【小学校外国語】学習指導要領をまるごと解説!②2020年実施のポイント
- コラム
2020年4月より小学校で教科としての外国語の導入が始まりました。しかし、そもそもいつから小学校の外国語教育は始まっていたのか? なぜ外国語教育の実施方法が変わっているのか? さまざまな疑問がわくと思います。第2弾の今回は、小学校で外国語が教科化されることとなった2020年実施の学習指導要領についてまるごと解説していきたいと思います。
2020年実施 外国語の教科化、外国語活動の開始を早める
2020年の学習指導要領の実施では、5、6年生は外国語活動から外国語科を学習することになり、外国語活動の開始が3、4年生に早まりました。ここからは、外国語の教科化と2011年からの外国語活動の変化についてみていきます。
外国語教科化の経緯
2011年の実施と反応を踏まえて、2020年の実施に向けてもさまざまな話し合いが行われます。
2011年実施で導入された小学校高学年の外国語活動によっては、子どもたちの高い学習意欲や中学生が外国語教育に対してより積極的になるなどの成果が認められました。一方で、大きく3点が課題としても指摘されます。
①中学校との接続で、音声中心で学んだことから文字への学習が円滑に進んでいない
②活動を通じて日本語と英語の音声の違い、英語の発音と綴りの関係、文構造に気付くこと、そして気づきを以降の学習につなげることがうまくできていない
③高学年の子どもたちは抽象的な思考力が高まる段階なので、より体系的な学習が必要
また、子どもたちの学習意欲が学年が上がるにつれて低下することが多い状況や、学習した内容や指導方法などを進級・進学したあとに発展的に生かせない状況も見られました。
こういった成果と課題を踏まえ、小学校3、4年生の外国語活動では「聞くこと」「話すこと」を中心に外国語に慣れ親しんでモチベーションを上げ、小学校5、6年生の外国語科では文字を「読むこと」「書くこと」も加えた総合的・系統的に扱う教科学習を行うことになります。そして同時に、中学校への接続を図ることを重視することになりました。
2020年実施の学習指導要領全体のポイントについては、以下の記事をご覧ください。
5分でわかる小学校学習指導要領の変遷!改訂のポイントと流れを解説!(後半)
外国語活動・外国語科の目標
2020年実施の学習指導要領において示された外国語活動と外国語科の目標は、それぞれ以下の通りです。
外国語活動(小学3、4年生)
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,話すことの言語活動を通して,コミュニケーションを図る素地となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(引用元:小学校学習指導要領(平成29年告示)|文部科学省より、太字は筆者作成)
⑴ 外国語を通して,言語や文化について体験的に理解を深め,日本語と外国語との音声の違い等に気付くとともに,外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむようにする。
⑵ 身近で簡単な事柄について,外国語で聞いたり話したりして自分の考えや気持ちなどを伝え合う力の素地を養う。
⑶ 外国語を通して,言語やその背景にある文化に対する理解を深め,相手に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。
外国語科(小学5、6年生)
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動を通して,コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(引用元:小学校学習指導要領(平成29年告示)|文部科学省より、太字は筆者作成)
⑴ 外国語の音声や文字,語彙,表現,文構造,言語の働きなどについて,日本語と外国語との違いに気付き,これらの知識を理解するとともに,読むこと,書くことに慣れ親しみ,聞くこと,読むこと,話すこと,書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技能を身に付けるようにする。
⑵ コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,身近で簡単な事柄について,聞いたり話したりするとともに,音声で十分に慣れ親しんだ外国語の語彙や基本的な表現を推測しながら読んだり,語順を意識しながら書いたりして,自分の考えや気持ちなどを伝え合うことができる基礎的な力を養う。
⑶ 外国語の背景にある文化に対する理解を深め,他者に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。
3、4年生の外国語活動の目標のコアとなるのは、「コミュニケーションを図る素地となる資質・能力」であり、5、6年生の外国語科の目標である「コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力」、そして中学校の外国語科の目標である、「簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力」につながります。ここにも、中学校との円滑な接続と、子どもたちがこれらの資質・能力が確実に身に付けられるようにすることの必要性が見えます。
