小学校教師の仕事とは?~魅力と働き方改革~
- コラム
「小学校教師」と聞いて皆さんはどのようなことを思い浮かべるでしょうか?「全教科を教えなければいけなくて大変」「子どもと触れる時間が長い」など様々なイメージが浮かぶと思いますが、具体的にどのような仕事をしているのか、どんな悩みがあるのか、あまり知られていないかもしれません。今回の記事を通じて小学校教師の働き方や課題を知ることで、小学校教師の声を聞いてみませんか?
小学校教師ってどんな仕事?~教師の一日~
(参照元:教員をめざそう! | 文部科学省)
小学校教師の一般的な一日の流れは上の図のようになっています。では、それぞれの時間で具体的にどのような仕事をしているのか、午前・午後・放課後の3つに分けて詳しくみていきましょう。
午前中
基本的には教師も朝の会に参加しますが、朝に10分ほどの打ち合わせを行う場合もあります。その間、子どもたちは教室で朝の会等を行っているため、何か問題が起こったときはすぐに駆けつけます。打ち合わせが終わるとそれぞれの教室へ向かい、授業の開始です。
小学校の授業は1コマ45分で、1,2時間目の間と3,4時間目の間には10分の休み時間、また中休みがあります。しかし、これは子どものための休み時間であるため、教師は子どもと遊んだり宿題の丸付けをしたりしています。
午後は?
給食の時間は子どもと一緒に準備をして教室で食べ、片付けもします。その後、清掃の時間となり、児童と一緒に教室やトイレ、廊下などを掃除したり、安全に掃除が行われているか見回りをしたりします。
昼休みが終わると午後の授業を行い、帰りの会をして子どもたちを下校させます。授業自体はこれで終了ですが、教師の仕事はこれで終わりではありません。
子どもが帰った後に……
子どもが下校した後は、ノートの丸付けや次の日の授業準備などをする必要があります。その他にも職員会議に参加したり、担当の委員会やクラブ活動に参加する日もあります。そうすると、当然事務処理等は後回しになります。
また、17時頃が退勤の時間とされていますが、実際は授業準備や事務処理のために18時や19時、場合によってはさらに遅い時間まで仕事をする教師が多いようです。
中学校・高校教師との違い
小学校は学級担任制が一般的で、音楽や図工などは専科の先生が教えることもありますが、基本的に担任の教師が1人で全ての教科を教えます。子どもに対しては、「見守り育てる」という姿勢が基本になります。また、小学校では子どもだけではなく、保護者とのコミュニケーションにも気を配る必要があるのことが特徴です。
それに対して中学校・高校は教科担任制となり、進路指導や部活動など授業以外の業務をすることも求められます。また、その時期の子どもたちは心身ともに大きく変化する時期であるため、教師はその変化を受け止めながらコミュニケーションをとっていく必要があります。
(参照元:小・中・高校 教員の仕事の違いって? | 高校生新聞ONLINE)
教師の悩みを解決する3つの取り組み
さて、ここまで小学校教師の具体的な仕事内容について言及してきましたが、ここからは教師の抱える問題や悩みについて考えていきたいと思います。
(参照元:7時出勤、給食をかきこみ宿題の丸つけ 先生忙しすぎ? | 朝日新聞)
上の資料をみても分かるように、教師の仕事は、内容の幅が広いがゆえの仕事量の多さや長時間労働が度々問題視されます。その解決のためにはどのような対応が求められるのでしょうか?
