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【教育×SDGs】日本のジェンダーギャップ是正に向け教育ができることとは?

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3月末に世界経済フォーラムが発表したグローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2021で156カ国中120位と位置付けられた日本。ジェンダーギャップが日本社会に根深く潜在していることを改めて照らす結果でした。ジェンダーギャップ是正には様々な場面からの働きかけが必要であり、教育にできることも多くあります。今回は、ジェンダーとは何か?ジェンダーギャップの現状を踏まえ、教育とジェンダーギャップの関係性、そして是正に向け教育ができることをまとめてご紹介します!

ジェンダー問題と日本の現状

まず「ジェンダー」とはそもそも何か、なぜジェンダー問題は重要なのか、日本のジェンダーギャップの現状をまとめて見てみましょう。

ジェンダーとは?

「ジェンダー」とは社会文化的性別を指し、生物学的な性とは異なります。UN Women日本事務局の説明を見てみましょう。

ジェンダーとは、男性・女性であることに基づき定められた社会的属性や機会、女性と男性、女児と男児の間における関係性、さらに女性間、男性間における相互関係を意味します。こういった社会的属性や機会、関係性は社会的に構築され、社会化される過程(socialization process)において学習されるものです。これらは時代や背景に特有であり、変化しうるものです。

また、ジェンダーは一定の背景において女性・または男性として期待され、許容され、評価されることを決定します。殆どの社会では、課せられる責任や負うべき活動、資金・資源へのアクセスと支配、意思決定の機会において、女性と男性の間に違いや不平等が存在します。

(引用元:ジェンダーとは?|UN Women 日本事務局

この説明をもとに、3つのポイントにまとめてみました。
①ジェンダーとは社会的に構成された概念
②文化・時代により変化するもの
③ジェンダーの概念により男女の人生に不平等が存在する

SDGs持続可能な社会に向けて

ポイント③でまとめた通り、男女の間に不平等が生じてしまう現状の解決は、持続可能な社会の実現に向け急務とされています。日本に限らず、世界各国で重要度の高い社会課題であり、国連のSDGsにおいても繰り返し強調されています。特に教育に関連する文脈でのターゲットをまとめてみました。

(筆者作成 Japan SDGs Action Platform|外務省より引用)

男女の区別なく質の高い教育を保障すること、ジェンダーによる格差をなくし平等を達成することは重要な国際目標であることが分かります。

日本のジェンダーギャップの現状

ジェンダー平等の達成は重要な目標であるとご紹介しましたが、日本にはどの程度のジェンダーギャップが存在するのでしょうか。いくつかデータを参照してみましょう。

ジェンダーギャップを示す様々なデータのうち注目を浴びる、世界国際フォーラムのジェンダーギャップレポート。2021年のレポートで156カ国中120位にランクインした日本は、先進国のうちほぼ最下位という位置付けとなりました。

Global Gender Gap Report 2021|World Economic Forumをもとに筆者作成)

経済・教育・健康・政治の各分野において男女の不平等があることが読み取れる順位となりました。

次に、OECD PISA2018より、読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーの3分野における習熟度スコアの男女差を見てみましょう。

OECD PISA~ 2018 年調査国際結果の要約~|国立教育政策研究所をもとに筆者作成)

読解力・科学的リテラシーにおける男女差は国際平均に近く、有意差はないという結果になりました。しかし、数学的リテラシーのスコアは、OECD諸国平均の5点差の2倍である10点の差が男女間にあり、統計的な有意差があると分析されました。

最後に、大学の専攻分野における男女分布を見てみましょう。

(参照元:第23図 大学(学部)学生の専攻分野の状況(男女別,平成30(2018)年度)|内閣府 男女共同参画局

この図から、理系分野を選択する学生は男子生徒が偏って多いことが読み取れます。

国立教育政策研究所によると、日本では教育機会におけるジェンダーギャップはほぼ存在しないといいます。しかしながら、習熟度や文理選択・学部専攻で男女による差が生まれている現状を受け止める必要があります。

