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学校における働き方改革:日本と諸外国の教員の勤務時間&担当業務!

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学校における働き方改革が急がれる日本。これまでPISAの各分野において上位に位置するなど一定水準の学習成果を出すことに定評を受けている日本の教育は、教員の働き方を含む、様々な課題があり、持続可能性が問われています。学校の先生は長時間労働、そして膨大な業務を担っているとよく指摘されますが、実際にはどのような勤務時間と担当業務を担っているのでしょうか。本記事では、日本の学校における働き方改革の要点、教員の勤務時間と担当業務、そして諸外国の教員の働き方の特徴をまとめてご紹介いたします!

学校における働き方改革とは?

2016年、第二次安倍政権下に『働き方改革実現会議』が発足して以来、学校に限らず、あらゆる職業・職場における働き方改革が注目されてきました。そして、2019年から順次、労働基準法含む働き方改革関連法が施行され、働き方改善への取組が動き始めました。学校現場における働き方改革はどのよな流れで本格化したのか、振り返ってみましょう。

働き方改革への動き

文部科学省では、新学習指導要領を告示した2017年より、学校における働き方改革特別部会を設置し、働き方改革に本腰を入れ、現状課題の是正に向け検討を始めました。同年8月には『学校における働き方改革に係る緊急提言』を発表し、働き方改革の重要性を次のように強調しました。

本年3月には,予測困難な未来社会を自立的に生き,社会の形成に参画するため の資質・能力を一層確実に育成するために学習指導要領等の改訂を行ったところであり,新学習指導要領等を確実に実施し,学校教育の改善・充実に努めていくこと が必要不可欠である。そのためにも、教員が授業や授業準備等に集中し、教員が健康でいきいきとやりがいをもって勤務でき、教育の質を高められる環境を構築することが必要である。(中略)学校教育の根幹が揺らぎつつある現実を重く受け止めるべきであり、「学校における働き方改革」を早急に進め ていく必要がある。 

(引用元;学校における働き方改革に係る緊急提言|文部科学省, p.1)

このように、新学習指導要領の実施、子ども達の一層の資質・能力の育成には教員の働き方改革が不可欠であると強調されました。日本の教育が子ども達の更なる資質・能力の育成を目指す一方で、日本の子どもたちの学習成果・学力は世界トップランクと認知されています。PISA2018では3分野全てにおいて上位にランクインしました。

(参照:OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント|国立教育政策研究所

国内で問題視される課題はあるものの、日本は取り残されている子どもが比較的少なく、且つ、子どもの学力発達に限らず、生活指導や部活指導にも取り組み、社会的・情緒的・身体的発達にも重きを置く包括的な教育モデルは国際的に評価されています。一方で、OECDは、日本の経済・社会人口の変化や、子どもの幸福度・教員の業務負荷などの課題を考慮すると、今の教育モデルの持続可能性が問われている、と注視します。特に、教員の業務負荷の課題に注目すると、教員の働き方はじめ、仕事満足度や幸福度は、子ども達の学力成果に間接的に影響を与えることが研究で示されています。

改革に向けた具体的な流れ

学校における働き方改革のもと文部科学省が取り組む事項は次の通りです。

・上限ガイドラインと勤務時間管理の徹底
・労働安全衛生管理の徹底(ストレスチェック調査・公表等)
・意識改革
・メッセージ発出・情報発信
・業務の役割分担・最適化
・組織運営体制
・勤務時間制度
・環境整備
(参照:学校における働き方改革に関する文部科学省工程表①|文部科学省

日本の教員の働き方

過労死ラインとされる時間外労働を担っている割合が多く、問題視される教員の勤務実態。文部科学省は、これまでの学校の組織体制は「教師の献身的犠牲」のもと成り立ってきたと指摘します。授業以外に多種多様な責任を担う教員の働き方は、学校の役割が曖昧、且つ広い、という特徴に起因していると言えます。次の図が示すとおり、日本の学校・教師の指導体制は「学校多機能・教師職務曖昧型」と分類されます。

(参考:学校組織全体の総合力を高める教職員配置とマネジメントに関する調査研究報告書|国立教育政策研究所, p.16

学校の機能が多く、教師の職務内容が曖昧であるとされる日本の教員の働き方とはどのような実態なのでしょうか。教員の勤務時間と担当業務を見てみましょう。

勤務時間

まず、公立学校に勤務する教育公務員の勤務時間は、労働基準法により1週間の上限は休憩時間を除き40時間、1日の上限は休憩時間を除き8時間と定められています。法的基準がある一方、日本の教員の週の平均勤務時間は、小学校・中学校ともに50時間を超えています。TALIS2018では、小学校の教員は平均で週54.4時間、中学校の教員は56時間と報告されました。

