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小学校の外国語教育はどう変わる?2020年から小学生が学ぶ「英語」

いよいよ来年2020年から小学校の外国語教育が変わることは、皆さんご存知かと思います。しかし、その内容をはっきり知らない方も多いのではないでしょうか?そこで今回は、これからの小学生が学ぶ英語の内容に焦点を当てながら、今後の小学校の外国語教育について説明していきます!

小学校外国語教育の何が変わるの?

小学校の外国語教育に関しては、2011年度から小学校5,6年生(高学年)において外国語活動が導入されています。その後、子どもたちの学習意欲や中学生の外国語教育への積極性に一定の成果が出ました。同時に、中学校への接続や小学校の高学年での発達段階に関する課題が見えたことから、2020年の学習指導要領の実施に伴って小学校では中学年から外国語活動を導入し、高学年においては英語を「教科」として教えることとなりました。

小学3,4年生の英語

初めて外国語に触れるとも考えられる小学3,4年生の外国語活動では、音声面を中心としてコミュニケーションの体験を通して行う学習が中心となります。これまでの小学校5,6年生に対する外国語活動の成果から、教科として学習する前に外国語によるコミュニケーション体験が有意義だと考えられていることもあり、小学5,6年生が今まで学んできた外国語活動に近い内容をこれからの小学3,4年生は学ぶことになります。
2020年からの小学3,4年生の外国語活動導入の意図は大きく分けて以下の2つです。

・「聞くこと」「話すこと」を中心とした外国語活動を通じて、外国語に慣れ親しむ
・コミュニケーションを想定した活動を通した外国語学習によって小学校高学年の「読むこと」「書くこと」に関する外国語学習に備え、さらに中学校への接続をスムーズにする

小学3,4年生の段階では、この世代の子どもが持つ柔軟な適応力を生かしてアルファベットや単語などの外国語の言葉を認識し、日本語と英語の音声の違いやそれぞれの特徴、語順の違いといった外国語の文構造等を意識できるようになってほしいという意図があります。これは音声中心の学習から中学校での文字を使った学習への接続が円滑でないという現在の課題の解決のためでもあります。そしてこれらの小学3,4年生の外国語活動を高学年以降の外国語学習の動機付けや、聞く力や話す力の育成につなげることがねらいとなっています。

このとき大事なのは知識の学習だけでなく体験を通して理解を深めることであり、外国語を学ぶための活動ではなく外国語を使って何かするという目的を持った活動を行うことです。体験や必然性を伴う言語活動によって、小学3,4年生の子どもたちが外国語で自ら思考、判断、表現できる力の素地を身に付けることを目指します。

小学5,6年生の英語

これまでの小学5,6年生に対する外国語活動から見えた課題の1つが、小学校の高学年が抽象的な思考力が高まる段階であり、コミュニケーションに基づいた学習だけでなく、より体系的な学習が求められることです。そこで小学5,6年生の外国語活動では、3,4年生の「聞くこと」、「話すこと」に加えて「読むこと」、「書くこと」にもより焦点を当てています。

小学5,6年生では、小学3,4年生で養う外国語で思考・判断・表現する力の素地を基礎のレベルにまで上げることが求められます。つまり、外国語の様々な働きや日本語との違いを気付くだけでなく、知識として理解して使えるようになることが目標です。具体的には、慣れ親しんだ単語の文字と音の関係を大まかに理解して読めるようになったり、慣れ親しんだ語彙や表現を他の視覚的な情報などを使い推測しながら読めたりできるようにすることを目指しています。

以下の2つの授業内容例からもわかるように、同じ「好きなものを伝える」という活動でも、求められる表現の目標がより高度で具体的になっています。

小学3年生の授業内容例:
【単元名】
I like blue.  すきなものをつたえよう 
【単元目標】
・多様な考え方があることや,外来語を通して英語の音声やリズムなど日本語との違いに気付き,色の言い方や,好きかどうかを尋ねたり答えたりする語や表現に慣れ親しむ。
・自分の好みを伝え合う。 
・相手に伝わるように工夫しながら自分の好みを紹介しようとする。
【主な活動例】
・自分の好きなものについて話したり,質問に答えたりする。

