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コラム column

小学校学習指導要領とは何か?改訂のポイントと教師として押さえるべき視点

小学校教育の土台となる「学習指導要領」。ニュースなどでその“改訂”が話題にのぼることはあっても、実際にどのような内容が書かれていて、どのような役割を果たしているのかを理解している方は少ないかもしれません。

この記事では、文部科学省が定める学習指導要領の基本的な定義や目的、学校現場との関係性について、一次情報をもとにわかりやすく解説します。特に将来、教員を目指す方や教育に関心を持つ方にとって、「学習指導要領を理解すること」は、教育実践の第一歩でもあります。

 学習指導要領とは何か?その目的と役割

「学習指導要領」とは、文部科学省が学校教育法施行規則に基づき定めている「全国共通の教育課程の基準」です。

文部科学省はその目的について、次のように述べています:
「全国的な教育の機会均等の確保と教育水準の維持向上を図るために、教育課程の基準として国が定めるもの」
— 学習指導要領等について(文部科学省)

このように、学習指導要領は地域差によらず、全国の子どもたちが公平で質の高い学びを受けられるよう、国が教育内容の基本を示す役割を担っています。

同時に、各学校が独自に工夫を加えながら教育課程(カリキュラム)をつくる際の“設計図”としても機能します。学校ごとの自由度を保障しつつ、全国的な学力や学習環境の水準を維持するためのバランスが図られた制度です。

学習指導要領に何が書かれている?従う義務はある?

学習指導要領には、主に次のような内容が記されています:

  • 各教科の目標内容(何をどのように学ぶか)
  • 教科ごとの授業時数(学年ごとの標準授業時数)
  • 「道徳」「総合的な学習の時間」「特別活動」の趣旨や内容
  • 学習評価や授業改善に関する基本方針

これらはすべて、児童・生徒の資質・能力の育成を目的に設計されています。

また、学習指導要領は「告示」という法的効力のある形式で定められており、学校はこれに基づいて教育課程を編成することが求められます。つまり、学校や教員には法的に従う義務があるという点で、教育現場における重要なルールブックだと言えます。

「学習指導要領は、学校教育法施行規則第52条等に基づき、教育課程の基準として国が定めるものである」
参考:文部科学省【総則編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説

従って、教師は学習指導要領を単なる参考資料ではなく、「公教育の設計図」としてしっかりと理解し、自らの指導の基盤とする必要があります。

学習指導要領の改訂はなぜ行われる?

学習指導要領は一度決まったら変わらないわけではありません。時代の変化や社会からの要請に応じて、およそ10年ごとに見直し(改訂)が行われています。

その背景には、子どもたちを取り巻く社会の変化や、将来必要とされる力の変化があります。

「改訂は、将来の社会を担う子供たちに必要な資質・能力を明確にし、それを育むための教育の方向性を示すことを目的としています。」
参考: 文部科学省『学習指導要領の改訂の経緯と基本的な考え方』より

約10年周期の改訂サイクルとその理由

改訂のサイクルが約10年である理由は、以下のような事情によります:

  • 学習内容が社会の変化に対応できるようにするため
  • 教育現場が新しい内容に十分に対応できる準備期間を確保するため
  • 政策・学力調査・教育現場の実態を反映させるため

たとえば、近年では「グローバル化」「情報化」「予測困難な社会(VUCA)」への対応が重視され、外国語教育の早期化プログラミング教育の導入などが行われました。

改訂の決定プロセスと仕組み

学習指導要領の改訂は、以下のような段階を経て決まっていきます:

  1. 中央教育審議会による諮問・審議
  2. 答申(案)の公表とパブリックコメントの募集
  3. 文部科学省による内容整理と検討
  4. 官報告示(=法的効力のある公的決定)
  5. 各自治体・学校現場への周知と研修の実施

このように、学習指導要領の改訂は一部の専門家だけでなく、広く社会の声を取り入れて行われているのが特徴です。

また、改訂後は数年の移行期間を設けて段階的に導入されるため、教員にとってもその間に理解と準備を進めることができます。

歴代の学習指導要領改訂から見る教育の変遷

学習指導要領は1947年の学校教育法施行後から、約10年ごとに改訂が繰り返されてきました。その背景には、社会の変化に対応するだけでなく、教育の在り方を通じてより良い社会の実現を目指すという理念が根底にあります。

つまり、学習指導要領は社会的要請を反映しながらも、単なる追従ではなく、教育から社会を変えていく力を内包するものです。以下では、主な改訂の流れをたどりながら、教育の価値観がどのように変遷してきたのかを紹介します。