2011年実施の学習指導要領で導入された高学年での外国語活動と同じく、中学年の外国語活動では「知識及び技能」の定着を直接的なねらいにしているのではなく、伝え合う力を養うことが重視されていることもポイントです。
また3、4年生ではコミュニケーションにおいて配慮する人を「相手」、5、6年生では「他者」と記載されています。この表現の違いは、3、4年生での子どもの周りにいる友達や教員、ALTなどを相手として想定したコミュニケーションが、5、6年生では教室内の人だけでなく外国からの留学生や地域に住む外国人まで範囲が広がることから生じています。
そして5、6年生の外国語科では、「聞くこと」と「話すこと」に加えて「読むこと」「書くこと」の活動を想定した目標になっていることが、外国語活動との大きな違いとなっています。音声や文字、語彙、文構造、言語の働きなどについても気付くだけでなく、(限定的ではありますが)知識として理解してスキルとして使えることが目標です。このように外国語科では、3、4年生の外国語活動での活動と意図された成果を踏まえて実施されます。
外国語活動・外国語科の内容
外国語活動の内容
外国語活動は年間35単位時間、週1コマ相当、そして外国語科は70単位時間程度、週2コマ(モジュール含む)となります。
外国語活動の内容は、以下のようにわけて詳しく提示されています。
・知識及び技能に関する内容:英語の特徴等に関する事項
・思考力、判断力、表現力等に関する内容:情報を整理しながら考えなどを形成し、英語で表現したり、伝え合ったりする事項、言語活動及び言語の働きに関する事項
2011年実施の学習指導要領での外国語活動の内容の大きな違いとしては、思考力、判断力、表現力等に関する内容が大きく増えたことです。また言語活動として「聞くこと」、「話すこと」と提示されていましたが、「話すこと」を「話すこと[やり取り]」と「話すこと[発表]」の2つにわけて、それぞれ具体的に内容が示されています。
外国語科の内容
外国語科の内容も「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力等」の2つのポイントに分類され、それぞれ英語の特徴やきまりに関する事項(知識及び技能)と情報を整理しながら考えなどを形成し、英語で表現したり、伝え合ったりすることに関する事項、言語活動及び言語の働きに関する事項(思考力、判断力、表現力等)と題して、より細かい項目がさらに示されています。
外国語活動との内容の違いに着目すると、
・語彙を把握するだけでなく発信できるようになる、
・自分以外のことについても表現できるようになる、
・自分なりの考えをもって気持ちを表現する工夫をする、
・書き写したりするだけでなく英語の語順の大切さを意識しながら書く
など、内容の難易度が上がることがわかります。
また中学校との違いや接続については、
・語と語の連結による音の変化について中学校のように明示的な指導ではなく、聞き慣れた語句で音の変化があることに気付くようにすること
・読解ではなく慣れ親しんできた語句や表現で書かれたものを思い出しながら読むこと
などがあげられます。
このように、5、6年生の外国語科の授業では3,4年生の外国語活動よりも難易度が上がると同時に、中学校での学習の橋渡しとなる内容が盛り込まれます。
参考
小学校外国語活動・外国語 研修ガイドブック|文部科学省
【外国語活動・外国語編】小学校学習指導要領|文部科学省
外国語活動・外国語科の評価方法
外国語活動、外国語科ともに「知識・技能」、「思考・判断・表現」、「主体的に学習に取り組む態度」の 3 つの観点があり、一つ一つの授業ごとに評価するというよりも単元や題材といった学習内容のまとまりを通じて評価していきます。年間を通じた目標とともに、単元目標や領域別(「聞くこと」、「読むこと」、「話すこと[やり取り]」、「話すこと[発表]」、「書くこと」)などの目標を把握したうえで、観点別に評価することが大切です。そのため、外国語活動と外国語科の評価方法の違いも目標の違いと大きく関連しています。
具体的に、教員は筆記のテスト結果だけでなく、子どもたちの活動の観察や、子どもたちによる自己評価、発表や作品の制作などへのパフォーマンス評価など、多面的に、多角的に評価をすることが大事です。
外国語活動と外国語科の評価方法の大きな違いは、数値による評価を行うかどうかになります。外国語活動では文章の記述による評価を行って、子どもたちの良かったところなどのそれぞれの特徴を伝えることで評価する一方、外国語科では数値による評価を示しながら、日常の教育活動などを通じて、数値などによる観点別学習状況の評価では伝えきれない、子どもたち一人ひとりの良い点や可能性、進捗状況をそれぞれに伝えることが大切だとされています。
まとめ
今回は小学校外国語教育について、学習指導要領の内容を2つの記事にわたって紹介していきました。2020年度に入って外国語(英語)がついに教科化となるなど、小学校の外国語教育は常にアップデートしていきます。これからもその変化を追うとともに、その結果についても注目していきましょう。
参考
小学校学習指導要領(平成29年告示)|文部科学省
【外国語活動・外国語編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説|文部科学省
小学校外国語活動・外国語 研修ガイドブック|文部科学省
学習指導要領 小学校外国語活動 新旧対照資料|啓林館
Fun_with_English_2019春夏号|啓林館
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