勤務時間を意識する
これまで「子どものため」であれば長時間労働もよしとされてきた教師の働き方を見直すために、仕事に優先順位をつけて時間を配分し直し、子どもたちに効果的な教育活動を行うことが求められています。
文部科学省は、教師が決められた勤務時間を超えて学校などで勤務する時間の上限として、1か月45時間以内、1年間360時間以内などの目安を定めました。また、教育委員会の取り組みとして、教師の勤務時間を踏まえて適切な登下校時間を設定すること、緊急時の連絡方法を確保した上で留守番電話の設置やメールによる連絡対応を可能とすること、などを提案しています。
(参考:公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン | 文部科学省)
教科担任制
小学校教師の大変な点として挙げられることが多いのは「すべての教科を教える」ということです。しかし、小学校が学級担任制であることにはそれなりの理由があり、やはり学級担任が子どもそれぞれの長所も短所もすべて把握し、長所は伸ばしつつ、短所は指導するという形が、子どもを安心させられるというのが最大の理由です。その他にも、学級担任制と教科担任制のメリットは下の図のようになっています。
学級担任制 | 教科担任制 | |
メリット | ・担任教師と児童の結束が強くなる。 ・児童の表情や行動の変化を一日の生活、全教科の指導を通して観察することができる。 ・授業時間が弾力的に運用できる。 ・より教科横断的な授業を組める。 | ・一つの課題に対しより深い指導ができる。 ・学級担任とそりが合わない児童も、別の教科で活躍できる。 |
デメリット | ・専門外の教科への不安が生じる。 ・担任の負担が大きい。 | ・児童の実態を把握しにくい。把握に時間がかかる。 ・授業時間が弾力的に運用できない。 ・教科の枠を越えられない。 ・指導にあたる教員が不足している。 |
(参照元:小学校の教科担任制は是か非か~福島県の導入検討を機に~ | Education Tomorrow)
このように教科担任制に転換することで「すべての教科を教える」大変さの軽減に繋がる可能性は大いにあります。しかし、低学年から教科担任制にすることへの疑問の声や教師不足などの課題もまだ存在しています。
家庭・地域との協力
文部科学省は教師の担う14の業務を仕分けし、優先順位をつけて業務軽減をすることを提案しています。
- 学校以外で担うべき業務
- 必ずしも教師が担う必要のない業務
- 教師の業務であるが、教師の負担軽減が可能な業務
(参考:新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について | 文部科学省)
上記の3つの業務については保護者や地域ボランティア、地方公共団体や教育委員会などが担うべきだとしています。
具体的には、教師が行っていた夜間パトロールをPTAと地域住民が行ったり、給食や昼休み、清掃の対応を地域のシニアの方が行うケースがあります。他にも、保護者を中心とした地域の方々が交代で、プリントや学級通信などの印刷を行う学校もあります。
これから、子どもたちの未来のために質の高い教育を実現するには、家庭や地域も一体となって子どもが育つ環境を支えていくことが求められています。そのためには社会全体の理解・協力も不可欠です。
教師の魅力って?
上記のように、教師は様々な悩みや問題を抱えています。しかし、教師の仕事は決して大変なだけではなく、それを超えるやりがいや魅力があります。これから、そんな小学校教師の仕事の素敵なところを紹介していきます!
小学校教師のやりがい
小学校教師は一日中子どもと行動を共にするため、子どもとの距離が近く、子どもの変化や成長を感じやすいです。そのため、一緒に喜怒哀楽を感じることができたり、自分も一緒に成長できたりすることにやりがいや魅力を感じる教師が多いです。
学習内容をなかなか理解のできなかった子どもが、少しずつでもできるようになったときの喜びは、教師という仕事だからこそ感じられることではないでしょうか。その他にも教師が感じる教師の魅力は下の図のようになっています。
(参照元:教職の魅力 | ベネッセ教育総合研究所)
このように教師にはさまざまなやりがいや魅力がありますが、現状として教師不足は課題となっています。2010年以降、全国的に団塊世代の大量退職が進み、多くの自治体は新規採用を増やしました。その影響で、それまで採用試験に合格できず臨時的任用職員(臨任)だった教員志望者の多くが正規採用され、結果として臨任が不足気味となりました。
しかし正規教員の人数は団塊世代の大量退職の穴を埋めるには至っておらず、足りない分を不足気味の臨任でまかなっている自治体もあります。
(参照元:教員の芽を育てる やりがいと楽しさを伝えて | 教育新聞)
Teach For Japanのフェローになろう!
Teach For Japanでは、教員免許の有無に関わらず、教育に対して情熱や成長意欲がある方に臨時免許状または特別免許状の制度を利用することで、フェロー(教員)として国内の小中学校に赴任できる制度を設けています。
まとめ
今回は小学校教師の具体的な仕事内容や、課題とされていることへの対応策などをご紹介しました。大変というイメージが先行しがちな小学校教師の仕事ですが、課題は課題として取り上げられ、少しずつですが変革が進められています。子どもに直接関わり、一緒に成長できる、という教師ならではの魅力について、実際に感じてみませんか?
参考
教師をめざそう! | 文部科学省
小学校教師の仕事 | Career Garden
小・中・高校の教員の仕事の違いって? | 高校生新聞ONLINE
教員の目を育てる やりがいと楽しさを伝えて | 教育新聞
小学校の教科担任制は是か非か~福島県の導入検討を機に~ | Education Tomorrow
新しい時代の教育のために「学校の働き方改革」が進められています! | 政府広報オンライン
フェローシップ・プログラムの仕組み | Teach For Japan
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