参考
小学校外国語活動・外国語 研修ガイドブック|文部科学省、第3学年 外国語活動 年間指導計画例〔案〕の一部を抜粋

小学6年生の授業内容例:
【単元名】
I like my town. 自分たちの町・地域
【単元目標】
・地域にどのようなものがあるかや欲しいか,地域のよさなどを表す表現が分かる。地域のよさや地域への願いが簡単な語句や基本的な表現で書かれた英語を書き写す。
・地域のよさや課題などについて話される英語を聞いて,その概要を捉えたり, 自分が住む地域について,よさや願いなど自分の考えや気持ちを伝え合う。
・ 地域のよさや地域への願いについて,簡単な語句や基本的な表現で書かれた英語を読んで意味が分かったり,自分が住む地域についてのよさや願いを,例を参考に簡単な語句や基本的な表現を用いて書いたりする。
・ 地域のよさなどについて,伝えようとしたり,書かれたものを読んだり書いたりしようする。
【主な活動例】
・自分たちの町について自分の考えを発表する。
・例を参考に語と語の区切りに注意して, 自分たちの町に関する基本的な表現を書き写す。

参考
小学校外国語活動・外国語 研修ガイドブック|文部科学省、第6学年 外国語 年間指導計画例〔案〕の一部を抜粋

さらに小学5,6年生の外国語では、外国語を通して言語やその背景にある文化に対する理解を深め、相手に配慮しながら、主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度幅広い言語に関する能力国際感覚の基盤を養うことも意図されています。

英語が「教科」になるとは?

小学5,6年生が「教科」として学ぶ英語について説明しましたが、そもそも「教科になる」とはどういうことなのか疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。

もともと小学校の英語は2002年に「総合学習の時間」を使って始まり、2011年に外国語活動が年間35コマ必修になりました。しかし外国語活動は中学校英語のように「教科」ではないため、教科書はなく、成績もつきません。活動をどのように行うかは学校や教員に任されてきました。つまり、小学5,6年生から外国語(英語)が教科化されるということは、教科書を用い、正式な教科として成績がつくということを意味します。

こちらの記事も重ねてご覧ください
小学校で英語を教えなきゃいけない!?英語教育の今とこれから

小学校外国語教育はなぜ変わるの?

小学校の時点では英語を学ぶ必要はないと考えている人や、英語を教科にするのは早いと考えている人も多くいるのではないかと思います。では、なぜ小学校の外国語教育は変わるのでしょうか?

中学校・高校英語とのつながり

小学校の外国語教育の変化は、中学校や高校で学ぶ英語にも深く関わっています。中学校・高校では小学校で学ぶ内容を生かし、より高度で複雑な内容に取り組むため、校種間の接続が円滑に行われることが非常に大事です。そのために小学校の時点で英語に慣れ親しみ、英語を学ぶ基礎を身に付けておくことで、中学校からの英語学習への苦手意識を取り払い、より効果的な学習ができるようになると考えられています。例えば、小学校外国語科の「話すこと[発表]」では「自分の考えや気持ちなど」を話すことを目標としていますが、中学校外国語科の「話すこと[発表]」では「事実や自分の考え、気持ちなど」や「考えたことや感じたこと、その理由など」を話すことが目標です。

小学校での学びを中学校の学びにつなげるために、文部科学省では小学校・中学校の教員間の連携も推奨されています。

国語との相互関係

より早い段階で外国語を学ぶようになることから、子どもたちの日本語学習への悪影響を不安に思っている方もいるかもしれません。しかし、子どもたちは外国語を学ぶことで日本語との比較ができ、「国語」に関する能力の向上にもつながると考えられているのです。

外国語を使う際は相手の言葉を注意深く聞いて思いを理解しようとしたり、自分の思いを伝えるために必死で考えて言葉にしてみたりと、母語のコミュニケーションではあまり意識されていない「言語でコミュニケーションを図る難しさや大切さ」を感じることができます。そのため子どもたちは早期からの英語教育を通じて、言語への興味・関心を高めることができ、日本語と外国語の違いや特徴に気付くからこそ、日本語とは違う外国語のリズムや発音をより楽しむことができると考えられています。

