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【2020年度全面実施】小学校英語教育改革―背景・内容・課題とは

コロナ禍での休校、オンライン授業、分散登校・時差通学と混乱が続いた2020年度1学期でしたが、いよいよ小学校における外国語教育の改革が全面実施しました。しかし、以前から高学年を対象に導入されていた小学校英語教育には、どのような課題があるのか? 疑問に思う方は多いと思います。今回は、改革実施における背景と改革の内容を再度振り返りながら、今後懸念されている課題を紹介します。

小学校英語教育改革の背景

 今年度小学校にて全面実施した英語教育の改革は、2013年度に文部科学省が公表した「グローバル化に対応した英語教育改革」の元、計画が進められてきました。

では、今回の改革はどのような課題のもと進められてきたのでしょうか? また、どのような目標実現のために実施されるのでしょうか?

日本の英語教育の課題

なぜ新たな英語教育改革に至ったのか、2011年実施の学習指導要領の成果とグローバル化の進展に対する課題意識が、以下の引用文に明確に説明されています。

「グローバル化の進展の中、国際共通語である英語力の向上は日本の将来とって極めて重要である。」

「我が国の英語教育では、現行の学習指導要領を受けた進展も見られるが、特にコミュニケーション能力の育成について改善を加速化すべき課題も多い。」

「東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020(平成32)年はもとより、現在、学校で学ぶ児童生徒が卒業後に社会で活躍するであろう2050(平成62)年頃には、我が国は、多文化・多言語・他民族の人たちが、協調と競争する国際的な環境の中にあることが予想され、そうした中で、国民一人一人が、様々な社会的・職業的な場面において、外国語を用いたコミュニケーションを行う機会が格段に増えることが想定される。」

(引用元: 今後の英語教育改善・充実方策について 報告〜グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言〜|文部科学省、太字は筆者追加)

このように、現時点での児童生徒の英語コミュニケーション能力を問題視し、かつ、近い将来、日本でも英語を用いたコミュニケーションを図る機会が増えるという想定のもと、改革の計画が進められたことが分かります。

では、今の児童生徒の英語力の調査結果を見てみましょう。

文部科学省は学習到達目標を中学卒業段階で英検3級程度以上(CEFR※ A1レベル相当以上)、高校卒業段階で英検準2〜英検2級程度以上(CEFR A2レベル相当以上)をそれぞれ半数の生徒が達成することとしています。しかし、下表のとおり、徐々に改善はあるものの、2011年実施の学習指導要領のもとでは達成できていない現状が分かります。

(参照元:令和元年度「英語教育実施状況調査」概要|文部科学省, p.3

※CEFR(=Common European Framework of References for Languages)とは?

ヨーロッパ言語共通参照枠といい、外国語の運用能力を示す国際的な基準です。文部科学省は、英語力強化を目指す上で、CEFRの国際基準に準拠した英語教育を行うべきとし、今回の改革においてCEFRの指標を様々な場面で導入しています。例えば、到達目標にもCEFRを用いています。他にも、新たに強調されている4技能5領域(聞くこと・読むこと・話すこと(やり取り)・話すこと(発表)・書くこと)の育成は、CEFRの評価基準に基づきます。このような背景から、今後CEFRは度々参照されると思われるため、今回簡単にご紹介します!

CEFRは運用能力の基準であり、各熟達段階の学習者が外国語を用いて「具体的に何ができるか」を示します。6段階(A1, A2, B1, B2, C1, C2)の熟達度に分けられており、評価や指導計画、教材作成に応用されます。各段階の記述は下表のとおりです。

(参照元:「CEFR(ヨーロッパ言共通参照枠)」|British Council

中学・高校卒業段階で目指しているA1、A2のレベルは「基礎段階の言語使用者」であり、表の紫の部分になります。

参考
次期学習指導要領が目指す英語教育の展望と課題|早瀬博範 佐賀大学大学院学校教育学研究科紀要

「グローバル化に対応した英語教育改革」の目標

これらの現状課題を踏まえ、今回実施される英語教育改革はどのような目標を掲げているのか見てみましょう。まず第一に、学習到達目標に達する生徒の割合を段階的に高めることを目指します。

令和元年度「英語教育実施状況調査」の結果について|文部科学省生徒の英語力向上推進プラン|文部科学省をもとに筆者作成)

直近の目標である50%を引き続き目指しながら、2024年度には70%の生徒が目標に到達することが期待されています。更に、2024年度において、高校卒業段階で留学等を目指す生徒は英検2級〜準1級程度以上(CEFR B1〜B2以上)の英語力を身につけ、全体の10%を占めることを目指します。

