教員採用試験とは?概要・対策とTeach For Japanフェローシップ・プログラム活用のすすめ
- コラム
教員採用試験の概要(受験資格や手続きの基本)
教員採用試験とは、各都道府県・政令指定都市の教育委員会が実施する「教員採用候補者選考試験(検査)」の通称です。
この試験に合格すると、「教員採用候補者名簿」に登録され、翌年度の採用候補者として学校への配置対象となります。
つまり、試験合格=自動採用ではなく、名簿登載を経て正式に採用決定がなされる仕組みです。
受験資格は自治体ごとに異なりますが、一般的には以下の条件が必要とされています。
- 小学校・中学校・高等学校など、志望する校種に対応した教員免許状を取得済みまたは取得見込みであること
- 年齢要件(多くの自治体で年齢制限を緩和、または撤廃傾向)
- 日本国籍を有すること(ただし、外国籍でも採用可能な自治体も増加中)
また、近年は社会人や異業種からの転職希望者を対象とした特別選考枠を設ける自治体も増えており、多様な人材の登用が進んでいます。
(参考:教員採用候補者選考試験(検査)の概要|東京都教育委員会)
試験内容は、筆記(教職教養・専門教養など)に加え、面接・模擬授業・論文など多面的な評価が行われます。
自治体によって配点や評価基準が異なるため、志望する地域の最新情報を確認することが重要です。
(参考:令和7年度 教員採用試験ガイド|リクルート進学総研)
試験の位置づけと目的(公立校教員採用の仕組み)
教員採用試験は、公立学校の教員を採用するための公式ルートであり、教育委員会が地域の教育水準を維持・向上させるために行う重要な制度です。
公立校の教員は地方公務員として位置づけられ、採用・配置などを一貫して各自治体が行います。
(参考:地方公務員としての教員|文部科学省)
試験の目的は単に知識を測ることではなく、「子どもたちの学びと成長を支えられる人材を見極めること」にあります。文部科学省は令和4年度の通知「教師の採用等の改善について」において、教員採用では筆記試験だけでなく、面接・実技・社会経験・ボランティア活動や大学での活動実績などを多面的な方法・尺度で総合的に評価することが重要であると明記しています。
この方針を受け、近年の教員採用試験では 知識や教科理解に加えて、教育への情熱、子ども理解、課題解決力といった“人物・資質”の評価を重視する傾向 がより明確になっています。
さらに、自治体によっては 地域社会との連携への姿勢や、多様性への理解を評価軸として取り入れる動き も広がっています。
そのため、近年の選考では人物重視の傾向が顕著で、教育への情熱・子ども理解・課題解決力などが重視されています。
また、地域社会との連携や、多様性への理解を評価軸に加える自治体も増えています。
(参考:教員採用試験の現状と課題|日本教育大学協会)
近年の教員採用試験は、学力だけでなく資質・能力を多面的に評価しようとする取り組みが各自治体で進められており、教員としての資質をより幅広い観点から確認する制度へと見直しが図られている状況です。
次章では、こうした方針のもとで実施される試験プロセスや、主要な試験科目の構成について詳しく紹介します。
(参考:教員採用候補者選考試験|文部科学省)
教員採用試験の試験内容
教員採用試験は、筆記・論文・面接・実技・適性検査など複数の選考を通じて、教員としての総合力を評価する仕組みです。
近年は「人物重視」の傾向が強まり、知識だけでなく、教育現場での行動力や人間性、課題解決力が重視されています。
多くの自治体で1次試験(筆記中心)と2次試験(面接・実技中心)の二段階構成となっています。
(参考:教員採用候補者選考試験の概要|文部科学省)
筆記試験(教職教養・一般教養・専門教養)
筆記試験は、教育に関する基礎知識と専門分野の理解を問う主要な選考です。
一般的に、以下の3区分に分かれています。
- 教職教養:教育原理・教育法規・教育心理・教育時事など、教員としての基礎知識を確認する。
- 一般教養:国語・数学・英語・時事・社会問題など、幅広い教養と論理的思考力を測る。