また、外国語教育で扱う題材で日本の文化や外国語の背景にある文化に触れることで、日本語や日本文化への理解を深めながら、外国語やその背景にある文化などへの異文化理解を推進する必要があるとされています。これは異なる社会や世界,他者との関わるためにも大事なことであり、だからこそ小学校の英語教育を充実させる必要があると考えられているのです。

小学校外国語教育が変わることによる影響

小学校外国語教育が大きく変わることにより、外国語を学ぶ子どもたちはもちろん、教員や学校現場に対する大きな影響があると考えられます。特に、外国語を教える側となる小学校教員には、様々な面で変化が求められることとなります。

小学校教員の負担

小学校教員の多くは、大学の教員養成課程にて外国語指導を学んでいません。そのため、教員自身も英語の指導に自信がない人が多くいます。しかし小学校の教員は英語力を向上させるだけでなく、外国語の授業数の増加にも対応しなければなりません。3,4年生は現在の5,6年生で行われている外国語活動の時間と同じ年間35時間を外国語活動の時間として過ごすようになり、これからの5,6年生の外国語の授業時数は年間70時間となります。

そのため小学校の教員は授業時数を調整して、増加した授業時間を確保しなければなりません。

文部科学省のホームページでは、1校時の前や給食の後の15分をモジュールとして、週2コマの45分授業で学んだ表現を反復により定着させる活動を行う時間として用いる例が参考として紹介されております。

(参照元:グローバル化に対応した英語教育改革実施計画|文部科学省

小学校教員はどうやって英語力を上げるの?

文部科学省では小学校教員の英語力向上のため、平成26年度より「英語教育推進リーダー」の養成を行っております。

(参照元:小学校外国語活動・外国語 研修ガイドブック|文部科学省

各都道府県・政令指定都市教育員会から推薦された教員は外部専門機関(ブリティッシュカウンシルなど)と連携した中央研修を受講し、研修修了後に「英語教育推進リーダー」として各地域で行われる中核教員研修の講師となります。そこで英語教育推進リーダーは中央研修内容の伝達・普及を行います。中核教員研修には各小学校から1名程度が参加し、自分自身の指導力の向上と所属校の他の教員に研修の内容を伝達・普及を行います。また、所属校において外国語教育に関する校内研修の計画・実施や授業公開、日常的な助言や支援を行うことも期待されています。

さらに、各都道府県で実施されている小学校教員の教員採用試験においても、外国語指導に関する問題や英語面接を設ける場合が増えております。

Teach For Japanの研修・サポート

Teach For Japanが実施するフェローシッププログラムを通して教育現場に赴任するフェロー(教員)候補生は、赴任前・赴任中に研修を受けることで様々な教育や社会問題に関する知識を身に付け、教育現場で生かしています。研修の多くは様々な企業・団体のリソースを使用しているため、フェローたちは研修で学んだ学校外のリソースを教室に取り入れることができるようになります。

外国語教育に関しても、研修で学んだ「ジョリーフォニックス」の導入や「ヤングアメリカンズ」の誘致などに取り組んできたフェローがいます。

ジョリーフォニックスを中学校英語の授業に取り入れたフェローの実践はこちらから
その他フェローのインタビュー記事はこちらから

まとめ

自分が学んできた英語とこれからの子どもたちが学ぶ英語が大きく変わっており、驚いている方も多いのではないでしょうか? 小学校の外国語教育の変化は、今後の国際化が進む社会を生きる子どもたちにとって重要です。子どもたちのためにも、大人として外国語教育の変化や課題をしっかり理解しておきましょう。

【フェロー経験者登壇】プログラム説明会はこちらから

参考
2 小学校における英語教育の目標と内容:文部科学省
新しい学習指導要領の方向性|小学校 英語|光村図書出版
【外国語活動・外国語編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説|文部科学省
小学校外国語活動・外国語研修ガイドブック|文部科学省
小学校は英語力重視で教員を採用|ベネッセ教育情報サイト
授業時数ってどうなるの?|光村図書出版
グローバル化に対応した英語教育改革実施計画|文部科学省

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