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フェローインタビュー fellowinterview

【イベントレポート】どうして現役教師がTFJフェローに?“現役教師の私たちが、学校外の多様な人たちと学び合えるコミュニティを求めてTFJに参画したら「教育」の見えかたが変わった話”

今回は、現役教員からフェローになったお二人をお招きして、フェローシップ・プログラムに参加した理由や赴任前の研修、TFJのコミュニティ、学校現場での取り組みなどについてお聞きするイベントを開催し、その内容を記事にしています。

【ゲストプロフィール】
▼平野悠佳さん(Teach For Japan 第11期フェロー / 公立小学校教諭)
公立小学校の音楽専科教員。東京学芸大学教育学研究科修士課程修了。専門は民族音楽学、音楽教育学。大学院修了後、東京成徳大学子ども学部及び小中学校の非常勤講師を経て、現職。「『やりたい』ができる力を育てる」をテーマに授業実践を行う。教職の傍ら、音楽科での学びを最大化することを目指して、世界の音楽の共通性と文化固有性に関する研究を行う。TALIS2018ビデオスタディ短期専門研究員。サイエンスキャッスル2019研究アドバイザー。東洋音楽学会、日本音楽教育学会所属。

▼古賀元さん(Teach For Japan 第11期フェロー / 公立高等学校教諭)
1986年生まれ。高校卒業まで東京で過ごし、大学・大学院は神戸で地球科学を専攻。その後、東京のIT系企業に就職し、企業向け営業として3年間勤務したのち、高校教員(理科・地学)に転職し、今年度で教員10年目。これまで担任・学年主任・IT・総合的な探究の時間等を担当。「教育が変われば未来が変わる」を理念に、教えない授業、プロジェクト学習、協同学習、SDGs、防災教育等に取り組んでいる。

▼YouTubeにて動画でご視聴いただけます!

フェローシップ・プログラムに参加した理由

Q:TFJに参加する前のキャリアや活動について教えてください。

平野:大学の時は、音楽学という分野を専門にしていました。大学を選ぶときも、音楽学を学べる大学に行きたいというのが一番で、教員になるかどうかは決めていませんでした。教育大学だったので、入学してから子どもに教える機会があって、その中で自分は教員に向いているなと気づきました。そこからは音楽教育でやっていこうという気持ちになりました。
そのあと大学院に進学して、どうしたら限られた音楽の授業時間の中で子どもたちに様々なジャンルの音楽に親しむ力を付けることができるかについて研究をしていました。そして、非常勤講師を経て小学校教員になりました。

古賀:地学が好きだったので、大学・大学院時代は、教育とは全く関係がない理学部で地球惑星科学という分野を専攻していました。大学時代に教職課程を履修していましたが、大学を卒業してすぐは力が足りないと思いました。
なので、3年間は修行のつもりで民間企業に就職しました。IT系の企業に就職したのは、これからITの力が必要になると思ったからです。
一方で、教員はずっとやりたいと考えていました。地学を学んでいくと、地球環境の課題が必ず出てきます。地球環境について考える中で、社会の仕組みを変えていく必要があると感じていましたし、社会を変えていくのは教育だなとも思っていました。

Q:TFJへ応募するに至った背景は?

平野:学校以外で学べる場所が欲しかったというのが最初のきっかけです。音楽科教員のゼミや学会に参加したり、学校で開催しているセミナーに参加したり、今までも学びの場はありました。ただ、どこにいっても先生たちしかいなくて。でも、自分の教え子たちは教員以外のキャリアを歩む可能性の方が高い。それに、自分はずっと教員畑にいたので、学校の中からしか社会を見ていない。そんな自分が子どもに教えていいのかって思い悩むことがありました。
そんな時に、たまたまTFJの募集を見つけて、いろんな業種の方が参加するコミュニティに魅力を感じて応募しました。

古賀:私は、今教育の現場にいるけれど、教員免許は取っただけでそんなに深いところまで教育を学んでいないと感じていました。なので、今やっている授業が本当に良いのかとか、教育を分析していきたいなって思っても分析するためのベースが全然ないことにコンプレックスを感じていました。
そんなときに、TFJのプログラムに現役教員が参加できるという情報を得て、応募しました。個人的には、学習科学っていうのが魅力的でしたね。加えて、バックグラウンドが多様な方と長期間交流できるのは魅力的でした。

Q:応募するまでに不安だったことはありますか?