また、目標の習得語彙数も変更されます。特に、小学校高学年が「外国語科」の教科として学習するため、新たに習得語彙数が設定されました。中学校・高等学校の各段階においても、習得語彙数が増えます。

前学習指導要領現学習指導要領
小学校600〜700語程度
中学校1,200語程度1,600〜1,800語程度
高等学校1,800語程度1,800〜2,500語程度
全体3,000語程度4,000〜5,000語程度

平成30年度「英語教育実施状況調査」結果概要 参考資料集|文部科学省, p.1 をもとに筆者作成)

更に、文部科学省はアジア圏でトップレベルの英語力の育成を目指すとしています。

小学校英語教育の改革内容

以前も特集した、新しい小学校の英語教育の内容を簡単に表で振り返りましょう。

活動型の中学年(3・4年生)

授業形態活動型
授業時間数年間35単位(1単位:45分)
評価方法数値ではなく、
文章などの記述による評価

外国語活動の目標

外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、話すことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る素地となる資質・能力を育成することを目指す。

(引用元:小学校学習指導要領(平成29年告示)|文部科学省, p.156、太字は筆者追加)

教科型の高学年(5・6年生)

授業形態教科型
授業時間数年間70単位(1単位:45分)
評価方法他教科と同様、数値による評価

外国語科の目標

外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を育成することを目指す。

(引用元:小学校学習指導要領(平成29年告示)|文部科学省, p.173、太字は筆者追加)

英語教育の小中連携

今年度より、小学校高学年は教科として英語を学習し始めるため、小中連携がより重視されています。

前学習指導要領における小学校高学年での「外国語活動」と中学校での「外国語科」の連携は課題とされていました。小学校での学習が、中学校と綿密に連携していなければ、英語教育の早期化によるコミュニケーション能力の強化への効果が損なわれてしまうという指摘もありました。

これらの課題を踏まえ、新学習指導要領では、各段階における指導の相互接続性を確保しながら指導計画を作成するよう強調されています。具体的には、小学校と中学校の教員は指導内容・方法・目標の情報共有・意見交換に加え、授業参観等を通し連携することが期待されています。

関連記事
小学校の外国語教育はどう変わる?2020年から小学生が学ぶ「英語」
【小学校外国語】学習指導要領を丸ごと解説!②2020年実施のポイント

小学校英語教育の今後の課題

全面実施した小学校英語教育ですが、前学習指導要領による高学年への外国語活動の導入、また新学習指導要領による2018年からの先行実施などを踏まえ、様々な課題が挙げられています。

教員の指導力

英語教育を早期化するにあたり、小学校での英語教育を主に担うのは学級担任になります。学級担任は、児童と過ごす時間が長く、他教科も教えるため、生徒の関心・他教科との親和性の高い題材を外国語活動・外国語科に応用できるという利点があります。

一方で、現職担任教員の多くは教職課程で外国語指導を学んでいません。そのため、研修を通して指導力を強化することに加え、英語を用いた体験的な言語活動の指導を行うための英語力向上も必要と考えられています。しかし、日々の職務に加え研修を受けることは、教員を忙殺してしまうという懸念が挙げられています。

これらを踏まえ、文部科学省は教員が持続的に学べる機会を充実すべく、オンライン学習環境を整えることを今後の取組として掲げています。

地域差

今まで英語教育を小学校に導入するにあたり、教育の機会均等の確保が課題とされてきました。特に着目したい点が、指導体制と小中連携のばらつきです。

指導体制

上述のとおり、外国語教育を専門としない担任教員が円滑に指導を行えるよう、文部科学省はALTや地域人材を採用することを推奨しています。

学級担任の教師または外国語を担当する教師が指導計画を作成し、授業を実施するにあたっては、ネイティブ・スピーカーや英語が堪能な地域人材などの協力を得る等、指導体制の充実を図るとともに、指導方法の工夫を行うこと。 

(引用元:小学校学習指導要領(平成29年告示)|文部科学省, p.162, 177

しかし、ALT・地域人材の確保は各都道府県・自治体によりばらつきがあります。

2019年度の公立小学校のALT活用調査結果と、各都道府県の公立小学校数を比較すると、学校数に対しALT任用率に差があることが分かります。

公立小学校数(分校含む)ALT活用人数学校数(1):ALT人数
山形県248校(1)151人0.609
東京都1,267校(2)1,339人1.057
岐阜県365校(3)354人0.97
佐賀県163校(4)99人0.607

