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コラム column

【高等学校】次期学習指導要領に向けた議論まとめ​​〜2024年最新版〜

2022年から実施された高等学校の学習指導要領では、教科や科目等が見直され、従来の教科が大きく再編されました。2025年からは、大学入学共通テストの科目に「情報Ⅰ」が新たに追加されるなど、高等学校における教育は大きな転換期を迎えています。
さらに、2023年6月、第4期教育振興基本計画が新たに閣議決定されました。この計画では、Society5.0時代を見据え、現代社会の問題を踏まえて今後必要とされる教育施策を掲げています。
本コラムでは第4期教育振興基本計画の内容を整理しつつ、現行の学習指導要領の内容との比較を通じて、今後の高等学校における教育の方向性についてご紹介します。

高等学校学習指導要領まとめ

2022年の学習指導要領改訂では、どのような点が改訂されたのでしょうか?各教科における科目構成の変更点についてもう一度確認してみましょう。

新たな教科・科目構成

2022年に新たに導入された高等学校学習指導要領では、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の3つの柱に焦点を当てています。主に「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業の改善が重視され、生徒一人ひとりが社会で活躍するための資質・能力を育成することを目的としています。

教科・科目構成の見直しでは、国語科の科目再編や地理歴史科と公民科の新設科目、共通教科「理数」の新設などが行われました。これらの変更は、生徒が知識を深く理解し、多角的な視点から問題を捉えることができるように設計されています。

「理数」には、「理数探究基礎」と「理数探究」の2科目があり、課題発見・解決に必要な資質・能力の育成を目指しています。複数教科の見方・考え方を組み合わせながら、探究のプロセスを通して総合的な力を伸ばします。さらに、「理数探究基礎」または「理数探究」を履修した場合、その成果次第で「総合的な探究の時間」の履修に代えることも可能とされています。

情報教育では、プログラミングやネットワーク、データベースの基礎を全生徒が学ぶ「情報Ⅰ」が新設され、データサイエンス等の内容が盛り込まれています。さらに、情報は2025年からの大学入学共通テストの試験科目の一つにもなっています。

次なる学習指導要領の改訂へ向けた議論

高等学校における現行の学習指導要領は実施されてからまだ2年しか経っていませんが、政策レベルではすでに、次の学習指導要領の改訂に向けた今後の教育の方向性についての議論が行われています。そこで参考になるのが、政府が5年ごとに策定する教育に関する総合的な計画である、「教育振興基本計画」です。2023年6月16日に閣議決定された最新の計画は、第4期教育振興基本計画(以下、第4期計画)になります。

第4期計画では、前期計画期間中の教育施策の成果と課題を踏まえ、2023年度から2027年度までの教育政策の基本的な方針や目標、実現に必要な基本施策、進捗状況を把握する指標等が示されています。​​

教育振興基本計画については以下の記事の中で詳しく紹介しています。
【中学校】次期学習指導要領に向けた議論まとめ​​〜2024年最新版〜

第4期計画16の教育政策目標と現行の高等学校学習指導要領

それでは、第4期計画16の教育政策目標で掲げられた目標をいくつか取り上げ、現行の高等学校学習指導要領の内容と比較し、次の学習指導要領改訂の方向性を考察していきます。

目標1 確かな学力の育成、幅広い知識と教養・専門的能力・職業実践力の育成

第4期計画の目標1では、高校教育改革を推進するため、現行の学習指導要領でも重視されている「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて、以下の取り組みが重視されています。

  1. 普通科改革や探究・STEAM教育、先進的なグローバル・理数系教育、産業界と連携した実践的な教育等を通じて、各高等学校の特色化・魅力化を図り、生徒の学習意欲を喚起する。
  2. 地域、高等教育機関、行政機関等との連携を推進し、オンラインを活用した学校間の共同授業、単位互換、多様な学びの連携などを行う。
  3. 高等学校と関係機関等との連携協力体制を構築するコーディネーターの配置・育成を進める。
  4. 普通科以外の普通教育を主とする学科の設置や、高校生の授業外学習時間の充実を図る。
  5. 中学校と高等学校、高等学校と大学等との円滑な接続を推進する方針も示されており、高大接続改革の着実な推進、中高接続の特色ある取り組みの推進

このように、高校教育については、社会との連携を深め実践的な教育を推進すること、多様なニーズに応じた特色ある学びを実現すること、学校種間の円滑な接続を図ることが重視されています。

また、第4期計画では「高校における早期の文系・理系のコース分けからの脱却等に向けて、高校普通科改革等による文理横断的・探究的な教育を推進する」ことを掲げています。
(引用元:文部科学省|教育振興基本計画(本文)「目標1 確かな学力の育成、幅広い知識と教養・専門的能力・職業実践力の育成」p. 38

