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フェローインタビュー fellowinterview

「小学校の先生になる」という想いを胸に、民間企業を経て教員へ。

小学生の頃から先生になることが夢だった池上さん。その想いを胸に、自分にできることを模索し続けて出会ったのがTeach For Japan(以下、TFJ)です。今回のインタビューでは、TFJに参加するまでのことや学校現場で感じたこと、教員5年目を迎えるいまの考えを伺わせて頂きました。

池上綾

※表は横にスライドできます。

赴任期間2015~2017(第3期フェロー)
赴任先福岡県
校種小学校赴任(5年生、4年生担任)
出身大学早稲田大学(教育学部)
教員免許中学校・高校教員免許(数学科)
経歴物流企業→Teach For Japan→東京都中学校教員
趣味ポストカード集め
好きな言葉他人皆我師
一言メモ例えるなら「青い炎」。見た目は涼しげでも、高い温度と持続性で教育を照らす。

4年間、社会人を経験して辿り着いた
「やっぱり学校の先生」になるという答え。

大学卒業後、企業に就職されていますが、
いつから教員になろうと思っていたのですか?

実は、ずっと小学校の先生になりたかったんです。だから、高校生までは「小学校の先生になるなら東京学藝大学」と思って進路も決めていました。でも、高校3年生になったころに、早稲田大学の推薦をもらえると先生に勧めてもらいました。ただ、当時の早稲田大学では小学校免許は取れませんでしたし、小学校の先生になろうと思っていたので、東京学藝大学に行く気持ちは変わりませんでした。家に帰って、なんとなく学校で先生に言われた話を両親にしたところ、教員でもある父親が「小学校の免許は通信で取ることもできるし、小学校の先生になるにしても自分の専門科目を持っておくのはいいんじゃないかな。数学楽しいんでしょ?」と珍しく口をはさんできました(笑)その時の父の言葉がスッと腑に落ちて、早稲田に進学することにしました。

大学に入学後は教職課程の勉強をしていました。しかし就職の時期を迎えた頃、民間企業への進路を考える多くの友人たちと話す中で、「このまま小学校の先生になったら、私、学校のことしか知らない!」とハッとしちゃいました。学校の先生になったときに、ゆくゆくは社会に出て行く子どもたちに、本当に必要な能力をわからないまま育ててしまうのではと思ったのです。そこで初めて、大学を卒業して先生になるのではなく、民間企業で働きたいという気持ちが芽生えました。それに、私は田舎育ちだったので、就職先として公務員になれれば「ばんざい!」という雰囲気がありました。身近な大人も学校の先生だったので、自分の選択肢を「学校の先生だけ」に狭めてしまっているのかもしれないとも思いました。

自分の視野を広げるためにも、学校の先生になることにこだわりすぎないで民間企業で働いてみようと決めました。もしそこでずっと働きたいと思ったら、それでいいと思っていました。視野を広げたいという気持があったので、会社選びで意識したのは、「いろんな職種の人がいるところ」でした。

大学に入学してから考え方が変化したんですね。
その後、どうしてTFJのフェローになろうと思ったのですか?

会社での仕事は楽しかったんですが、社会人3年目の頃から、やっぱり教員になりたいという気持が沸き起こってきました。さらに言うと、ただ教員になるのではなく、教育格差の課題に直面する子どもに対してアプローチしたいと思うようになっていました。母が役所で母子生活に関わる仕事をしていたのが課題意識を持つきっかけでした。

「大人は、役所に『助けてください』と言えるけれど、子どもは親の都合でしかいれない。そんな子どもたちを一番近くで救うことができるのは、教員かもしれない」と改めて「教員」という選択肢に辿り着きました。答えを出すまで1年間ほどモヤモヤしていましたが…(笑)

そんなタイミングで、家族がTFJの活動を教えてくれました。TFJに魅かれたのは、「教育格差を是正する」という想いを起点に立ち上げた団体であることです。自分の身近には同じ課題意識を持った人はいませんでしたが、TFJの説明会に行くと同じ課題意識を持った人たちが集まってきていました。その時に、「自分一人ではできないかもしれないけど、TFJでなら自分にも何かできるかもしれない!」とワクワクしたのと同時に、同じ想いを持った仲間がいる心強さを感じました。それから、すぐにTFJのフェロー(小学校教員)にエントリーをしました。

できない自分を受け入れてから吹っ切れることができた。

小学校での授業風景

ずっとなりたかった小学校の先生になって、感じたことを教えてください。

学校現場に行く前は、「すごいことをしでかしてやろう!」と思っていましたし、他の先生との違いを出さなければいけないという勝手な気負いもありました。でも、最初の段階で「当たり前のことすらなかなかできない」と痛感しました。授業の準備は、朝5時くらいに起きてやって、夜も10時くらいまではしていましたが、それでも追いつかないような日々でした。授業準備に十分時間をかけることができていないということもあり、自信を持った授業ができていなかったと思います。