【1947〜1958年】 教育の民主化と戦後復興

  • 背景:戦後教育改革期。アメリカの教育制度に倣い、民主主義教育を目指した。
  • 特徴:生活単元学習など、経験主義的な学びの重視。道徳は教科に含まれず。

【1968年改訂】 高度経済成長と学力重視の時代

  • 背景:産業の発展に伴う「科学技術立国」への転換。
  • 特徴:「基礎学力の定着」「教科重視」の姿勢へ。学力の全国的向上を狙う。

【1977年改訂】 “ゆとり”の導入と個に応じた教育へ

  • 背景:詰め込み教育への反省。子どものストレスや不登校問題が社会化。
  • 特徴:「ゆとりと充実」をキーワードに授業時数を全体で10%削減。

【1989年改訂】 「生きる力」へのシフト

  • 背景:価値観の多様化、個性尊重の潮流。
  • 特徴:「生きる力」という概念が初登場。ゆとり教育の理論的基盤に。

【1998年改訂】 総合学習の導入と週5日制

  • 背景:「個性重視の教育」本格展開。知識偏重からの転換。
  • 特徴:総合的な学習の時間を新設。学校週5日制の完全実施に向けた調整。

【2008年改訂】 学力回復とバランス重視

  • 背景:「ゆとり教育」批判と学力低下の社会的議論。
  • 特徴:授業時数の大幅増。知識・技能と表現力の育成の両立へ。

【2017年改訂(2020年度全面実施)】 社会変化への対応

  • 背景:グローバル化、ICT化、Society5.0など、変化の激しい社会への備え。
  • 特徴
    1. 外国語(英語)の教科化(小5・小6)
    2. プログラミング教育の必修化(小3~)
    3. 主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の推進
    4. カリキュラム・マネジメントの導入

参考:
学習指導要領の変遷
文部科学省『平成29年 告示 小学校学習指導要領(総則・各教科)』

教育の進化が示すこと

こうした歴代の改訂からわかるのは、教育制度が単に“教える内容”を変えるのではなく、「どんな社会で子どもが生きていくのか」という視点から、その時代に必要な学びを問い続けてきたということです。

教師や教文部科学省【総則編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説育を志す人にとって、これらの改訂の背景や意図を知ることは、今の教育課題を理解するだけでなく、学習指導要領を自分ごととして捉える第一歩となります。

最新の学習指導要領(2020年度全面実施)のポイント

2017年に告示され、2020年度から小学校で全面実施された現行の学習指導要領は、“変化の激しい社会を生きる力”の育成を重視しています。
キーワードは、「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」と「カリキュラム・マネジメント」。これまで以上に、教員の役割や授業設計に大きな変化が求められています。

文部科学省はこの改訂の目的を以下のように説明しています。

「予測困難な時代に向けて、どのような力を子供たちに育んでいくのか。今回の改訂では、『生きる力』をより一層育成することを目的とし、教育課程全体の見直しを行った。」

参考:文部科学省【総則編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説

改訂の背景にある「Society5.0」と教育の再定義

今回の改訂は、日本政府が掲げる未来社会像「Society5.0」に対応したものでもあります。AI・IoT・グローバル化が進む時代において、「知識を覚えるだけではなく、それを活用して課題を解決する力」が求められています。

「これからの社会では、自ら課題を見つけ、自ら学び、考え、判断して行動し、よりよい社会と幸福な人生を切り拓く力が必要である。」

参考:文部科学省『平成29・30・31年改訂学習指導要領の趣旨・内容を分かりやすく紹介』

主な変更点(小学校)

■ 外国語教育の教科化

  • 小学5・6年生で英語が正式な「教科」に
  • 小学3・4年生では「外国語活動」として導入
  • 読む・書くに加え、「聞く・話す」活動も重視される構成に

参考:文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)外国語編』

■ プログラミング教育の必修化

  • 小学3年生からプログラミング的思考を育む授業が開始
  • 専門科目ではなく、理科や算数の中に統合されて実施されることが多い

参考:文部科学省『小学校プログラミング教育の手引(第3版)』

■ 主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の導入

  • 全ての教科で、「学び方そのもの」に注目
  • 生徒が自ら考え、仲間と話し合い、深めていく授業デザインが重視される

参考:文部科学省『新しい学習指導要領の考え方(小学校編)』p.6

■ カリキュラム・マネジメントの明記

  • 各学校が教育目標と地域課題に応じて教育課程を管理・運用する力を強化
  • 教職員の協働や校内研修などを通じた組織的改善が求められるようになった

参考:文部科学省『学習指導要領 解説 総則編』第4章

資質・能力の三つの柱



現行の学習指導要領は、以下の3つの観点を軸に、教育全体の再構成がなされています。

  1. 知識・技能の確実な習得
  2. 思考力・判断力・表現力の育成
  3. 学びに向かう力・人間性の涵養

これらを総称して、「資質・能力の三つの柱」と呼び、すべての教科・活動がこの観点に沿って設計されています。

参考:文部科学省『小学校学習指導要領 解説 総則編』p.3〜

教師に求められる「変化対応力」

今回の改訂では、「何を教えるか」だけでなく、「どう教えるか」「どう学びを支えるか」までが重視されるようになりました。つまり、教師には指導力だけでなく、学びを設計・マネジメントする力がより一層求められています。

