活動レポート report

フェローと教え子によるトークセッション
~フェローが赴任してからの変化~

2022年3月、東京都港区虎ノ門でフェロー2人とその教え子たちによるトークセッションが開催されました。それぞれに対する第一印象をはじめ、思い出に残るエピソード、そしてフェローたちが生徒にどのような変化をもたらしたのか。4名によるトークセッションで当時を振り返ってお話いただきました。

司会:それではまずは4名の方々の自己紹介からお願いします。

山岡:第3期フェローの山岡です。現在は私立の中高一貫校で英語科の教師として勤務しています。

竹内:大学3年生で法律を専攻している竹内です。山岡先生とは中学3年生の時に出会い、英語を教えていただきました。

磯:第3期フェローの磯です。I T系のスタートアップ企業で人事を務める傍ら、Teach For Japan(以下、TFJ)の資金調達や海外とのやりとりを担当しています。

沢田:現在は専門学校でお芝居を勉強している沢田です。中学2年生の時に磯先生と出会い、演劇部の顧問として指導していただきました。

司会:今日のトークセッションのテーマが「フェローが赴任してからの変化」ということですが、その変化を教え子の方にフリップで一言書いてきてもらいました。お見せいただいてもいいでしょうか?

竹内:私の変化は「挑戦する力」が芽生えたことです。学校で演劇を英語でやる機会があったんですが、私は英語も喋れないし、人前で話すことも苦手で勇気がなかなか湧かなかったんです。そんな時に山岡先生に背中を押してもらい、挑戦することを決めました。まず台本を日本語で作ってから翻訳したのですが、先生にたくさん添削をしていただき、本当に頼りにさせてもらいました。英語の演劇を通じて、できないと最初から諦めるのではなく、まずは挑戦してみることの大切さを学び、積極性を身につけることができました。

司会:先生として一般的な業務の傍ら、台本を英訳する作業は大変だったのではないでしょうか? 具体的にどういうサポートをされたのでしょうか?

山岡:確かに大変でしたが、それ以上に教え子の「やりたい」という気持ちをサポートしたいという想いの方が強かったですね。台本については出演する子たちのキャラクターを存分に活かすために、私のアイデアよりも生徒たちのアイデアをなるべく活かすことを心がけました。

司会:劇を作るのは大変な作業だと思いますが、その過程でクラスのみんなにも何か変化があったのでしょうか?

山岡:いざ練習が進むと当初は積極性が見られなかった子たちもどんどんと裏方としてサポートしてくれて、完成に近づくにつれて一人ひとりが自分の仕事に自信をつけていたように感じました。クラスの団結力がより一層強くなった良い機会だったのではないでしょうか。

竹内:私自身は完璧主義すぎるので本当だったらつまらない演劇になっていたかもしれないのですが、山岡先生のアイデアを活かしながら、一人ひとりの個性を引き出す劇を作り上げられました。今でも当時のクラスメイトとは思い出話として、その話で盛り上がっていますよ。

司会:それでは次に沢田さん。フェローと出会って、どんな変化があったのでしょうか?

沢田: 私の変化は「一歩踏み出す楽しさ」です。演劇部に入っていた2年生のときに、磯先生が来てくれました。1年生のときは普通にセリフだけのお芝居をやっていたのですが、ミュージカルの経験がある磯先生と出会ってから、ミュージカルに挑戦することになりました。最初は「動くのも苦手だし、ミュージカルは嫌だな」と思っていたのですが、やってみたらめちゃくちゃ楽しくて。舞台が終わった後は拍手喝采で、今振り返っても当時の光景はとても印象に残っています。

磯:私も大学時代にミュージカルをしていたので、自然と必死になって教えていましたし、私にとっても楽しい思い出でした。大衆の前で披露することで自信をつけてほしいという想いのほか、一人ひとりが本当に素晴らしい子たちばかりだったので「こんなに素敵な生徒がこの学校にはいるんだ」ということをその子たちの頑張る姿を通して、多くの人に伝えたかったんです。

司会:磯先生からはどんな指導があったんでしょうか?

沢田:演劇部は文化系なのですが体幹トレーニングをしながら1曲まるまる歌うなど練習がとにかくキツくて……高校に入ってからの練習の方が楽に感じるくらいでした(笑) あの経験があったからこそ、いろんな苦労も乗り越えられましたし、磯先生に出会ってなかったら役者の道に進んでいなかったかもしれません。

司会:「挑戦する力」と「一歩踏み出す楽しさ」ということでしたが、その変化が今の生活にどのような影響を与えているのでしょうか?

竹内:私だけでなく、もっと多くの子どもたちが自由に挑戦できる社会になればいいと感じるようになりました。でも、今の日本では児童虐待や少年事件など未だに課題があるのも事実です。将来私は教員を目指していますが、まずは教育に携わる前に法律を専門的に学び、子どもたちを取り巻く社会課題と向き合いながら、子どもたちがしっかりと学べて挑戦できる環境づくりをサポートしていきたいと考えています。私の大学では中高の教員免許しか取れないのですが、TFJのフェローシップ・プログラムだと臨時免許や特別免許などを活用して小学校でも教師になれるということなので、将来はフェローの道も選択肢に入れて小学校の教育現場にもぜひ携わりたいなと思っています。

山岡:教え子が立派な考えを持って成長していて教師冥利に尽きます。ぜひその夢を叶えてほしいですね。

沢田:ミュージカルという一歩踏み出した挑戦をすることで、自分に自信もつきましたし、演劇自体がもっと楽しくなり、役者の道に進む決意が固まりました。何か行動を起こせば、変化が生まれて新しい世界が見えますし、周りの環境も変化していきます。実際にミュージカルを始めてからは、演劇部全体の雰囲気もガラッと変わり、他の部員たちも中学時代の経験を糧にそれぞれの進路で活躍していますよ。

磯:生徒たちも高い壁を乗り越えるために、いろいろ苦労をしたと思います。辛い経験や苦しい経験はその時点でどのように将来に繋がっているのか想像できなくても、必ず将来に結びついているんだなとお話しを聞いて改めて感じますね。

司会:それではここからは視聴者様からの質問コーナーへと移ります。「教え子の方へ質問です。先生は皆さんと関わるときに、どんなことを大切にしている先生だと感じましたか?」という質問ですが、いかがでしょうか?

