教員採用試験をあえて受けずに、TFJフェローとして小学校現場へ。無縁の地で挑んだ、自分の人生を「主人公」として生きるための実践とこれから。
- 修了生インタビュー
今回は、Teach For Japan(以下、TFJ)のフェローシップ・プログラム第11期生である大久剛司さんをお迎えして、教員採用試験をあえて受けずに、TFJフェローを選んだ理由や今後の展望について、インタビュー形式でお伝えします。ぜひ最後までご覧ください。
大久剛司さん(Teach For Japanフェロー第11期生 / 小学校赴任)

和歌山大学教職大学院を卒業後、県内の公立中学校で非常勤講師(英語)として勤務。 同時期に、発達障害を持つ児童が通う放課後デイサービスで、学習支援とサッカー教室の運営にも携わった。 2023年4月よりTeach For Japanフェロー第11期生として宮崎県えびの市の公立小学校に赴任。 教室では「自分で決断する」を軸に、外国語専科・学級担任として『学び合い』の授業を実践した。 2年間の教員生活終了後、石川県輪島市地域おこし協力隊に参加。 現在は高校生の探究学習をサポートしながら、公営塾で教科指導をしている。 「物語の主人公として、自分の心を躍らせる世界」の実現に向けて、生き方を探究するコーチ活動も行う。
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中3で教員になることを決意、大学院まで教育について学ぶ
-フェローシップ・プログラムに参加する前のキャリアと、その道を選ばれた背景について教えて下さい
大久さん:中学校3年生の時から先生になりたいと思っていました。大学は教育学部に進学して大学院にもいきました。中学校の非常勤では育児短時間勤務で午前中だけお仕事をする先生の補充だったので、毎日午後から出勤していました。収入面では問題はなかったのですが、要望をいただいて、放課後デイサービスの学習支援とサッカーを通して運動をする活動も担っていました。
-教師になりたいと思ったきっかけを教えて下さい。
大久さん:硬式テニス部の顧問の先生と、中学3年生の時の担任の先生、2人の影響を受けました。2人ともどんな生徒に対しても子どもとしてではなく1人の人として接して下さいました。「いいな、こんな風になりたいな」と思ったのがきっかけです。
大学院で具体的に教育に学びながら小中の教員免許を取得
-教育学部で大学院まで学んだ理由を教えて下さい。
大久さん:理由は論文や研究が好きだったことと、学部の4年間で学んだものの教育のイメージがまだ持てなかったことです。
-大学院の2年間は、どのようなことを学びましたか?
大久さん:教育についてより具体的に学びました。複数の教科書の比較や、子どもたちの知識の定着・学びのためのヒントの出し方、どうするのが効果的なのかを話し合い実習でそれを試すということもありました。それぞれテーマを決めて実践をしていったのですが、私の場合は、ジグソー法というグループワークを中心とした教育方法が研究対象でしたので、大学院で模擬授業をしてから実習を行いました。また教員免許は、小学校と中学校の英語を取得しました。
社会人として活躍する幅広い仲間と出会えた
-TFJのプログラムに参加しようと思ったきっかけを教えて下さい。
大久さん:理由は2つあります。1つ目は、大学院のときにTFJのキャンパスアンバサダーに参加していて、全国の教育に対する熱量が高いメンバーとつながりを持てたのがとても良かったなと思っていました。TFJのプログラムでは教育について興味のある社会人として活躍している人に出会えるのがすごく魅力的だなと思いました。2つ目は、私は大阪出身で大学は和歌山なのですが、教員採用試験を受けようと思って教育方針を見てみた時にピンときませんでした。TFJのフェローは2年間という期間も決まっていますし、どこかにいくのも面白いなと思いました。
-TFJのプログラムに参加していかがでしたか?
大久さん:いろいろな方の教育に対する考え方が聞けて、学生時代に聞いたことのない意見でとても勉強になりました。教材を作る会社で働いていた方や子育て中の方の保護者目線の意見も聞けました。そんないろいろなメンバーとの活動がとても楽しかったです。
-赴任前研修で印象的だったポイントを教えて下さい。
大久さん:模擬授業の「目標に対してゴールから逆算していく」という考え方です。本当にそんなにうまくいくものなのか半信半疑でした。それを時間をとってしっかりと考える事ができたのが良かったです。
-教育学部とTFJの学びに違いはありましたか?
大久さん:意見の幅が広いと思いました。大学のゼミでは、協同学習が授業のテーマで、グループワーク中心の授業をどうするかを話し合っていました。一方フェローの研修では、その前提から疑問を持ち話し合うことができました。
「自分から質問したいこと、助けてほしいことを発信できるように」
-赴任する時点で、どのようなビジョンを持って行かれましたか?
大久さん:「自分から質問したいこと、助けてほしいことを発信できるように」ということです。自分もそうありたいと思っていましたし、子どもにも伝えたいと思っていました。
-赴任の詳細を教えて下さい。
大久さん:私は宮崎県えびの市に赴任しました。えびの市は、宮崎県の南西端に位置し、熊本県・鹿児島県と県境を接する自然豊かなまちです。1年目は外国語専科で3・4年生の外国語活動、5・6年生の外国語を担当しました。週に3日が赴任校、週に2日は小規模校で授業をしていました。2年目は5年生の担任でした。また2年間を通じて、ICTやタブレット・教師のデジタル教科書の設定などの管理の担当をしました。元々得意ではありましたが、赴任したときに「得意って聞いてるよ」といわれ、担当することになりました。
「自分で決めてもらう」状況を沢山作りました
-赴任中、力を入れた取組みについて教えて下さい。
大久さん:学ぶことから生活のことまで幅広く、子どもに「自分で決めてもらう」状況をできるだけ沢山つくりました。例えば、給食を自分の食べる分は自分で決める、図工で描いた絵を貼る台紙の画用紙の色を自分で選ぶなどです。算数の授業では、制限時間内であれば話をしてもいいから教室内を自由に動いてもらい、どのように学ぶのかを自分で考えてもらいました。自分で考えるのか、友達に聞きに行くのか、先生に聞きに来るのか、みんな思い思いに動いていました。
-「自分で決めること」を大事にした理由は何ですか?
大久さん:困ったときに自分で聞けるようになることも大切だと考えていました。また、1クラスに児童が24人、特別支援の子が2人いましたので、彼らにとって私の説明の仕方が一番いいとは限りません。1年後には新しい先生に変わることが決まっていました。「お友達同士は一緒に次の学年も進んでいくから、一緒に学べたらいいよね」という話をしたら、子どもたちも納得していました。