教師として学習指導要領に向き合う意味

学習指導要領は、単なる教育行政の文書ではなく、現場の教師にとっては「指導の設計図」であり「共通言語」です。教員がその理念や構造を理解することで、子どもたちに届ける学びの質は大きく変わります。

学習指導要領は“最低基準”であり“創造の土台”

文部科学省は、学習指導要領を「全国的な教育の機会均等の確保と水準の維持向上を図るための“基準”」と位置づけています。

「学習指導要領は、教育課程の基準であり、各学校はこの基準を踏まえ、実情に応じて特色ある教育課程を編成することが求められる。」
参考:文部科学省『学習指導要領の構造と意義』

つまり、教師はこの“基準”をただ守るだけではなく、自校の子どもたちや地域の特性に応じて「自ら考え、つくり上げていく教育」を実現することが期待されているのです。

フェローとして現場で指導要領を“体現する”経験

Teach For Japanのフェローシップ・プログラムでは、2年間、実際の公立学校に教員として赴任し、教師として指導にあたります。この中で、学習指導要領を“読むだけでなく、実践を通して深く理解していく”ことができます。

  • どうやって「主体的・対話的で深い学び」を授業に落とし込むのか
  • 教科横断的に「資質・能力の三つの柱」をどう育むのか
  • 教室内だけでなく、学校全体のカリキュラム・マネジメントにどう関わるのか

こうした問いに日々向き合う中で、フェローたちは教育者としての視野を広げ、実践知を育んでいきます。

Teach For Japanのような育成プログラムでは、文部科学省の指導要領に基づいた指導案づくりや授業改善の方法論を学び、先輩教員や仲間とともに実践と省察を繰り返します。

「知識として理解する」だけではない、「理念を行動に落とし込む力」――。これこそが、学習指導要領に“向き合う”ということなのです。

学習指導要領を読む力は、教育課題を捉える力

最後に、学習指導要領は「教育政策の鏡」としての側面も持ちます。
そこには、国や社会が子どもたちにどのような力を求めてTeach For Japanいるのか、あるいは現場がどのような課題を抱えてきたかといった背景が色濃く反映されているのです。

例えば:

  • 「総合的な学習の時間」=答えのない課題に向き合う力
  • 「外国語・プログラミング」=グローバル・デジタル時代への備え
  • 「カリキュラム・マネジメント」=学校全体で学びをデザインする時代へ

これらを単なる制度の変化と見るのではなく、「なぜ、いま、これが必要なのか?」という問いを持って読むことが、教員としての成長の鍵となります。

教師を目指す人にとって、学習指導要領は「試験対策」や「ルールブック」ではなく、日々の実践に生きる“羅針盤”です。
そして、Teach For Japanでの実践を通じて、あなた自身がその羅針盤を手にし、子どもたちの可能性を引き出す力となっていくのです。

まとめ:学習指導要領を“教師視点”で読み解く

学習指導要領は、子どもたちの未来に必要な力を育むための「教育の設計図」です。その背景には、社会の変化や教育課題に応じて常に見直されてきた日本の教育の歩みがあります。

本記事では、以下のポイントを押さえてきました:

  • 学習指導要領の役割:全国共通の教育課程基準として、教育の質と機会の平等を支える
  • 改訂の意図と背景:社会の変化に応じて、およそ10年ごとに見直される柔軟な仕組み
  • 最新改訂のポイント:外国語教育、プログラミング、アクティブ・ラーニング、カリキュラム・マネジメント
  • 教師としての向き合い方:知識だけでなく理念や背景を理解し、授業や学校づくりに活かす力が求められる

そして、学習指導要領を深く理解することは、教育の本質を見つめ、自らの実践を磨いていく出発点でもあります。

Teach For Japanのフェローシップ・プログラムでは、こうした学習指導要領の理念を実践に落とし込みながら、子どもたちと共に学び成長する2年間を経験することができます。

「教育を通じて社会に貢献したい」
「本質的な学びの場をつくりたい」
そう考えるあなたにこそ、この“設計図”を手にして歩み出してほしいのです。

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