平野:仕事と両立できるかは不安でした。週1回平日の夜と月1回は丸一日が研修。本当に私大丈夫かなと思って。。特に、応募期間に研究授業を控えていて、これから忙しくなるのは分かっていました。最終的には、好奇心に勝てず応募しました。

古賀:自分の場合は、小さい子どもが3人いるので、家庭との両立を一番考えました。家庭内会議を経て、熱意を伝えて許可をもらった感じです。

Q:実際にやってみてどうでしたか?

平野:意外といけちゃったなという感じです。私、時間作れるんだってことが、すごく自信にもなりました。
TFJでは、目標や目標達成をするための行動を書くレポートが毎月あって、レポートを書く段階で1カ月先を見越して行動するようになったのが大きかったです。

古賀:やってみると現場とのリンクが多く、授業準備と模擬授業の準備を両立させることもできました。また、家族からも理解を得られ、円滑に参加することができました。

赴任前研修での学び

Q:研修で印象的だったことは?

古賀:元から興味のあった学習科学は、学んでいく過程で研究の枠組みが理解できて刺激的でした。また、学校現場とリンクしていて、実践と理論を往還する良さを感じました。
ビジョンについても、深掘りされて、ビジョンがどんどん具体的になっていくのが本当におもしろかったですね。
模擬授業についても、事前・当日・事後など意見をもらいながら議論を重ねて、たくさんのフィードバックをもらうので、刺激をたくさんもらいました。

平野:意外と、大人になってから本気で議論することってあまりないんですよね。でも、TFJの研修でビジョンセッションをした時は、どんどん理想や本音が出てくる。それができるんだな、大人でも。というのがすごく印象的でしたね!
他にも、すごく心に残っているのが、集合研修で模擬授業をする時に、ある同期が「プラタナスの木」という国語の題材で、プラタナスの木の皮と葉っぱをわざわざ大阪から東京までスーツケースに入れて持ってきたんです。「模擬授業のために大阪から東京まで木の葉っぱを持ってくる人がいる!」っていう熱さに感化されたのを覚えています。

Q:研修全体を通じてのご自身の変化や学びは?

古賀:教員10年目になる中で、自分のビジョンや生徒の成長を見落としていたことに気づきました。また、TFJの研修を通じて、教育を科学する視点を持てたのも、授業改善を行っていくうえでのベースになると思います。

平野:古賀先生の話にすごく共感します。TFJの研修を通じて、本質的な視点を見失っていないかということに気づけました。
また、家族や同僚から「人から学ぶ姿勢が強くなったね」と言われました。自分はわりと完璧主義なところがあって、完成してから人に意見を聞いていたのですが、7、8割の段階で周りに相談するようになりました。TFJの同期には、自分よりかなり年上の方やキャリアを積み重ねている方がいらっしゃるのですが、そういった方がアイデアの段階でバンバン話している姿を見て、これでいいんだって思えたのが大きかったです。

赴任中のビジョンや取り組み

Q:TFJコミュニティのリソースやTFJの学びを、現場でどう活かせているか?

