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フェローインタビュー fellowinterview

【フェローの実践】子どもたちと在福岡米国領事の交流会実現までのストーリー

2020年4月より福岡県の飯塚市立小中一貫校幸袋校・中学部に赴任している黒澤フェロー(8期生)が、同僚の先生方と協力して夏休み期間中に在福岡米国領事館と連携し、「日本と世界を結んでみれば~外交官の目に映る世界とは?~」と題した交流会を開催しました。教室と世界を繋げ、子どもたちが進路やキャリアを国際的な視点で捉えることを目的としています。今回の記事では、交流会実施に至るまでの経緯と当日の様子、参加生徒の声をご紹介します。

交流会実施への想いと実現までの経緯

なぜ英語を使った交流会を企画したのでしょうか?

私が学校現場に赴任して感じた「目の前にいる子どもたちの将来の選択肢が少ない、社会とつながる機会が限られているという課題にどうアプローチできるか?」という疑問からスタートしました。

課題を感じたきっかけは、英語に苦手意識を持つ生徒に「いつから苦手意識を感じるようになったの?」と声をかけたときに、「そもそもここにいて、英語は使わないです」「将来、日本を出るイメージもないし、英語は絶対使いません」という反応があったことです。確かに、これまで英語を使わなかっただろうし、これから先も使うことをイメージできないことも理解できました。でも、だからこそ、教室の外とつながって実践的に英語を使う機会をもっともっと増やさないといけないと思ったんです。

在福岡米国領事の方をお招きするという発想はどこから生まれましたか?

TOMODACHIイニシアチブのアラムナイコミュニティとのつながりがあったからです。私は、Teach For Japanの8期フェローとして、東京から1人旅立って、九州には仲間が少なかった。ただ、自分のビジョンに近づくためには、もっと仲間が必要で、たくさんの人と連携しながら挑戦できるコミュニティがほしいと考えていました。

そんなタイミングで、TOMODACHIイニシアチブが「アラムナイ・プログラム(http://tomoalumni.org/join/index.html)の地域リーダーを募集している」ことを知りました。TOMODACHIイニシアチブの米国留学プログラムに参加したアラムナイであった私は、このアラムナイ・プログラムに応募し、晴れて2020年4月から九州地域リーダーを務めることになりました。そのミッションは、「各地域に存在する課題を、日米関係に関心のあるTOMODACHIアラムナイが解決していく」というものです。

このアラムナイ・プログラムを活かして、「目の前にいる子どもたちの将来の選択肢が少ない、社会とつながる機会が限られている」という課題を解決するために何かできるのではないかと考え、TOMODACHIイニシアチブのコミュニティメンバーとも議論しました。

いくつかアイデアを考えるなかで、人生で一度会えるかどうかわからないという素敵な、プロフェッショナルな方をお呼びして、子どもたちを勇気付けてほしいと思ったんです。そこで、TOMODACHIイニシアチブの官民パートナーシップでもある領事館に「領事に子どもたちと交流していただきたい」という想いを伝えたところ、ご快諾いただき講演者が決定しました。

なるほど。多くの方の想いがつながって実現した交流会だったのですね!

本当に多くの方の想いがあったからこそ実現できました! ただ、いまはゴールに向かって舵を切ったところであり、入り口です。

今回の交流会を1回だけのイベントで終わらせるのではなく、日々の授業で活きるようカリキュラムをつくろうと思っています。今後の自分自身のテーマとして、*PBLL(Project Based Laungage Learning)をしようと思っています。そのためには、子どもたちをファシリテートし、評価してくれるサポーターが必要です。PBLLのプロジェクトを発表するタイミングで、改めてユキ・近藤・シャー領事(以下、近藤・シャー領事)をお呼びして、子どもたちが英語でプレゼンして、以前から成長した姿を見ていただける成果発表会を実現したいと思っています。

*子どもたちが英語でプロジェクトに取り組んで、その過程で実践的な英語の知識・技能を身につけていくという学習スタイル。

交流会の様子

交流会は、近藤・シャー領事による講演を中心とした座談会、生徒たちによる地域の歴史や観光スポットなどの英語を交えたプレゼンテーション、校区内にある観光スポット「旧伊藤伝右衛門邸」に訪問するという盛りだくさんの内容で実施されました。

また、日米文化教育交流会議の顧問を務めていらっしゃる麻生泰様(九州経済連合会 会長、麻生セメント株式会社代表取締役会長)も来校され、ゴールを高いところに置くことやあいさつの大切さなど、小中一貫校幸袋校・中学部の取り組みに対するエールを送られました。

