世界を旅して見つけた「多様性」を教室へ!新卒小学校教員のチャレンジ
- フェローインタビュー
多様性、ごちゃ混ぜ、ダイバーシティ…最近よく聞く言葉の1つではないでしょうか? 今回インタビューさせて頂いた中島さんは、大学時代に約10カ月間世界を旅して、Teach For Japan(以下、TFJ)に参加し、小学校教員になりました。優等生だったという中島さんが考える「多様性」とは? 教員になるまでのことと学校現場で感じたことを語ってもらいました!「多様性」というキーワードが気になった方は、記事を読みながら一緒に考えを深めてみませんか。
中島直哉
※表は横にスライドできます。
赴任期間 | 2017~2019(5期フェロー) |
赴任先 | 福岡県 |
校種 | 小学校赴任(3年生、2年生担任) |
出身大学 | 横浜国立大学教育人間科学部 |
教員免許 | 小学校教員免許、中学校教員免許(社会) |
経歴 | 新卒→TFJフェロー |
趣味 | ミュージカル、食べること、寝ること |
好きな言葉 | 人生は学校。出会う人が先生、起きる出来事が授業。 |
一言メモ | 一人ひとり違って当たり前。葛藤しながらも前に進む旅人。 |
いろんな視点を持った教師になりたいからTFJを選んだ。
まず、教育に興味を持った理由を教えてください。
そうですね…パッと思いつくのは、弟がいたこともあって、年下の面倒を見るのが好きだったっていうのがありますね。あと、中3の物理の授業中に、友達から授業内容について質問されたことがあって、その質問に答えた後に、友達から「教えるの上手だね」と言われてすごく嬉しかったのは覚えています。このときに、「教師」を職業として初めて認識するようになったんだと思います。それに、学校が好きだったことも「教師」に惹かれた理由でしたね。
高校・大学に進学してからも、教師になろうという思いは変わりませんでした。大学では、教育学部の教員養成課程を選択して、学校で実習する授業も履修していましたし、課外活動でも子どもとレクリエーションやキャンプを企画する活動をしていました。
でも、本を読んだり、いろんな視点から教育を考えるという授業を受けたりしているうちに、自分の夢がずっと一緒ということに対して、「いいな」と思う反面で、「偏っているのでは?」と思い始めるようになりました。自分は、社会を見たことがないんじゃないかと思ったんです。もっといろんな視点を持てるようになってから教師になりたいと思うようになりました。
それで、カンボジアに小学校ボランティアで訪れるプログラムに参加しました。それをきっかけに、「もっといろんな国を見てみたい!」という思いが強くなりました。そのあとは、大学を1年間休学して、約10カ月間、旅をしながら世界中の学校を見学したり、ボランティアをしたりしました。
旅先でどのような経験をされたんですか?
例えば、インドでは、旅人が授業をできる学校があったので、空手の型を教えて、みんなで一緒にやりました。ドイツやフィンランドの学校見学もさせてもらいましたし、大学教授の出張のタイミングに合わせてキューバの教育も少しだけ覗くことができました。
この旅で印象に残っていることが2つあって、1つはケニアで2カ月間ボランティアしたときの経験です。そこで、感じたのは「環境って可能性を作ってしまうんだな…」ということです。
ケニアの講師の給料は非常に安く、先生たちは高いモチベーションを保つことができませんでした。国として教育に本腰を入れ始めたばかりだったので、校舎や教員が不足しているという課題があることを知りました。それに、中学卒業時にある統一テストで高校が決まり、高校が決まると仕事が決まるという現実を目の当たりにしました。そのときに、「自分はなんて恵まれているんだろう」と気づかされましたし、ボランティアではできることが限られているとも感じました。
もう1つは、ソマリア人の友達との出会いです。彼に会うまでは、「ソマリアは内戦している」「海賊がいる」というネガティブなイメージしかありませんでした。ただ、ソマリア人の友達ができて、自分の目で見ることが大切だと教えてもらいました。そうしないと、人を傷つけてしまう。これは、自分にとって大切な気づきでした。
なぜ、TFJのフェローになったのでしょうか?
休学して旅した中で、貧困のループが実際にあることを目の当たりにしてきました。そして、自分が学校に楽しく通えていたのは、自分の家庭状況という偶然によるものだと思ったんです。自分は一生懸命勉強したから、勉強ができるようになったわけではなくて、環境が良かったから教育を受けられている。なんだか自分ってずるいなと思ったんです。
それで、ここまで知識をつけさせてもらったんだから、何か返そうと考えたんです。TFJのモデルなら、経済格差による教育の機会格差を変えられるかもしれないと思いました。
それに、いろんな視点を持ちたいと思っていた自分にとって、いろんな職業の人が、いろんな視点で教育を語っているのが魅力的でした。TFJに参加したら、自分の視野を広げながら、教師ができると感じたんです。それは、実際にTFJのフェローや職員の方と話をして、肌で感じたことです。
自分たちのことは、自分で決める!
