによる協働型・双方向型学習の推進」が明示され、第3期教育振興基本計画では、「ICT 利活用のための基盤の整備」に重点が置かれています。

では、子どもたちのデジタル機器の利用状況や学校で自由に使うことができる端末の普及状況、新型コロナウイルスによる休校中の家庭学習方法はどのようになっているのでしょうか?

デジタル機器の利用状況

PISAのICT活用調査(2018年)によると、日本は授業でデジタル機器(ノートPCやタブレット、スマートフォンなど)を利用する時間がOECD平均と比べて圧倒的に低いことがわかります。数学においては、OECD平均が37.8%に対して、7.8%の教室でしかデジタル機器が利用されていません。

(参照元:OECD生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント|国立教育政策研究所,P10

また、学校外に目を向けると、授業の延長にある調べものや宿題などでデジタル機器を利用する割合は低い一方で、ネットでのチャットやゲーム、ニュースを読むなどはOECD平均を上回っています。

(参照元:OECD生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント|国立教育政策研究所,P10

このことから、日常生活ではデジタル機器を利用しているものの、学校や教室では黒板とペンとノートがメインの教育が2020年現在になっても実施されていることがわかります。

端末1人1台の普及状況

文部科学省が実施した「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」によると、2019年時点で5.4人に1台のコンピュータが設置されています。2007年の7.3人に1台の状況から少しずつ整備は進んでいますが、普及しているとは言えず「端末1人1台の普及」にはほど遠いと言えます。また、1.9人に1台の整備が進んでいる自治体もあれば、7.5人に1台の自治体もあり、地域差があるのも現状です。(参照元:平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)|文部科学省,P4

また、2019年の普通教室の無線LAN整備率は41.0%となっており、半分以上の教室でインターネットに自由に接続できる環境が整っていません。なお、無線LAN整備率についても地域差が見られます。

参考
平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)|文部科学省,P5

新型コロナウイルスによる休校中の家庭学習方法

2020年4月16日に実施した調査によると、教科書や紙の教材を活用した方法が100%実施されている一方で、臨時休業中の家庭学習の方法で同時双方向型のオンライン指導の取り組みは5%と非常に少ないことが分かります。

(参照元:新型コロナウイルス感染症対策のための学校の臨時休業に関連した公立学校における学習指導等の取組状況について|文部科学省,P1

withコロナのICT活用の方向性

では、新型コロナウイルスによって休校の可能性がある現在、文部科学省はどのような課題意識を持ち、withコロナの時代の学校の在り方を見出しているのでしょうか。

第3期教育振興基本計画でのICT活用

教育振興基本計画とは、教育基本法に示された理念の実現と教育振興のための計画です。第1期は2008年度~2012年度、第2期は2013年度~2017年度、第3期は、2018年度~2022年度が計画期間になっています。

第3期教育振興基本計画の21ある目標のうちの1つに「ICT利活用のための基盤の整備」が掲げられています。内容は、下記の4つにまとめることができます。

  1. 児童生徒の情報活用能力の育成
  2. ICT活用による授業改善
  3. 校務のICT化による教職員の業務負担軽減
  4. 上記3つを実現するためのICT環境整備促進

初等中等教育段階について,①情報活用能力(必要な情報を収集・判断・表現・処理・創造し、受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力( ICT の基本的な操作スキルを含む)や,情報の科学的理解,情報社会に参画する態度)の育成,②主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善に向けた各教科等の指導における ICT 活用の促進,③校務の ICT 化による教職員の業務負担軽減及び教育の質の向上,④それらを実現するための基盤となる学校の ICT 環境整備の促進に取り組む。また,私立学校についても,国公立学校の状況を勘案しつつ, ICT 環境整備を推進する。

(引用元:第3期教育振興基本計画【抜粋】|文部科学省)

2020年度から小学校で全面実施となった新学習指導要領では、情報活用能力を言語能力と同様に学習の基盤となる資質・能力と位置付けています。また、情報活用能力を育成するために学校のICT環境整備とICTを活用した学習活動の充実も明記されています。

参考
小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 総則編|文部科学省,P4,P83

GIGAスクール構想の前倒しによる端末1人1台の実現

GIGA(Global and Innovation Gateway for ALL)スクール構想は、子どもたち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境を実現した令和時代のスタンダードな学校の構想です。背景には、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く5番目の社会であるSociety 5.0の時代の到来よって、生き方そのものがこれからの時代では変化していくという考えがあります。

GIGAスクール構想実現のために、ハード・ソフト・指導体制が一体となる方針が文部科学省によって打ち出されており、各自治体へYouTube動画等を活用した情報発信が行われています。

また、2020年の新型コロナウイルスの世界的大流行に伴って、2020年度の補正予算案でGIGAスクール構想を加速させる動きがあります。具体的には、2023年度に達成予定だった1人1台端末の早期実現、学校ネットワーク環境の全校整備、急速なICT化を進めるためのGIGAスクールサポーターの配置などが挙げられます。次の項目でGIGAスクール構想実現のためのポイントを詳しく解説していきます!