ジェンダー不平等と教育の関係性

先程ご紹介したように、ジェンダーは社会的に構築される概念であり、教育・学校現場も個々人のジェンダー意識の形成に大きな影響を及ぼします。

私たちは、「男はこうあるべき、女はこうあるべき」などのジェンダー規範を他者との関わり合いの中で内面化し、規範に沿った言動を取れるよう学びながら、成長します。この過程をジェンダー・ソーシャライゼーションといい、生まれてすぐの親との関わりをはじめ、学校や社会に出てからも継続的に続きます。

一生涯続くジェンダー・ソーシャライゼーションですが、特にジェンダー観に強く影響を与える時期があります。まず、第一に幼少期です。OECDの研究によると、子どもは5歳の時点でジェンダー規範が内面化されているといいます。5歳児の憧れの職業には、ジェンダーロール(社会的・文化的に期待せる性別役割)に沿った職業が多く、明らかな偏りが見られたと報告しています。

幼少期に加え、青年期(国連指標:10-19歳)はジェンダーの影響が顕著に現れ、強化する時期です。同時に、今まで築かれたジェンダー観や影響を転換していく第2チャンスの時期とも言われています。青年期に最も時間を過ごす学校は、ジェンダー規範を含め多くを学ぶ場です。そのため、学校現場そして教育者は重要な責任を担っています。

ジェンダー意識形成に大きな影響を与える学校現場ですが、組織と実践の各レベルでどの様な課題があるのかご紹介します。

組織レベルの課題

教育の組織レベルの課題をいくつか見てみましょう。

教職員の性別

日本の学校で管理職を務める女性の割合は非常に低いと問題視されています。最近の管理職に占める女性の割合は次の通りです。

校長・副校長・教頭に占める女性の割合(各年4月1日現在)|文部科学省をもとに筆者作成)

2013年と少し古い統計ですが、OECD諸国では平均で44.6%の校長が女性であり、国際基準からかけ離れていることもわかります。ガールスカウト日本連盟が行った524名の女子高校生を対象としたアンケート調査結果によると、87.5%の女子高校生が「校長を男性と女性が同じくらい占めるのが理想」と若者のニーズを明らかにしました。

他にも内閣府による男女共同参画白書において、教科別の男女の割合も注目されています。中学・高校の両方において、国語や英語は女性教員が多く、数学や理科などの理系教科は男性教員が多いと性別の偏りがある現状を指摘しています。女子生徒が理系選択を避ける理由は学力ではなく、ロールモデル不足など環境条件に起因することがわかっており、女性の理系教員を増強することが求められています。

生徒児童の身近なロールモデルである教職員の性別に偏りがなくなるよう、男女比のバランスを達成することは重要な課題です。

教科書

生徒児童が学習に使う教科書もジェンダーバイアス(男女に対する固定的な概念・偏見)が潜んでいると指摘されています。教科書に見られると報告されたジェンダーバイアスをまとめてみました。

(参考資料 (1)小学校国語科教科書の中にみるジェンダー|味呑文絵 (2)小学校国語教科書に見る隠れたカリキュラムの考察 : ジェンダーおよびクィアの観点から|永田麻詠 (3)ジェンダーの視点からみる教科書内の職業 の挿絵について ―小学校教科書の分析から―|鈴木美花,室雅子

米バージニア大学のブラムバーグ教授は、ほとんどの国の教科書にジェンダーバイアスが潜在すると指摘し、まず、教科書にどのようなジェンダーバイアスがあるか体系的に調査することが重要と訴えます。また、四天王寺大学の永田准教授は、教科書に潜むジェンダー観は授業を行う教員が敏感に配慮することで、対応することもできるといいます。

