実はたくさんある教員海外研修!海外研修に行く方法と海外教育制度
- 活動レポート
海外の教育に興味がある!海外で教育について学びたい!と思ったことのある教員の方も少なくないでしょう。しかし、教員の仕事は忙しいし、今更海外なんて…と思っている方必見!今回は教員対象の海外研修を実施している団体、それに加え、アメリカの教育制度、イエナプラン教育について実体験を踏まえてご紹介します。
そもそも海外の教育って日本の教育とどう違うの?
日本の教育は「詰め込み型」で良くない!または、「道徳」に力を入れてて良い!など、日本の教育についての賛否を、みなさまも耳にしたことがあるかと思います。ただ、海外ではどのような教育が行われているかわからないものです。そこで、1つの比較対象として、海外教育の中でも、アメリカとオランダの教育について簡単にご紹介したいと思います。
アメリカ教育
アメリカ教育と日本教育の違いの一つは教育制度です。
(参照:米国の教育|米国教育省)
上の図は日本とアメリカの教育制度の就学前から高校卒業までの最も典型的な教育コースを示しています。最も大きな違いは4年間の高校だと言えるでしょう。4年間の高校生活の中で、生徒は学校に常勤の進路カウンセラーと共に、じっくり将来について考えることができます。
実際に、筆者はアメリカ・カリフォルニア州の高校を卒業しており、アメリカでの高校生活を経験しました。日本では定番の◯年◯組といった、学級制は導入されておらず、大学の授業のように自身が選択する科目によってクラスメートも、担当教員も変わります。
1クラスの人数は大体15人から20人程度で、講義型の授業ではなく、参加型の授業がほとんどです。個人プレゼンテーションやグループディスカッションの機会も多くあります。一回の授業も90分ですので、日本の大学のスタイルと似ていると考えて良いでしょう。
1日のスケジュール例
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※午後には自身が選択する、体育や美術の授業が入ります。
アメリカでの教育は、中学・高校から自ら時間割を選択するため、早いうちから将来について考え、自立を促す教育システムになっている印象を受けます。
オランダ・イエナプラン教育
イエナプラン教育はドイツで始まり、オランダで発展した一人一人を尊重しながら自立と共生を学ぶオープンモデルの教育です。今回はイエナプラン教育の特徴を2つご紹介します。
1.リビングルームとしての教室
イエナプラン教育を導入する学校では、教室をリビングルームとして捉えており、内装は教員と生徒が意見を出し合いながら整えていきます。日本の小学校で良く見られる、ひとりひとりの机が黒板を向いている教室とは異なります。グループごとのテーブルがあり、お互いの顔が見える位置に座り、いつでも話し合いができる環境になっています。教室には読書コーナーやPCコーナーがあり、調べ学習もできます。
2.循環する活動・科目によらない時間割
イエナプラン教育では、科目ごとの時間割は作りません。サークル対話ー遊びー仕事(学習)ー催し(行事やお祝い)の4つを循環させる時間割を作ります。
・サークル対話:決められたテーマ、または自由に車座になって話し合いを行う
・遊び:音楽に合わせて体を動かしたり、演劇作りをしたりする教育遊び
・仕事(学習):一つの課題について、個別に行う自立学習または共同学習を行う
・催し:一般的な祝祭、学校行事、グループ内ミニ学芸会のことを指す
Teach For Japanのアラムナイ(元小学校教員)の中にも、イエナプラン教育を自身の学級に取り入れた方がいます。朝の会と帰りの会は、クラスの児童がサークルになり、地面に座って行うようにし、児童と教師の距離を縮めたそうです。
★詳しくは、『旅行会社から小学校教員、そしてオランダへ。』の記事をご覧ください。
教員向けの海外研修ってどんなものがあるの?
国際協力機構(JICA)を通して
JICAでは、1年に一度、約10日間教師海外研修を実施しています。海外研修の目的は、下記の通りです。
1.国内研修と海外研修を通じ、世界が直面する開発課題及び日本との関係、国際協力の必要性に対する研修参加者の理解を促進する。
2.研修参加者による学校現場等での授業実践を通じ、開発課題を自らの問題として捉え、主体的に考える力、またその根本解決に向けた取り組みに参加する力をもつ児童・生徒の育成する。
(引用元:教師海外研修|JICA)
地方により、研修先や応募資格も異なりますので、詳しくは、JICAのホームページをご覧ください。2020年度の研修先は以下の通りです。
JICA東京 | ザンビア、パラグアイ |
JICA横浜 | ブラジル連邦共和国 |
JICA東北 | タンザニア(2019年度) |
JICA四国 | ラオス人民民主共和国 |
JICA筑波 | ネパール |
※2020年度の応募は各ホームページをご確認ください。
参考
教師海外研修|JICA東京,教師海外研修|JICA横浜,教師海外研修|JICA四国,教師海外研修|JICA筑波
教職員支援機構(NITS)を通して
NITSでは、英語教員を対象とした英語教育海外派遣研修を実施しています。派遣期間も長く、約2ヶ月で、派遣先はアメリカ又はイギリスの英語圏です。研修内容は、英語教育に関する指導方法等についての研究や、大学等での専門的な授業、活動への参加です。
応募には、語学資格試験のスコアや、海外研修に対応できる英語力を証明するものが必要となりますのでご注意ください。
※2020年度は中止が決定しています。
参考
英語教育海外派遣研修|NITS
語学資格試験会社を通して
TOEFLや英語検定などの語学資格試験を実施する団体が、教員向けの海外研修を主催する機会も多くあります。2019年度、日本英語検定協会は、小・中・高の英語教員向けに、オーストラリアにて14日間の海外研修を実施しました。また、TOEFL日本事務局(CIEE)は、海外体験プログラムの一つとして、教職員を対象とした2週間の海外派遣研修をアメリカにて実施した実績もあります。
参考
海外体験プログラム|CIEE、教員研修・セミナー情報|英検
Teach For Japanを通して
Teach For Japan(以下、TFJ)の中には、海外研修やTeach For Allの集会に参加するフェロー(教員)がいます。その中でも、今回は2016年にTFJフェローを対象として実施した海外研修をご紹介します。(なお、こちらの記事は2016年の内容であり、研修内容・形式・日時などは変更の可能性がありますのでご了承ください。)
この海外研修では、フェロー6名がアメリカ・カリフォルニア州のサンフランシコ近郊にある、Nueva SchoolにてSocial Emotional Learning(社会性と情動の教育)に関するワークショップへの参加が中心です。Social Emotional Learning(SEL)とは、自己理解・社会性・共感力・感情制御力などの育成のためのプログラムです。
ワークショップでは、実際にNueva Schoolで行われている感情を絵に描いて表現し、一冊の本にする活動などのSELについて、実践的に学ぶ機会があったそうです。
海外研修を通じて、フェローたちは、自身が実際に学級で実施している教育についてもう一度考え直したり、多様な教育方法の実施の大切さについて気づいたと振り返りをしています。
まとめ
今回は、教員を対象とする海外研修と海外の教育についてご紹介しました。JICAや語学資格試験会社、TFJなど、海外研修の機会は案外たくさんあるものです。自分自身が研修を通じて学びたいこと、成し遂げたいことを明確にすると自分に合った海外研修を見つけ出すことができると思います。様々な文化に触れ、視野を広げていくことが、自分の「理想の教育」を実施するための近道になるのではないでしょうか。
参考
米国の教育|米国教育省
イエナプラン教育とは|日本イエナプラン教育協会
教師海外研修|JICA
英語教育海外派遣研修|NITS
海外体験プログラム|CIEE
教員研修・セミナー情報|英検
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