また、教員の月の平均勤務時間外労働について、文部科学省の「学校の働き方改革のための取組状況調査」より読み取ることができます。

(参照:令和2年度 教育委員会における 学校の働き方改革のための取組状況調査 【結果概要】|文部科学省, p.8, 10, 12

教員以外の職員も含まれるため、教員の時間外勤務の実態を正確には把握できませんが、前年度と比較し、月45時間以下の割合が増えていると報告されました。

担当業務

教員の長時間労働の背景には、多大な担当業務があります。国立教育政策研究所がまとめた教員の役割より、先生方が担う多岐にわたる業務が読み取れます。

(参照:学校組織全体の総合力を高める教職員配置とマネジメントに関する調査研究報告書|国立教育政策研究所

実に18の担当業務と12の部分的業務を担っていることがわかります。教員が本当に担当すべき役割は何か、改めて見直すことが求められています。

改善への軌道

上述の具体的な流れでご紹介したよう、働き方改革は一つの対策で改善できることではありません。近年、日本では新しい時代の教育に向けて様々な政策を打ち出しています。具体的には、GIGAスクール構想に期待される仕事の効率化、小学校で導入される教科担任制、35人学級制度など、教員の働き方の改善にも働きかけ得る政策が挙げられます。一つの取り組みを取り、有効性を精査するより、何がどの様に教員の働き方の向上に作用しているか体系的に見極めていくことが大切かもしれません。

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諸外国の教員の働き方

記事前半では日本の学校における働き方改革の要点・教員の働き方の実態をご紹介しました。教員の働き方改善は日本以外でも課題とされ、施策がとられています。記事後半では、次の3か国における教員の勤務時間と担当業務の特徴を見てみましょう。

①日本と同じく長時間労働が目立つイギリス
②日本と同じ学校多機能・教師職務曖昧型でありながら、勤務時間が短い韓国
③世界的に教員の勤務時間が短いと知られるフィンランド

(参照:Annex C. List of tables available on line:TALIS2018|OECD(Table I.2.28), TALIS2018 Volume I|OECD(Figure I.4.12, p.143),TALIS2013|OECD(Table 6.12.a, p.389)

イギリス

TALIS2018で日本に次いで教員の勤務時間が長いと報告されたイギリス。勤務時間が長い一方で、イギリスでは1997年の労働党政権発足以来、継続的な勤務形態調査、指導体制の整備が行われてきました。2003年には、教員がすべき・すべきではない業務等が国家協約(Raising standards and tracking workload: a national agreement)により策定されました。また、教員が担当しない業務を担う教職員を整備する方針も打ち出されました。近年、イギリスの学校には、教員とその他の教職員がほぼ同数勤務しているのが特徴的です。

(参照:School workforce in England|Gov.UK, 2020

細かい勤務条件は、各学校が各教員に作成する「職務契約書」により明確化されます。学校は職務契約書を作成する際に、教育省が毎年発行する「教員の給与及び勤務条件に関する文書」及び、2003年に締結された「国家協約」を踏まえ、教員の果たすべき義務や責任、勤務時間を定めることが求められます。

(参考:イギリスにおける教員の勤務条件と担当業務|高橋 望, 季刊教育法 No.208, 学校組織全体の総合力を高める教職員配置とマネジメントに関する調査研究報告書|国立教育政策研究所

日本の教員が18の担当業務・12の部分的な担当業務があるのに対し、イギリスの教員は7種の担当業務のみになっています。特徴的なのが、日本の教員のように、「部分的」・「一部の教員が」などの曖昧な役割がない点です。これまでの教員の働き方の見直しの成果として見て取れます。しかしながら、著しい教員の勤務時間の短縮は認められておらず、引き続き課題とされています。

韓国

日本と同じ「学校多機能・教員職務曖昧型」に分類される韓国では、1979年より、教員の業務の軽減に向け取組が始まりました。日本と同じ学校の特性を持ちながら、TALIS2018の報告より、教員の勤務時間は比較的短いことがわかります。如何にして勤務時間が短い勤務体制が成り立っているのか、見てましょう。

まず、勤務時間ですが、国家公務員服務規程により「1週間の勤務時間は、昼食時間を除き、40時間とし、土曜日は急務とすることを原則とする」と定められています。40時間の規定のもと、大半の学校が8時30分から16時30分を勤務時間とし定めています。