(公立小学校数 (1)山形県学校名鑑|山形県 (2)都内公立学校数|東京都教育委員会 (3)学校数、児童・生徒数|岐阜県 (4)令和元年度 学校基本調査(確報)1小学校|佐賀県 ALT活用人数 令和元年度「英語教育実施状況調査」の結果について ALT活用人数|文部科学省をもとに筆者作成)

日本経済新聞によると、市内小中学校45校に対し、17人のALTを任用している徳島市では、各学級に月2〜3回程度しか教壇に立てていないといいます。予算の都合もあり、ALTの確保が課題となっています。

また英語が堪能な地域人材の活用においても、地域差があります。J-Shineの調査結果によると、2017年度に地域人材を採用していた自治体は40%に留まり、地域差が大きいと指摘されています。課題の一つとしてあげられたのが、予算確保でした。

担任教員に加え、ALTや地域人材による指導を受けられる生徒と受けられない生徒では、学習機会が均等に確保されているとは言い難い状況です。指導体制を充実させる上で、ALT・地域人材などの活用の地域差を解消することは急務となりそうです。

参考
「英語話せない」小学校教師の不安 ロボットも教壇に|日本経済新聞
2017 年 小学校英語教科化記念 「教育委員会訪問調査」報告書|J-Shine

小中連携

小中連携においても、地域によって均一でないことが問題視されています。

(参照元:令和元年度「英語教育実施状況調査」概要|文部科学省, p.22

100%近く連携している地域がある中、50%以下の地域もあります。小学校・中学校間の相互接続性の確保にばらつきがあると、中学入学時点において、学力の格差を生み出してしまうことが懸念されています。小中連携の実施は引き続き重要な課題とされています。

Teach For Japanにできること

Teach For Japanでは多様な人材を公立の小中学校に送り出しており、今回紹介した小学校英語教育の課題解決にも働きかけることができます。

例えば、海外の大学院を卒業したフェロー、国際機関や青年海外協力隊を通して、海外での生活経験があるフェローも教室に送り出してきました。担任教員に英語を教えることが求められる今、このような特性を兼ね備えたフェローが教育現場に赴任することで、教員の指導力・地域差の課題の是正へと貢献することもできます。

実例とし、中学校へ赴任し、英語教育強化を目指して「ジョリーフォニックス」の導入に取り組んだフェローもいます。

関連記事
ジョリーフォニックスで中学生が英語を楽しく学ぶ

まとめ

多くの期待と共に実施された小学校英語教育の改革ですが、様々な課題があることが分かりました。小学生から外国語を学ぶことで格差が広がるのではなく、英語コミュニケーション能力の改善という目標実現につながるよう、引き続き課題の是正が必要となります。教員を継続的に支援し、指導体制を整えることで、学習機会均等へと導くことも不可欠となります。新学習指導要領の全面実施は改革の始まりであり、これから新たな課題や成果が出てくると思われます。引き続き、小学校英語教育に注目していきましょう。

参考
英語教育で大きな都道府県格差が明らかに|ベネッセ教育情報サイト(2016)
格差を広げる小学校英語教育?|日本英語検定協会 金森強(2015)
公立小学校での英語教育の現状と課題|神戸常磐大学紀要 脇本聡美 (2013)
公立小学校における英語教育の成功要因|British Council (2014)
小学校英語教育の課題と展望|理数啓林No.12 影浦 攻 兼重 昇
小学校英語の教科化についての展望と課題 : 2020年度実施予定の正式教科としての導入に備えて|鹿児島大学リポジトリ 坂本育生(2017)
小学校英語教育の現状と課題|文部科学省(2009)
小学校から中学校へとつながる英語教育とは|ベネッセ教育総合研究所 第1回 中学校英語に関する基本調査報告書【教員調査・生徒調査】 [2009年] 福本優美子
小学校外国語活動・外国語ガイドブック 研修指導者編|文部科学省
小学校学習指導要領(平成29年告示)|文部科学省
小学校における英語教育充実のための課題と大学の 役割(2)高学年での教科化に向けて|ノートルダム聖心女子大学紀要 福原 史子(2017)
今後の英語教育改善・充実方策について 報告〜グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言〜|文部科学省(2014)
令和元年度「英語教育実施状況調査」の結果と今後の取組について|文部科学省(2020)
令和元年度「英語教育実施状況調査」の結果について|文部科学省(2020)

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