実際に教師になってからは、どんなことを感じましたか?
社会人一年目、教師一年目の自分は、教師の仕事の忙しさに謀殺されました。目の前にある日々の仕事をひたすらするという感じでした……。そのときは、本当にたくさんの先生方が助けてくれました。(いまでもそうですが)なので、一緒に働く先生方や赴任した地域のことがどんどん好きになっていきました。
学級開きでは、得意の空手の型をやりました。子どもたちに元気な印象をつけたいと思って(笑)。おかげで、家庭訪問では、保護者と空手の話題をきっかけにしてスムーズにコミュニケーションを取ることができました。
教師一年目で感じた自分の課題は、「わからない」という気持ちに寄り添うことの難しさです。子どもがさぼっているように見えてしまって、叱ってしまったり、こちらの都合を押し付けてしまったりしたこともあったと思います。
1年間教師として働いて、どんなことを感じましたか?
もともと多様だった子どもたちが、大人の理想に当てはめられて揃っていく指導方法が違和感でした。これでは、本来あった多様性がなくなってしまうのではないかと。
それで、1年目の途中から、学校の課題は多様性がないことだと思うようになりました。だから、学校の中の多様性をもっともっと増やしたいと思っています。ただ、具体的に何をしたらいいかはすぐには出てこないままもやもやした時期が続きました。
2年目になるタイミングで、2つの実践をしました。1つは、自分が良かったことや友達の良いところを書いてバケツに貯めていく取り組みです。絶対に大切にしたかったポイントは、教師の評価によって行わないということです。評価基準を子どもたち自身が持てるようになってほしかったんです。子ども時代、自分は優等生タイプで、周りの目を常に気にしてきた生きづらさがあったからこそ、目の前の子どもたちには自分の幸せは自分で決めてほしいと思ったんです。
もう1つは、作家の時間という取り組みです。作家は自分の作品に自分で責任を持ちます。作家は自分の書く作品を自分で決めますし、どこまで書くかも、何を書くかも自分で決めます。決められたことをやるのではなく、自分で決めることで本来あった多様性を伸ばせるのではないかと思っています。
ただ、実践しながらも、教師が決めてある程度道筋を作ってあげた方がいいのではないかという考えもありましたし、いまでもその狭間で葛藤しています。
教師3年目は「多様性」がキーワード。みんな違って当たり前。
教師として3年目を迎えて、どんなことにチャレンジしていますか?
学校に多様性を届ける1つの方法として、表現教育に魅力を感じています。みんなを同じくしようという視点で子どもを一様に見るのではなくて、一緒に何かをしながら違いを理解するのが大切だと思っています。
それで、自分自身が感じていることを表現できるようになりたいと思って、コモンビートという100日間で1つの舞台を創り上げるプロジェクトに参加するようになりました。
尊敬する校長先生から「なかじのクラスの子どもたちは、見捨てられない安心感があるよね。」という言葉をかけて頂きました。授業や学級経営は、まだまだ課題が山積みですが、みんな違って当たり前だと思っていることが周りの人たちにも伝わっているんだ!とすごく嬉しかったです。
最後に、これからチャレンジしたいことを教えてください!
3年間の教員生活を終えたら、絶対に海外で働こうと思っています!! いま関わっているコモンビートのツアーに参加して、世界中を回りながら表現教育を学びたいと思っています。他にも、プロジェクト・アドベンチャー・ジャパンで場づくりを学びたいですし、青年海外協力隊に参加して国際支援にも関わりたいです。
漠然とですが、「教育」「社会課題」「社会人教育」の方面に関心を持っているので、少しずつ自分の考えを明確にして、次のキャリアを決めたいと思っています!
Teach For Japanは、学校の教室から世界を変えていきたいと考えています。多様な教育課題があるからこそ、学校へ情熱ある多様な人材を「教師」として送り出しています。教室で生まれたインパクトを、学校・地域・社会へと広げ、教育改革の一翼を担います。
(編集後記)
「自分はたまたま家庭環境に恵まれたから教育を受けられている。自分ってずるいな…何か返せることないかな。」とインタビューで素直に語ってくれた中島さん。自分の多様な側面を、隠さずに見せる中島さんの周りに「見捨てられる」雰囲気はなさそうです。
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