担当業務については、イギリスのような法律や基準はないものの、①教育業務・②教育業務に関連する教育行政業務・③その他の一般行政業務に区分し、②③の行政業務軽減に注力しています。日本と比較すると、韓国の教員の役割は16の担当業務・3つの部分的担当業務があります。イギリス同様、部分的とされる不明確な役割が少ない点が見受けられます。実際の業務軽減対策とし、様々な施策が見られますが、ここでは校務行政チームと授業準備時間の短縮についてご紹介します。

★校務行政チーム
2009年に政府が教員の行政業務の負荷を軽減するために導入した「校務行政チーム」の構成は図の通りです。

(参考:韓国の教員の勤務時間と職務内容|田中 光晴, 季刊教育法 No.208)

全国の8割近くの学校で導入されている一方で、教員の負担軽減への効果は明確に確認できておらず、引き続き有効性を精査する必要があるとされています。

★授業準備時間軽減の傾向
OECDの分析によると、韓国の教員の勤務時間のうち、授業準備時間が短縮されたことが認められると言います。その相関要因とし、クラスサイズの縮小、そして教師一人当たりの生徒児童の割合が減ったという傾向が挙げられています。現に、韓国ではここ10年で劇的なクラスサイズの縮小に成功しています。小学校35人学級を導入していく日本も、今後、授業準備の負担軽減が期待できることが示唆されます。

フィンランド

勤務時間が短いと知られるフィンランド、教員の働き方の特徴として2点挙げられます。

第一に、フィンランドの教員はフレキシブルな働き方が認められている点です。フィンランドの教員は授業のあるコア時間のみ学校にいることが求められます。多くの場合が、授業時間以外に週2〜3時間程度、同僚との協働や保護者の対応のために学校にいることが求められます。その他の時間は、自宅で働くことが認められており、自宅で採点などを行う教員も多いといいます。

第二に特徴的なのが、勤務時間の大部分を教科の指導に費やすことができている点です。そして、児童生徒の指導に関連しない業務の負担が少ない点が挙げられます。次の図から、教科の指導に関係しない業務、特に事務業務が少ないのがわかります。

(参考:TALIS2018|OECD

ご紹介した2つの特徴からもわかるとおり、教科の指導に集中できる環境が整っていると言及されることが多いフィンランドですが、課題がないわけではありません。近年では、先生方が多忙化の傾向にあり、対策が急がれています。

まとめ

学校以外の職場でも緊急度の高い働き方改革。今回は学校における働き方改革の具体的な取り組みではなく、改革の要点と教員の勤務時間・担当業務の実態をご紹介しました。そして、イギリス・韓国・フィンランドにおける教員の働き方の特徴も見てみました。2000年以前より施策を練るイギリスや韓国の例から、教員の業務負担軽減は時間がかかる課題だということが分かります。日本の学校における働き方改革は着実に動き始めています。日本の教員の働き方が改善する過程を、継続的に長い目で見守っていきましょう。

参考:
新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体 制の構築のための学校における働き方改革に関する総合 的な方策について(答申)|文部科学省
学校現場における業務の最適化に向けて|文部科学省
学校現場における業務の適正化に向けて(本体)|文部科学省
学校組織全体の総合力を高める教職員配置とマネジメントに関する調査研究報告書|国立教育政策研究所
「学校における働き方改革」の先進事例と改革モデルの提案 学校・教師の業務/教育課程実施体制/生徒指導実施体制/学校運営・事務体制|藤原文雄 学事出版
世界の学校と教職員の働き方:米・英・仏・独・中・韓との比較から考える日本の教職員の働き方改革|藤原文雄 学事出版
令和元年度 教育委員会における 学校の働き方改革のための取組状況調査 【結果概要】|文部科学省
令和2年度 教育委員会における 学校の働き方改革のための取組状況調査 【結果概要】|文部科学省
5. Should teachers’ working hours be increased or decreased?|UNESCO
An International Comparative Study on the Working Conditions of School Personnel|JTU Institute for Education and Culture
Annex C. List of tables available on line:TALIS2018|OECD
Directed Time (England)|NASUWT
Education Policy in Japan: Building Bridges towards 2030|OECD
Finnish Teachers & Principals in Figures|Finish National Agency for Education
How teachers in the U.S. and Finland see their jobs?|Centre for Public Educaiton
Positive, High-achieving students?: What Schools and Teachers Can DO? |OECD
Raising standards and tackling workload: a national agreement|NASUWT et al.
TALIS2018 Volume I|OECD
Teaching in Focus: Supporting and guiding novice teachers|OECD

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