近藤・シャー領事の講演と交流の様子

「パスポート持っている方?」「海外に行ったことがある方?」と参加した生徒たちに呼びかけ、親しみやすい雰囲気の中で講演はスタートしました。

講演の中で近藤・シャー領事がお話しされた内容は大きく2つ。

  • リーダーシップについて
  • 外交官の仕事について

まず、リーダーシップについてでは、「友人とランチの場所を決める」という日常的な例を紹介し、「話を持ち出して、みんなを説得するのがリーダーであり、誰もがリーダーになることができる」とご自身の考えを生徒たちに伝えられました。

また、スウェーデンの環境運動家Greta Thunberg(グレタ・トゥーンベリ)氏を例に挙げ、「若いからリーダーにはなれないと考えるのではなく、若くても自分のいる地域で何かできると考えてほしい」とメッセージを送られました。

次に、外交官の仕事を「私の仕事は、日本に来てアメリカを代表してみなさんとお友達になること」とわかりやすい言葉で表現され、どのような仕事に取り組んでいるか紹介されました。

最後には、「アメリカに留学生が100人いるとしたら」と仮定して、そのうち20人は中国出身、10人はインド出身、3人は韓国出身、日本出身は1.7人というデータを紹介され、「みなさんは日本の文化大使としていろんな国に行って、日本の素晴らしさを伝えるリーダーになってもらいたい」と呼びかけられました。

講演後の質疑応答では、生徒たちから「子ども時代の夢」「語学勉強で大切なこと」「仕事のやりがい」「外交官の仕事で大切なこと」「将来について迷ったらどうしたらいいか」など、多くの質問がありました。また、休憩時間も近藤・シャー領事と生徒たちのインタラクティブな交流が盛んに行われていました。

生徒たちによるプレゼンテーションの様子

交流会終了後に、近藤・シャー領事と生徒全員で訪問した旧伊藤伝右衛門邸にて

(交流会終了後に、近藤・シャー領事と生徒全員で訪問した旧伊藤伝右衛門邸にて)

地域の魅力を発信するために、生徒たちが英語でのプレゼンテーションを実施。炭鉱の町だったことをスライドを使いながら解説し、地域の名菓である「ひよ子」と炭鉱のつながりを紹介しました。

また、炭鉱時代の名残りが現在の道路にもあることをクイズにして紹介したり、国の登録有形文化財にも指定されている嘉穂劇場について写真を交えながら解説したりしました。

印象的だったのは、近藤・シャー領事が会場に到着する直前まで、チームごとにプレゼンテーションのリハーサルを繰り返し、地域の良さを英語で使える生徒の皆さんの姿でした。

参加生徒の声

参加した生徒からは、「英語学習のモチベーションが高まった」「キャリアを考える参考になった」という声が多くあがりました。その中の一部をご紹介させていただきます。

近藤・シャー領事の講演を聞き、「英語は間違ってもいいから間違うことを恐れずに使ったらいい」ということを聞き、これから積極的に英語を使っていきたいと思ったからです。

近藤・シャー領事の話を聞いて自分に自信が持てなかった事があったけど、これからはもっと自分に自信をもって行こうと思えるようになったから

限られた時間の中で自分たちで学校の魅力について考えを深め、それを英語で皆さんに伝えるということの面白さと緊張をしっかりと味わうことが出来たからと、仲間とのチームワークの大切さを改めて学んだからです。

来賓の皆様方がとても熱心に聞いてくれていて、発表の後にたくさん拍手を送ってくれたことがとても嬉しくて、達成感をものすごく味わいました!!

自分の考え方がガラッと変わる、私自身の人生において、とても重要な機会になったと思います。このような体験ができて、本当に嬉しかったです。いらして下さった領事はもちろん、企画してくださった先生にも感謝しかありません。この交流会に関わった全ての人に、感謝の気持ちを伝えたいと思います。ありがとうございました。

掲載メディア

朝日新聞、讀賣新聞、毎日新聞、西日本新聞、飯塚市飯塚市立小中一貫校幸袋校

(編集後記)
「自分のビジョンに近づくためには、もっと仲間が必要」という黒澤フェローの言葉からもわかる通り、今回の交流会は黒澤フェロー一人では実現することができなかったもの。企画の意図をご理解いただき参加を快諾して下さった近藤・シャー領事をはじめとする領事館のみなさまやTOMODACHIイニシアチブアラムナイのコミュニティメンバー、夏休み中にも関わらず開催・運営をしてくださった学校長、同僚の先生方、そして参加を希望した生徒さんたち。本当に多くの方の想いが重なり合って実現されたものだと感じました。これからの継続的・発展的な取り組みが楽しみです!

参考
飯塚市 Instagram
飯塚市 Facebook
TOMODACHIアラムナイ地域フレームワーク九州地域「ウェルカム・イベント」: 社会の変化の中での自己実現と課題解決をテーマに
旧伊藤伝右衛門邸

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