男女別名簿

日常的に使われる学校の名簿。近年では性別を区別せず五十音順に並べる男女混合名簿を使用する学校が増えていますが、未だ男女別名簿を使っている学校もあります。男女別名簿は男子を先・女子を後の順番に名簿が作成されるため、女子生徒が待たされる場面が日常的に増えます。

男女別名簿に対する懸念は次のような声が挙げられています。
・女子は順番を待つことで、忍耐強さや待つ力がつく一方で、積極性を損なう可能性
・男子は主、男性が優位という意識を抱く可能性

これらの懸念を踏まえ、各自治体・地域は男女混合名簿への移行に注力しています。

男女混合名簿についてまとめた記事もご一緒にご一読ください▼
【教育×ジェンダー】学校で男女混合名簿を使うメリットとは?

実践レベルの課題

次に、実践レベルで挙げられている課題をご紹介します。毎日子どもたちと関わる先生は、無意識にジェンダーバイアスのかかった価値観を伝えてしまう場面があります。

進路指導

教員が寄り添い指導する生徒の文理選択・大学の学部選択には、課題があるといいます。

ガールスカウト日本連盟の調査結果によると、「女子は4年制大学にいかなくていい」「女子は理系にを選択しなくていい」などの差別的な指導を学校で経験した女子高校生はほとんどいなく、肯定的な結果が示されました。一方で、武蔵大学の中西祐子教授は理科の学習効果が高まるための教員の働きかけが男女によって違いがあると次のように指摘します。

理科を積極的に学びたくなるような教師からの働きかけは、すでに中学校段階から男子の方が女子よりも多く受けていることが分かる。

(引用元:学校教育における男女共同参画の現状と課題  教育選択のジェンダー公正を目指して|中西祐子, p.14

理系科目が伸びるよう積極的な後押しが、男子生徒・女子生徒により異なることは、将来的な進路選択に影響しかねないと注視しています。

性別により偏らない進路指導は、男子生徒にも必要であり、国際教育政策の専門家・畠山勝太氏は次のように述べています。

社会の労働市場についての説明はすべきですが、その上で理系でない進路を選ぼうとしたときや、一般的に女子の多い看護系、家政婦系の学部を希望したときなどに、バッサリ切り捨てることはしないでほしいと思います。

(引用元:教育の男女格差、なぜ生まれる?現状と問題点、専門家に聞く|朝日新聞EduA

日頃の接し方

他にも、性別による接し方の違いについて課題が挙げられています。

福島県男女共生センターが行った調査によると、生徒が認識している扱われ方の違いは下記の点が挙げられました。
・男子の方が厳しく叱責される
・男子の方が力仕事を頼まれる
・女子の方が甘やかされている、やさしく励まされる
・女子の方が丁寧な言葉で話しかけられる

同様にガールスカウト日本連盟で取り上げられた女子高校生の声には次のような点があります。

先生から「女の子らしく振る舞いなさい」や「女の子なんだから静かにしなさい」と言う言葉がかけられます。

何より1番される事の多い差別は名前の呼び方だと思います。男性へは「くん」呼び、女性へは「さん」呼びで差別をしているのではないかと思います。

(引用元:女子高校生が感じるジェンダーバイアス 「ジェンダー」に関する女子高校生調査報告書2019|ガールスカウト日本連盟, p.8

このような具体例を踏まえ、生徒の呼称そして接し方において無意識に差別的な扱いをしていないか敏感に意識する必要があると注視されています。

ジェンダーギャップ是正に向け教育ができること

学校現場で子どもに偏ったジェンダー観を植え付け得る課題をいくつかピックアップしてご紹介しました。教育現場はジェンダーバイアスを浸透させる可能性があると同時に、子どもたちと一緒に考えジェンダー観を転換していくことこともでき、ジェンダーギャップ是正に向け働きかけることが期待されています。

教育はジェンダー平等達成への鍵!