子どもたちに対しては、自分らしく接しているつもりでしたが、「どう見えているのか」や「どう伝わっているのか」を意識できていなかったので、信頼関係を作ることに苦労しました。いま思えば、自分らしさの出し方が下手だったなと思います。

また、周りに心配をかけたくないという気持ちがあり、学校でも家でも自分の弱い部分を見せることができずに気持ちが張りつめている状態でした。その張りつめた気持ちが溢れたのが、1年目の3学期でした。実は、校長先生と指導教員の前で号泣してしまったんです。指導教員に優しい言葉をかけてもらったときに、これまで出すことができなかった弱い部分が溢れてしまって…。つぎの授業があるにも関わらず(笑)。でも、そのおかげで、できない自分を受け入れて吹っ切れることができました。

苦しい時期があったんですね。吹っ切れてからはどう変化しましたか?

気持ちが吹っ切れたことで、少しずつクラスの子どもたちとの信頼関係も築くことができ、クラスもまとまっていきました。また、2年目の同学年の先生は、年齢が近かったこともあり、お互いに支え合いながら色々なことを相談して進めていくことができたのも良かったと思います。ただ、同学年の先生が産休に入ってからは、産休代替の先生が見つからず、隣りのクラスには教務主任が入ったり、手の空いている先生が入ったりという状態でした。なので、2学期以降の学年行事は、自分1人で4年生の2クラスを引っ張っていく大変さがありました。

2年間を通して、当初思い描いていたことの半分ほどしかできなかったなという気持ちがあります。でも、どんなに苦しいことがあっても、学校に行きたくないと思ったことはありませんでした。やっぱり学校が好きなんだと思います。

2年間では何もできなかった。だからこそ、いまも教員。

生徒が描いた池上先生の似顔絵

いまはどんなことをされていますか?

結婚をきっかけに、東京都の中学校で数学の非常勤講師をしています。2年間担任をして感じた「一人ひとりの子どもに寄り添う難しさ」や「担任業務の多忙さ」を少しでも解消できるように、先生たちの仕事でできることは何でもしようと思いました。また、T2(Teacher 2)として一対一で子どもに寄り添うように心掛けて赴任しました。

いまは、担任ではない立場として、子どもたちから気軽に相談をされる存在として話を聞いたり、担任の先生がなかなか関わることができない不登校の子どもにも携わる時間を作ることができています。また、中学生は小学生よりも自分の考え方がしっかりしてくる分、叱られても論理的に納得して受け止めてもらえると思っています。なので、中学校は精神的な部分で子どもの成長に関わることができるなと実感しています。

小学校・中学校のどちらも経験して感じることがあれば教えてください。

中学校勤務3年目になって、やっぱり私は小学校で働きたいと思っています。きちんと記憶には残っていなくても、習慣やどんなものを大事にしたいかという感覚は、小学校の段階で形成されていると感じます。例えば、人の話を聞くことにしても、聞いているけれど、机に肘をついているというのも習慣的なもので「人を大事にしたいと思ったら、その聞き方じゃないぞ~」と思ったりします。小学校と中学校のどちらかが大事ということではなくて、私は小学校の時期に子どもに関わりたいと思っています。

そして、学校の先生同士が、協力して仕事ができるような環境になっていけばいいなと思っています。いまは数学専科という立場ですが、他教科の先生方にも「何かお手伝いできることはありませんか?」と声をかけ、先生同士で協力して仕事を進められるよう努めています。私も仕事をもらえて嬉しいし、他の先生方も楽になってWIN-WINになればいいなと思うんです。ただ、先生方は本当に忙しいですし、精神的にも体力的にも限界までがんばってしまうことが多いです。だからこそ、余裕を持って自由に動けるポジションの先生がもっと増えてもいいのかなとも思います。

(編集後記)
生徒が描いた似顔絵からもわかるように、優しい眼差しと柔らかい表情の池上さん。真摯に自分と向き合って、自分にできることに精一杯取り組む姿は、周りにいる人に心地よい温かさを感じさせてくれます。それは子どもも大人も関係なさそうです。

Teach For Japanは、学校の教室から世界を変えていきたいと考えています。多様な教育課題があるからこそ、学校へ情熱ある多様な人材を「教師」として送り出しています。教室で生まれたインパクトを、学校・地域・社会へと広げ、教育改革の一翼を担います。

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