古賀:自分のビジョンとつなげて考えることが増えました。これまでは、授業場面がメインでしたが、それ以外の場面でも教育を意識するようになりました。
授業については、生徒の学びが表出できるような授業デザインを意識できるようになったことで、生徒の変化をいままでより細かく見取ることができるようになり、教育を科学できるようになってきました。

平野:研修を通じて意識が変わり、授業では対話の時間が増え、子供の意見を授業に取り入れるようになりました。
対話が増えたのは、学習科学ゼミで「言葉にすることで学びが深まる」ということを学んだのがきっかけです。実際に研修の中で、模擬授業を受けたり、レクチャーを聞いたりする中で、話を聞いているときは頭が働いてないなという実感がありました。これまでも、他の研修や書籍から知識としては知っていたのですが、自分で体感してみないと分からなかった。
一番大きいと思うのが、自分の授業だけではなく、教育全体や社会に関しても考えるようになったこと。学校がより良くなるようにということを意識して働くようになりました。

Q:(平野さんへ)授業で対話の時間が増えたのはなぜでしょうか?

平野:学習科学ゼミで、言葉にすることによって学びが深まるということを学んだのがきっかけです。音楽の授業ではどうしても演奏する時間を増やしたいという思いがあったのですが、講義を聞いているとき頭が働かないことを実感して考えが変わりました。
実際に対話の時間を増やしたことで、子どもたちから「そういうことか!」という声が聞けるようになりました。

Q:子どもたちの変化や手応えはありましたか?

古賀:以前も講義しない授業を実践していましたが、意図的に何を学んでほしくて、どんな対話を設定し、どんな流れになるか、生徒に表現してほしい学びのプロセスを想定して授業デザインをするようになってから、そこかしこで対話が起きるようになりました。また、黙々とやっている子も見取れる視点を持つことで、いろんな学び方が教室の中にあって良いなって思っています。

Q:現職の先生がフェローシップ・プログラムに参加することの意義はどこに感じていますか?

平野:学校を外側から見る視点を得られるのは、参加する意義だと思います。(コミュニティの中には)いろんなキャリアを歩んできた人がいるので、これまでの経験から、「こういう力は絶対につけないといけない」「そのためにはこういう授業がいいんじゃないか」という意見をもらうことができます。

古賀:教育を学ぶとか考えることは、教員に一番必要だと思っていて、そのためにはめちゃめちゃ良かったです。教育への純粋な熱を持っている方が集まって議論ができる環境は刺激的でした。

Q:いまのビジョンと今後実現したいことを教えてください。

平野:「すべての人が可能性を開花させて、人生を謳歌できる社会」が自分のビジョンです。その実現のために、子どもたちの「やりたい!」という気持ちを実行できる力を育てることだと思っています。それができる授業を推進していきたいと思っています。

古賀:ビジョンは「教育が変われば世界が変わる」です。いろんな教育があふれている世界がいいなと。生徒たちには、自分たちの可能性を信じられるようになってほしいと思っているので、新しいことにチャレンジしていける、どんどん失敗していける授業をしていきたいです。

参加を検討している方へのメッセージ

平野:私は参加して本当によかったです!なので、ぜひみなさんにも参加してもらって、TFJの仲間として一緒に勉強させてもらえたらと思っています。

古賀:教員生活で受けた研修としては、一番しんどい研修でした。そのしんどさに十二分に見合うプログラムを提供してもらったと思っています。自分の実践を進めたい、仲間が欲しいと思っている方はぜひ、仲間になって学んでいきましょう。

参加者の皆さんの感想

イベント動画では、参加者から出たたくさんの質問への質疑応答の様子もご覧いただけます。ここでは、参加者の皆さんの感想の一部をご紹介させていただきます。

実際に現職として何を考えて参加したのかが聞けた所、またプログラムに参加しての学びを詳しく聞けたことに満足しました。

私は教員の経験がないから研修の参加を考えたけれど、現役教員でも自分に足りない部分があって学び続ける姿勢に感動しました。

現役の先生方が「井の中の蛙」ではいけない、という意識をお持ちなのは素晴らしいことだと思いました。また、TFJで学ばれていることがご自身のお仕事に役立っているというお話が聞けたのは貴重でした。

参加者の皆さん、そしてゲストの平野さん、古賀さん、ありがとうございました!

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