- 専門教養:志望する教科(例:国語・理科・数学など)の学習指導要領や専門知識を問う。
出題形式はマークシート方式が中心ですが、記述式を採用する自治体もあります。
また、自治体によって科目配分・難易度が異なるため、過去問分析と出題傾向の把握が重要です。
(参考:教員採用試験の内容と傾向|アガルート)
論文・面接試験(形式や対策ポイント)
論文試験では、教育課題に対する考え方や教育観、実践力を文章で表現する力が問われます。
テーマは「理想の教師像」「多様性の尊重」「不登校支援」「ICT教育」など、教育現場での課題と密接に関わるものが多く、単なる知識ではなく、自身の経験や教育への姿勢を具体的に言語化することが求められます。
(参考:教員採用試験 論作文(小論文)出題テーマや対策法|東京アカデミー)
面接試験は、個人面接・集団討論・模擬授業などの形式で実施されます。
面接官は教育委員会職員や現職校長が務めることが多く、「教育理念への共感」「子ども理解」「協働姿勢」などが評価ポイントとなります。
また、一次面接(個別質問)と二次面接(模擬授業・場面対応)の組み合わせで実施される自治体も増えています。
(参考:教員採用試験 面接対策|アガルート)
実技・適性検査(対象者・内容)
実技試験は主に「音楽」「美術」「保健体育」「英語」などの教科や小学校・特別支援学校志望者を対象に実施されます。
たとえば体育では運動技能・指導説明力、音楽ではピアノ伴奏・歌唱、美術では描写力など、教科特性に応じた実践力を評価します。
また、近年では児童理解・ストレス耐性・協働性などを測る適性検査(性格診断・シミュレーション形式)を導入する自治体もあります。
(参考:教員採用試験 実技・適性検査の実施概要|大阪府教育委員会)

こうした多面的な選考を通じて、自治体は「知識だけでなく、教育現場で信頼される実践力を備えた人材」を見極めています。
次章では、受験スケジュールと学習・準備の進め方を、年間の流れに沿って整理します。
試験日程と倍率・難易度
教員採用試験は全国の自治体がそれぞれ実施しており、日程や倍率は地域によって異なります。
しかし、おおまかな流れや試験傾向には共通点があり、1年間のスケジュールと倍率動向を理解することが、効率的な準備の第一歩となります。
年度ごとのスケジュール(願書~試験~合格発表)
教員採用試験は、例年春〜夏に出願・一次試験、秋に二次試験・合格発表という年間サイクルで進行します。
一般的なスケジュールの目安は以下のとおりです。
| 時期 | 内容 |
| 3月〜5月 | 募集要項の公開・願書受付開始 |
| 6月〜7月 | 一次試験(筆記中心) |
| 8月〜9月 | 二次試験(面接・実技中心) |
| 10月〜11月 | 合格発表・採用候補者名簿登録 |
| 翌年4月 | 採用・着任(自治体により異なる) |
自治体ごとの詳細は教育委員会の公式サイトで公開されており、東京都・大阪府・福岡県などでは出願から発表までオンライン化が進んでいます。
(参考:教員採用候補者選考試験の概要|文部科学省)
最近の倍率・受験者動向(低倍率化の背景)
文部科学省が公表する「教員採用試験結果の概要」および各自治体の試験結果データによると、近年、教員採用試験の倍率は全国的に緩やかな低下傾向が見られます。
例えば、2024年度の全国平均倍率は約2.8倍で、東京都は約3倍、福岡県は約2.7倍など、地域によって倍率には差があるものの、全体として大きな上昇傾向は確認されていません(一次情報:文部科学省「教員採用試験結果の概要」より)。
こうした傾向の背景には、以下のような複数の要因が指摘されています。
- 団塊世代の大量退職に伴う採用数の増加
- 教職志望者の減少(働き方等に関する要因)
- 各自治体が実施する人材確保施策の強化
また、特に小学校では倍率が低くなる傾向があり、自治体によっては2倍を下回るケースも報告されています。一方、教科によっては依然として高倍率が続く領域もあり、英語・音楽・保健体育などは地域によって5倍以上となる場合もあります