竹内:生徒一人ひとりの気持ちを大切にしている先生だと感じました。心が見透かされているんじゃないかというくらい、人の気持ちに寄り添うのが上手く、生徒の立場に寄り添って相談に乗ってくれるのでとても頼りにさせてもらっていました。

山岡:授業するときは1人対30人くらいなのですが、その30人はそれぞれ個性を持った子なので、なるべく一人ひとりの個性を尊重したいと常に思っていました。そのためには、まずは自分自身がしっかりと相手のことを知ろうと意識していましたね。

沢田: 磯先生は行動力を大切にしていると感じました。ノリと勢いで生徒を突き動かしてくれる先生で、とにかくアクティブな印象です(笑) いろんなことに取り組む積極性でいつも生徒をリードしてくれていたからこそ、その背中を見て私自身も「一歩踏み出そう」という意識が芽生えたのだと思います。

磯:確かにノリと勢いは大切にしていましたね(笑) 真面目な話をすると、私の根底にある想いとして「自分の人生だからこそ自由に生きて、自分を愛せる人になってほしい」という想いがあり、行動力と積極性で生徒たちの視野を広げたいと考えていました。

司会:ありがとうございます。それでは続きまして、フェローの方に質問がきています。「学校で苦労したことはありましたか?」という質問ですが、いかがでしょうか?

山岡:学校で苦労したことは数え切れないくらい山ほどありますね(笑) 一番初めに苦労したのは、生徒との関係性づくりですね。私が入ってきたのは彼女たちが中学3年生の時で、みんなは受験を意識していましたし、前に居た先生がすごく楽しかったという話も聞いていたのでプレッシャーに感じていました。その壁を乗り越えるためには、やはり自分から積極的に生徒たちと関わるしかないと思い、最初の頃は授業が終わるたびにアンケートを取って、授業も常に試行錯誤しながらベストを尽くし続けました。生徒とともに教育現場を作り上げることで自然と生徒からも信頼されるようになり、日に日に良い関係性を築くことができました。

磯:私は関東の大学を出て、フェローとして大阪の中学校へ赴任しました。赴任した学校は、窓ガラスがよく割られたりするような状況で苦労話を挙げればキリがありません。どのように向き合い続けたかというと、「なぜ私は大阪に来たのか」という自分の使命を常に自らに問いただし、「生徒一人ひとりがちゃんとした人生を歩めるように」というゴールに向け、覚悟を決めて自分を奮い立たせていました。

司会:続いてフェローの方へ質問です。「フェローでの経験は今のキャリアでどう生かされていますか?」ということですが、いかがでしょうか?

山岡:フェローシップ・プログラムを通じて、教育現場における色んな課題を発見することができます。常に問題解決をしていかないとなかなか授業も聞いてもらえないし、生徒との関係もうまくいかないなど、色んな支障が出てしまいます。常に「今の自分ができることは何か」を考えながら取り組む姿勢が身につき、自分の存在意義を常に念頭に置いて行動するようになりました。今、私が務めている学校は私立なので、言ってしまえば適当にやっていてもある程度は授業は成り立つし、生徒との関係も作りやすい環境にあります。ただ、フェローとしての経験があるからこそもっと高みを目指す意識が根付いており、現状に甘えず積極的に学校全体を良くしていこうと活動しているところです。

磯: TFJを通じて、今を一生懸命に生きている子供たちと出会ったことで、私自身が「今後どう生きていきたいのか」を考えるキッカケとなり、キャリアというよりまずは人間として大きく成長できたと感じています。 どんな子供でも一人ひとりが本当に素晴らしい才能を持っている一方で、子どもに限らず大人も一人ひとりが異なるポテンシャルを持っています。現在は人事という立場から一人ひとりの才能を見出し、個性を活かすことができる組織づくりに取り組んでいるところです。

司会:ありがとうございます。それでは最後になりましたが、教え子のお二人に「今頑張っていること」、「これから頑張っていきたいこと」をフリップで書いて来ていただきました。それでは竹内さんから発表していただけますでしょうか?

竹内: 私はやりたいことがいっぱいありすぎて書ききれなかったので「たくさんの挑戦」という一言でまとめさせていただきました。不器用でもやりたいことを一つひとつ挑戦していきたいと思っていて、つい先月は語学力向上のために、コロナ禍のためオンライン留学という形でしたが、新しいチャレンジをしました。さまざまな経験を積んで、将来は教員として子どもたちに色んなことを教えられる先生になりたいと思っています。

沢田: 私の頑張っていきたいことは「楽しいお芝居を届ける!」ということです。演者である私自身、そして見ている方々全員が楽しめるお芝居をすること。そして、私のお芝居を通じて、誰かが何かを考えるキッカケになったり、誰かの人生のターニングポイントになったりなど、少しでも多くの方の心を動かし、人生を豊かにさせられれば嬉しいです。

司会:お二人とも素晴らしい目標を持って取り組まれているんですね。フェローが与えた変化がお二人の夢へ繋がっていき、今後ますます活躍してくれることでしょう。今日は皆様ありがとうございました。

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