fbpx

修了生インタビュー aluminiinterview

【イベントレポート】データサイエンスの力でより良い教育を!企業と小学校教員を経験した私が、ラーニングアナリティクス研究に挑む理由。

今回は、修了生になりたての9期フェロー阿竹さんに、フェローシップ・プログラムに参加した理由や赴任前の研修、TFJのコミュニティ、学校現場での取り組みなどについてお聞きするイベントを開催し、その内容を記事にしています。

【ゲストプロフィール】
阿竹隼耶さん(Teach For Japan 第9期フェロー/小学校赴任)
学習院大学文学部教育学科を卒業後、民間企業で営業や企画・沿線地域施策に従事。その後、Teach For Japan 9期フェローとして石川県の小学校に赴任し、理科専科担当として勤務した。2023年4月から京都大学大学院情報学研究科の修士課程に進学。教育に関するビッグデータを収集・分析し、授業改善や学校運営、政策立案等に利活用する「Learning Analytics」の研究に携わる。

▼YouTubeにて動画でご視聴いただけます!

フェローシップ・プログラムに参加した理由

Q:フェロー応募前のキャリアを教えてください。

 私は、小学校の教員免許を取得することができる大学に在籍していました。入学当初は「たぶん教員になるかな」と思っていましたが、実際に学校現場でボランティアをしたり、民間企業に就職する先輩の話を聞いたりする中で、教員以外の選択肢を考えてこなかったことに気付きました。また、大学時代の研究では、地方と都会の子どもの生活空間の違いを探求したこともあり、地域に関わることを軸に仕事をしていきたいと考えるようになりました。その結果、多くの地域に関わることができる鉄道会社に就職しました。

 鉄道会社は色々な事業を持っているのですが、私はバス事業に配属され営業や企画、地域施策の仕事に関わっていました。ただ、3年目のときに、コロナが流行し、会社全体の事業を見直したことで、このまま過ごしても自分が成長することができないと感じたことが、転職を考える最初のきっかけになりました。

Q:TFJに応募した理由を教えてください。

 やっぱり、自分の根底に教育をどこかでやりたいという思いがあって、コロナ禍になって真剣に向き合うようになりました。ただ、最終的にどのキャリアに辿り着くにしても、まずは学校現場に行きたいと思ったんです。

 2020年4月の緊急事態宣言が出た頃に、教員採用試験の本を購入して勉強し始めたり、ネットで調べたりする中で、TFJを知りました。最初は、どんな団体なんだろうと疑心暗鬼の部分もあったのですが、2年間だけの先生という制度は面白いなと思いました。調べていくうちに、修了生の活動も分かってきて、学校現場に残ってもいいし、違うカタチで教育に関わるのも面白いと思いました。加えて、コミュニティの持っているリソースがすごく大きいと思って、応募を決めました。

Q:講師登録をして教員になることもできた中で、TFJを選んだ決め手は何でしょうか?

 一番は、赴任前研修があるという点です。仕事経験を積んだことでビジネス的な思考が身に付いてきた一方で、学校現場での仕事についての理解が不足していると感じていました。
また、教員としてのキャリアを追求するだけでなく、いろんな人と対話してキャリアについても考えていきたいと思っていました。そのため、学びの機会とサポートが受けられる環境が魅力的でした。

赴任前研修での学びやコミュニティ

Q:赴任前研修で印象的だったことを教えてください。

 特に印象に残ったのは、ビジョンセッションです。教育に対する思いを、同期と共有して対話することで、深めることができました。これは、自分にとってプラスになったと感じています。

Q:一緒に学んだ同期はどんな人たちでしたか?

「教育に対して熱い思いありすぎやろ!」っていうぐらい教育に対する熱い思いが溢れていました。みんな何かしら課題意識と向上心を持っていて、「自分から学びたい」「周りから吸収したい」という姿勢がすごくありました。刺激し合える関係性を持ちながら現場に赴任することができたのは大きな支えとなりました。

赴任中のビジョンや取り組み

Q:赴任当初のビジョンはどのようなものでしたか?

 赴任時のビジョンは、地域と教育を結びつけて「誰もが好きな場所で生きられる社会」を実現することでした。大学時代の研究や企業での経験から、地方ほど教育に対してのリソースが少なく、そのコミュニティ内で世界が完結してしまう点が課題であると感じていました。これに注目し、地域の人やモノ、自然などから学びをスタートさせて、だんだんと世界に目を向けていけたら学びとしても面白いし、サステナブルな社会の構築にも繋がると思いました。

Q:ビジョンを意識して取り組んだことはありますか?

 実際の取り組みでは、理科の専科教員として環境教育や地域の繋がりを活かした授業実践に力を入れました。例えば、環境問題をより身近に感じてもらうために、地球温暖化の再現模型を作ったり、南極の氷が溶ける実験をするなど、目で見て学べる機会をつくっていました。

 また、地域の街づくりの場に積極的に参加して、繋がりのできた地域の人や企業の方を招待して特別授業を実施するなど、地域にあるリソースを活かして世界を広げられるように取り組んできました。

Q:周りの先生とのかかわりの中で意識していたことはありますか?