(参考:教員採用試験の倍率(難易度)や日程・内容について|TAC株式会社)
公立校と私立学校の採用方式の違い
教員採用には、自治体が実施する公立学校向けの試験と、各法人・学校が独自に行う私立学校の採用試験があります。選考基準や評価方法はそれぞれ異なり、私立学校では学校ごとの教育方針に基づく独自の人材観に沿って採用が行われる点が特徴です。
| 比較項目 | 公立校採用試験 | 私学採用試験 |
| 実施主体 | 各都道府県・政令市の教育委員会 | 各学校法人・私学団体 |
| 採用形態 | 教員採用候補者名簿登録制(合格後に任命) | 学校ごとの直接採用 |
| 試験内容 | 筆記・面接・実技・適性検査など統一基準 | 学校により多様(模擬授業重視など) |
| 勤務形態 | 公務員(地方公務員法の適用) | 私立学校職員(契約形態多様) |
| 安定性 | 高い(自治体任用) | 学校経営状況により変動あり |
私学では「私学教員適性検査(私学教員採用協会主催)」や、各学校独自の採用試験が実施されます。
また、教育理念や学校文化に共感する姿勢が重視される傾向があります。
(参考:私学教員採用の流れ|全国私学教員採用協会)

教員採用試験は、倍率だけでは測れない「教育への姿勢」が重視される時代に移行しています。
次章では、社会人から教職を目指す場合のルートと、Teach For Japanが提供する新しい選択肢について紹介します。
合格に向けた学習・対策法
教員採用試験は「知識」と「人物」をバランスよく問う総合試験です。
合格の鍵は、限られた時間の中で効率的に学習スケジュールを設計し、実践的な教育理解を深めること。
現役生・社会人それぞれに合った対策の考え方を紹介します。
学習スケジュールの立て方(現役生・社会人別)
教員採用試験の受験者は、現役学生と社会人で利用できる時間や学習環境が異なります。そのため、一般的には次のようなスケジュールが示されています。
●現役学生の場合
現役学生は大学での教職課程と並行して受験準備を進める必要があります。多くの大学では、3年次に教職教養・専門教養科目の履修が増え、4年次には教育実習や卒業論文と同時進行で試験対策を行います。このため、大学3年~4年の期間に筆記試験や面接の準備を進めるケースが一般的です。
●社会人受験者の場合
社会人受験者は勤務時間との両立を図る必要があるため、長期的な計画が採られる例が多く、1年程度を見込んで学習を進めるケースも見受けられます。
民間の教員採用試験対策講座では、社会人向けに「平日の限られた時間で学習できる構成」「オンラインでの学習モデル」など、長期計画を前提としたカリキュラムが一般的に提供されています。
このような一般的な年間スケジュール例が提示されています。
| 期間 | 主な目標 |
| 1〜3か月目 | 出題傾向の把握、教職教養の基礎固め |
| 4〜6か月目 | 一般教養・専門教養の過去問演習開始 |
| 7〜9か月目 | 論文・面接・模擬授業対策を実践 |
| 試験直前 | 弱点補強と教育時事の確認 |
民間企業が提供する教員採用試験対策講座では、社会人向けに「週10時間×1年で合格を目指す」といったカリキュラムが一般的です。
(参考:教員採用試験 合格までのスケジュール|アガルート)
過去問・参考書の活用方法
教員採用試験の筆記試験では、出題傾向が比較的安定しているとされ、民間の試験対策講座や出版社の解説資料でも、複数年分の過去問題を用いた学習が広く紹介されています。
特に頻出分野として言及される科目例には次のようなものがあります。
- 教育原理
- 教育法規
- 心理学
- 学習指導要領
- 各教科に関する基礎知識(専門教養)
市販されている過去問題集や解説書には、出題傾向をテーマ別に整理したものや、教科別の演習問題がまとめられたものが一般的で、協同出版の問題集シリーズや市販の過去問集が広く利用されています。
(参考:教員採用試験の過去問と勉強法|アガルートアカデミー)
面接・教採検査の準備ポイント