GIGAスクール構想実現のための4つのポイント

ここでは、2020年度補正予算額に基づいたGIGAスクール構想実現のための4つのポイントをご紹介します。まずは、GIGAスクール構想のイメージを持つために、学校で1人1台の端末があったらどのような学びが展開できるのかを3分の動画にまとめているものがありますので、そちらをご覧ください。

(参照元:「学校における1人1台端末環境」公式プロモーション動画|文部科学省)

児童生徒の端末整備支援

国公私立の小・中・特支等の児童生徒(義務教育)が使用する端末の整備に1,951億円が割り当てられています。端末1台あたりの上限4.5万円(国公立のみ、私立は1/2)までが補助でカバーされます。端末はシンプルでメンテナンスが楽なものを選択し、ソフトウェアやデータ保存もクラウドを使うことで災害にも強いICT環境を目指しています。

(参照元:令和2年度補正予算概要説明~GIGAスクール構想の実現~|文部科学省,P11

また、4.5万円で端末を整備できる3つの具体例が挙げられています。

  1. Windows OS端末 × 教育機関向けOffice 365 A1ライセンス(無償)
  2. Chrome OS端末 × G Suite for Education ライセンス(無償)
  3. iPadOS端末 × Apple社が提供する無償の教育用App (無償)

これらの端末は、Windowsで言えばWord、Excel、PowerPointのように、それぞれワープロ、表計算、プレゼンテーションの機能が備わっており、協働学習支援ツールのClassroomなども無償で利用することができます。

学校ネットワーク環境の全校整備

GIGAスクール構想が掲げている令和時代のスタンダードは、児童生徒1人1台端末に加えて、高速大容量の通信ネットワークの整備があります。そうすることで、クラウドの活用やデジタル教科書・教材、民間の教育コンテンツを利用できるようになり、子どもたち一人ひとりが学んだデータが蓄積され、個別最適化された教材やフィードバックを得ることができるようになります。

(参照元:GIGAスクール構想の実現パッケージ|文部科学省,P5

具体的には、学校内LANと電源キャビネット整備工事が補助対象となります。自治体に合った整備が大前提ですが、クラウドを効果的に活用することで子どもたちの学習はもちろんですが、教員が自宅勤務せざるを得ない場合でもスムーズに業務に取り組むことができます。

GIGAスクールサポーターの配置

GIGAスクール構想を実現するに当たって、学校の人的支援が不十分であることを踏まえ、ICT環境整備等の知見を有するGIGAスクールサポーターを4校に2人配置することができます。

GIGAスクールサポーターの業務例

  • ICT環境整備の設計
  • 工事や納品対応
  • 使用マニュアル(ルール)の作成
  • 使用方法の周知

GIGAスクールサポーター以外にも、ICT活用アドバイザーやICT支援員といった学校をICT化するための人的支援を活用することができます。

緊急時における家庭でのオンライン学習環境の整備

緊急時でもICT活用による学習を継続できる環境を作るために、モバイルWi-Fiルータの貸与やUSB型LTEデータ通信機器の整備がサポートされています。

また、新型コロナウイルスや自然災害発生時などによる緊急時でも、遠隔学習ができるように遠隔学習をスムーズに行うためのカメラやマイクなどの設備サポートも実施されています。

まとめ

学校のICT化は急務です。OECDの調査からもわかるように、先進国の中で日本の学校のICT化は遅れています。また、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策もあり、児童生徒1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークの整備はこれからの学校教育において前提条件となります。

ただ、端末や通信ネットワークといったハード面だけでなく、実際に子どもたちと関わっている教師への支援も子どもたちの学びを個別最適化し、創造性を育むには欠かせません。

Teach For Japanでは、情熱ある人材を独自に採用、研修し、公立学校に2年間教師として送り出しています。新型コロナウイルスによって子どもの学びの保障が危ぶまれる今だからこそ、Teach For Japanは教師の研修を実施し、すべての子どもに素晴らしい教育を届けられるように奮闘しています。ぜひ、子どもたちの学びを素晴らしいものにするためにご寄付をお願い致します。

教師になることに興味がある方

詳しく知りたい