教育は子どもたちが必要な知識の習得する過程を支援するため、ジェンダー平等に向け重要な役割を果たします。SDG4「質の高い教育をみんなに」の元に、子ども・若者たちがジェンダーに対し知識とスキルを習得できるようにする重要性が明記されています。

4.7 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。

(引用元:SDGsグローバル指標 4:質の高い教育をみんなに|外務省

同様に日本女性教育会館は「学校は次代を担う子供たちが男女共同参画を推進する意識を育む基盤となる重要な場」と強調します。

ジェンダーギャップの課題はもちろん教育界だけで解決できることではありません。しかし、アクションをとっていくことが大切です。日頃から子どもたちに接する教員に向けたジェンダー研修は一つの有効策です。他にも、生徒児童が抱くジェンダーバイアスを気づかせる機会を設けるジェンダー教育などを行う学校もあります。また、女性の理系教員の配置を増やすことや、女性が管理職を務めやすい環境づくり、男女混合名簿を使っていくなどの組織的な対策も重要です。

Teach For Japanでは学校現場に教師人材を送り出す団体とし、フェロー候補生に向けて性教育やSDGsなどの研修も行なっています(2020年実績)。研修についての関連記事もご一緒にご一読ください▼
SDGsを学び学校現場に取り入れよう!
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まとめ

今回、ジェンダーギャップ是正という社会課題を起点に、ジェンダーとは何か、教育との関係性、教育現場における課題や対策をまとめてご紹介しました。SDGsにも掲げられるジェンダー平等の達成には、政治や労働市場などの取組みが欠かせないと同時に、教育も重要な役割を担います。ジェンダーバイアスを浸透させる可能性、問い直す可能性の両方を兼ね備える教育。現行の教育現場・実践にどのような課題があるのかを突き止め、改善していく、この繰り返しは引き続き重要となりそうです。

最後に、ジェンダーの問題は「女子が不利」という単純な課題ではありません。スイス・ヴォー州の男女平等課で働くネオ氏は「男女間の不平等は、女子にとっても男子にとっても有害です」と強調します。全ての人が、性別を取り巻く社会的規範に縛られることなく人生を歩めるよう、引き続き教育には何ができるか注目し、考えていきましょう!

参考:
「女子高生が考える、ジェンダーバイアスがなくならない原因と解決策」院内集会を開催|公益社団法人 ガールスカウト日本連盟
「平等の学校」で学ぶこと ジェンダー平等を目指して|swissinfo.ch
ジェンダーを巡る隠れたカリキュラム|松田智子
ジェンダー教育を考える 価値観の違い乗り越え共存へ|東大新聞オンライン
ハラスメント、LGBT 日本のジェンダー教育に奮闘 「ジェンダーは社会的に構成された概念」だと知ること|日経WOMAN
一体どんな授業してるの?「ジェンダー教育」を18年前から続けている高校に聞いた|livedoor News
学校における 男女共同参画の推進のための 教員研修プログラム|独立行政法人国立女性教育会館
教育の男女格差、なぜ生まれる?現状と問題点、専門家に聞く|朝日新聞EduA
男女共同参画白書 令和元年度版 第2節 進路選択に至る女子の状況と多様な進路選択を可能とするための取組|内閣府 男女共同参画局
男女混合名簿にまつわるエトセトラ|公益財団法人おきなわ女性財団
中学校 男女平等教育指導の手引|岡山市教育委員会
Challenging Gender Stereotypes in Education|Jones, K. ed. (2020)
Education as the Pathway towwards Gender Equality|Karam, A. UN Chronicle
Gender bias at school: where to find it and how to combat it|International Women’s Day
Gender Equality in Education in Japan|日本国際研究
Gender norms are clearly evident at five years of age|OECD Education and Skills Today
Promoting gender equality in/through schools – examples to learn from|LSE
The future at five: How do gender stereotypes affect five-year-olds’ ideas about their future?|OECD
Towards a clearer understanding of gender socialization in adolescence|UNICEF
We should all be feminist|Chimamanda Nogozi Adichie

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