二次試験以降では、「どんな教師を目指すか」「教育現場で何を実現したいか」という人物評価が中心になります。
面接は個人面接・集団討論・模擬授業などの形式で行われ、教育観・児童理解・チームワーク力などが見られます。
対策のポイントは以下の3つです。
- 教育方針と時事の理解:文部科学省の教育施策(GIGAスクール構想、インクルーシブ教育など)を自分の考えに結びつけて語る
- 実践経験の棚卸し:教育実習・塾講師・ボランティア経験を整理し、行動と成果を具体的に説明できるようにする
- 模擬面接の練習:録画・録音を活用し、表情・声のトーン・論理構成を客観的にチェックする
また、教育実習の経験や現場でのボランティアは、単なる履歴ではなく**「教員としての視点を育む学びの場」**です。

次章では、「社会人から教員になる具体的な方法と、TFJフェローとしての教育実践経験の意義」について紹介します。
Teach For Japanフェローシップ・プログラムの活用
教員採用試験は多くの人にとって「教壇に立つための一般的な道」ですが、近年は多様な入職の仕方が注目されています。
その中でも、「Teach For Japan(TFJ)フェローシップ・プログラム」は、教育に情熱を持つ社会人・学生にとって新たな選択肢です。
ここでは、フェローシップ・プログラムの概要を紹介します。
フェローシップ・プログラムとは(概要)
教員採用試験は教師を目指す人にとって「教壇に立つための王道ルート」ですが、それ以外にも、教師になることができる道がひらかれています。その一つが、Teach For Japan(TFJ)が提供するフェローシップ・プログラムです。
TFJは、「すべての子どもが、素晴らしい教育を受けることができる世界の実現」をビジョンに掲げる認定NPO法人。フェローシップ・プログラムは、教員免許の有無を問わず、選考・赴任前研修を経て、2年間公立学校で常勤教員として勤務することができる仕組みです。
このプログラムには、民間企業で働いている社会人、大学生・大学院生など、多様なバックグラウンドを持つ人々が参加しています。年齢制限もなく、「教育を通して社会をより良くしたい」という想いがあればチャレンジ可能です。
2年間のフェロー期間では、子どもと向き合う日々の授業実践を通じて、教育の現場でしか得られない深い学びを経験します。さらに、TFJ独自の研修・サポート体制があり、自ら学び続ける意志を持つ参加者に対して、それを支える環境と仲間がそろっていることが、このプログラムの大きな特長です。また、フェロー同士が全国からつながり、共に悩み、学び、実践を振り返るコミュニティも大きな魅力です。この“学び続ける文化”が、試験対策だけでは得られない実践力と自己理解を育む環境をつくり出しています。
教員としてのキャリアを真剣に考えている方にとって、フェローシップ・プログラムは、免許の有無を問わず「教育に飛び込む」ための社会的に認知された新しい選択肢です。
(参考:フェローシップ・プログラム|Teach For Japan)

まとめ:教員採用試験とフェローシップ・プログラムという選択肢
教員採用試験は、教育現場に立つための重要な関門です。
筆記・論文・面接など多面的な試験を通して、教育への理解力、思考力、そして人間性が問われます。
そのため、単なる知識習得だけでなく、子どもたちと向き合う姿勢や、教育現場での対応力を身につけることが欠かせません。
そうした中で、フェローシップ・プログラムは、免許の有無に関わらず「教育の現場で学びながら成長する」ことができる新しい選択肢として注目されています。2年間、子どもたちと向き合いながら実践を積み、自ら学び続けるフェローたちは、全国の仲間と支え合うコミュニティの中で、学び合っています。
「教育を通じて社会をより良くしたい」「子どもたちの可能性を信じて、ともに学びたい」
そう願うあなたにとって、TFJのフェローシップ・プログラムは、その一歩を踏み出すための実践的な道となるはずです。
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