現状では学習指導要領における、「理数」及び「総合的な探求の時間」が、文理横断・文理融合教育を推進しています。また各教科でも文理横断的な内容を取り扱うことで、教科横断的な学びを実現すると同時に、文理横断・文理融合教育を実現することができます。

しかし第4期計画では、教科内での文理融合教育にとどまらず、より抜本的に文系と理系のコース分け自体を見直す方向性を打ち出している点が新しいと言えます。今後、高校における文系と理系というコース分けの脱却をどのように進めていくのかは、注目に値するでしょう。

目標4 グローバル社会における人材育成

目標4では、グローバルな視点を持ち、異文化間でのコミュニケーション能力や新しい価値を創出する能力、主体性や包摂性を身につけ、国際社会で活躍できる人材の育成を目指しています。この目標の実現に向けた基本施策として、高校段階からの海外経験や留学支援の促進、長期留学支援の推進などが挙げられています。以下が具体的な施策です。

・英語力について、中学校卒業段階で CEFR のA1レベル相当以上、高等学校卒業段階で CEFR のA2レベル相当以上を達成した中高生の割合の増加(5年後目標値:6割以上)
・特にグローバルに活躍することが期待される層の拡充に向けて、高等学校卒業段階で CEFR のB1レベル相当以上を達成した高校生の割合の増加。
・2033年までに、日本人高校生の海外留学生数について、12万人を目指す。
・2033年までに、日本の高校への外国人留学生数について、2万人を目指す​​。

目標4において特徴的なのは、高校卒業時に期待される英語力の指標が、語学力の国際基準であるCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)に基づいて、明確に設定された点にあります。現在の学習指導要領では、高校卒業時にCEFRのどのレベルの語学力を習得するかは、明記されていません。

(外国語教育の抜本的強化のイメージ – 文部科学省をもとに筆者作成)

このようにCEFRの具体的なレベルを明示したことで、達成すべき語学力のレベルが明確になりました。また、高校生の段階での海外留学生数を増やすという目標からも、今後ますます外国語教育の充実が求められていくでしょう。

目標9 学校・家庭・地域の連携・協働の推進による地域の教育力の向上

目標9では、学校、家庭、そして地域社会が一体となって、子どもたちの成長を支え、教育力の向上を図ることが強調されています。​​
その中でも特に、
1. コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進
2. 家庭教育支援の充実
3. 部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行に向けた環境の一体的な整備​​

以上の3点を基本施策として掲げています。

この計画は、教育の場を学校内に限定せず、地域全体で子どもたちを育てることの重要性を指摘しています。具体的に、高等学校に関連する内容としては、地域社会との連携による教育プログラムの開発や、地域の人材や資源を活用した授業の実施などが挙げられます。

まとめ

第4期計画で提示された今後の教育政策の見通しは、社会の変化に対応し、未来を見据えた教育の再構築に向けたものです。現在の学習指導要領でも重視されている主体的・対話的で深い学びを中心に、文理横断・文理融合教育の推進、グローバル社会で活躍するための外国語教育の充実、家庭や地域社会と連携した教育活動の展開が目指されています。これらの政策方針は、多様化し複雑化する現代社会において、生徒たちが自立し、多角的な問題解決能力を持って活躍できるようにするための、教育の新たな方向性を示していると言えるでしょう。これらの議論が次の学習指導要領の改訂にどのように反映されるのか、引き続き注目しましょう。

また、Teach For Japanのフェローシップ・プログラムは、既に現役の教師として活躍される皆様にも開放することを通して、これまで形成してきた学びのコミュニティをより一層発展させ、一人ひとりが学習に関する専門性を高めていくことで、子どもたちにとってより良い学習環境を創出することを目指しています。実際に、高校に勤務されている方も学び直しの機会として、学び続ける教師としてプログラムに参加しています。

プログラムに参加した方の声が聞けるイベントも実施しておりますので、ご興味ある方はぜひご覧ください。
イベント情報はこちら

参考
教育振興基本計画(本文)| 文部科学省
教育振興基本計画(概要)| 文部科学省
教育振興基本計画(リーフレット)| 文部科学省
【総則編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説
【外国語編 英語編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 
【高校版】2022年新導入!高校の新学習指導要領の特徴や変更点を解説
各資格・検定試験とCEFRとの対照表| 文部科学省
教育の未来を研究する会編『最新教育動向2021 必ず押さえておきたい時事ワード60&視点120』,明治図書出版,2021年

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