 信頼関係を構築することを大事にしていました。これはどんな仕事でも大事だと思っていたので、意識していましたし、幸いにも良い先生方に恵まれ打ち解けるのは早かったと思います。

 一方で、専科教員という立場だったので、すべての担任の先生方と関わる機会があり、赴任当初は難しさも感じていました。というのも、担任の先生方はそれぞれ学級経営のやり方を持っていて、そこには思いがあります。なので、各先生方のやり方や思いを理解して、その方向性に合わせていくのは難しい点でした。

Q:子どもたちに関わる中で感じた変化や成長はありますか?

 よく子どもたちにアンケートを取っていました。最初は、「理科が嫌い」という子が結構多かったのですが、だんだんと「理科が好き」に変わっていった子が出てきて、客観的な数値として良い変化だったと思っています。
 また、先生方から「阿竹先生の授業は、子どもたち本当に楽しそう」と言ってもらえたり、子ども達からも「先生の授業は、面白いですね」と言ってもらえたりしました。

一方で、先生方からそのように評価してもらうたびに、自分の授業がエゴの押し付けだったり、自己満足になっていたりしないかなとモヤモヤしている部分はありました。

修了後のキャリア

Q:なぜ大学院進学というキャリアを選んだのでしょうか?

 授業をしていく中で、自分の授業が自己満足になっていないか、本当に子どもたちの成長につながっているのかという疑問が湧いてきました。そこで、「教育の効果ってどうやって測ったらいいんだろう」という問いが私の中で浮かび上がりました。

 例えば、ビジネスの分野では収益によって効果を測ることが一般的ですが、教育の場合は学力の向上だけがすべてではないと感じました。学校の現場では、数えきれないほどの行事や取り組みが行われていますが、その中には本当は教育効果が低いのにもかかわらず、意味があると信じて行われていることもあるのではないのかと考えました。ここが自分の出発点でした。

 自分なりに教育効果を客観的に測る方法を模索する中で、ラーニングアナリティクスという教育データ科学の研究分野に辿り着きました。これを勉強してみたいと思い、大学院に進学することを決めました。

Q:教員として勤務しながら大学院を受験するのはどうでしたか?

 勉強自体は非常にハードなものでした。入試科目はコンピュータサイエンスや人工知能など、自分にとって馴染みのない分野ばかりで、学ぶべきことは多かったです。
 ただ、自分がこれまで学んできた教育学の中には、先生の直感や経験に基づいて概念化されていることが多いのだと気づくこともできました。それをデータサイエンスや数理統計の視点から見ることができれば、より客観的な視点で教育の効果を評価できるのではないかとワクワクする部分もありました。新しい知識を学ぶことは困難な一方で、新たな発見もあり、楽しみながら取り組むことができたと思います。

Q:今後の野望ややりたいことを教えてください。

 将来の野望として、自分は2つのことに取り組みたいと考えています。
 一つは、データサイエンスの分野で自身のスキルを高めながら、学校現場でどのようなデータ利活用が本当に子どもたちのためになるのかを示すことです。教育効果を客観的に測る手法を活用し、先生たちの教えるスキルの向上に貢献したいと思っています。この研究はまだ新しい領域であり、先生たちに必要性や納得感を伝えるのは難しいと思っていますが、その役割を果たすことができればと願っています。

 もう一つの野望は、研究者としてこの分野を発展させながら、教師教育にも関わることです。社会や教育制度の変化に合わせて、教育の意義や効果を伝える役割を果たしていきたいと考えています。ただ、データやエビデンスによって解決できる教育課題は、実は限られていると思っています。「良い教育とは?」「この教育の効果は?」という疑問に対し、教師として大切なマインドセットに加えて、データやエビデンスという視点から、答えられるようになりたいと思っています。

応募を検討されている方へのメッセージ

 本当に教育に対して思っていることがあるとか、TFJの取り組みに魅かれるものがある方は、ぜひ応募されてください。なかなか変わっていかない日本の教育の中で、こんなにリソースフルなコミュニティはないと思います!

参加者の皆さんの感想

イベント動画では、参加者から出たたくさんの質問への質疑応答の様子もご覧いただけます。ここでは、参加者の皆さんの感想の一部をご紹介させていただきます。

他のキャリアから教師になった方の目線から、どんなことが役に立ったのか、具体的に教えていただけたことが良かったです。

教育利用のデータサイエンスについても学ぶことができました。

教育に関する課題意識と改善策に向けての、自身の短期的、長期的ビジョンが明確で、教育に対する強い思いが伝わってきました。 ラーニングアナリストとして活躍されることを期待しております。

参加者の皆さん、そしてゲストの阿竹さん、ありがとうございました!

教師になることに興味がある方

詳しく知りたい