半信半疑だった子たちも積極的に動けるように
-子どもたち自身の変化や成長はありましたか?
大久さん:はい、目に見えて成長していました。はじめの頃は半信半疑で友達に聞きに行ってもいい時間でも、みんな聞きに行きませんでした。7月頃から少しずつ動き出すようになり、3学期には指示をしなくてもタイマーが鳴ったらスタートして、2回目が鳴ったらみんなが帰ってくるようになっていました。そんな中で子どもたちの成長として感じたことは、自分から聞きに行ける子は、テストの点数や成績も格段に上がってきました。「聞きに行くのはいいことだね」「質問を受けて説明をしてくれる人にも支えられたよね」という話もしました。そのような話をしてから、さらに積極的に聞きに行けるようになったと思います。

-TFJの期間中はグループチャンネルでご自身の取組みを発信されていました。
大久さん:はい、全部で100個くらいは発信したと思います。11期の中に発信しているメンバーが2人いたのですが、その2人がやっているのを見て始めました。私は普段から日記を書いているのですが、それに一手間加わるくらいであまり苦ではありませんでした。反応もあって、会話も生まれていたので良かったです。
-大変だったこと、悩んだことがあれば教えて下さい。
大久さん:勉強が嫌いな子が数人いて、どうやって対応すればいいのか、とても大変でした。聞きに行く時間にやる気を出してもらえるように工夫したり、宿題のプリントを別にして低学年に戻って学習をしたりしました。5年生の勉強に対しては、独自の目標を決めて進めていました。それぞれ大変ではありましたが、やりきってくれたと思っています。
探究の学習に深く関わりたい想いで地域おこし協力隊の道へ
-なぜ今のキャリア(地域おこし協力隊)を選ばれたのか教えて下さい。
大久さん:フェローとしての2年間で最も興味があり且つ大変だったのが、探究の学習(小学校では総合の学習)です。小学校の場合、進め方をしっかり作らないと子どもたちが混乱してしまうため、自由にできないもどかしさがありました。高校なら自由度は広がりますし、場所によっては企業とチームを組んで商品の企画をしたり、観光スポットのPRのために動画を作ってみるなどといった応用も出てきます。たまたま石川県の輪島市で探究に力を入れている高校のスタッフを募集していました。業務には公営塾のスタッフ業務も含まれていますが、高校生1人1人の人生を考えたとき進路にも探究が活きると思って決めました。
-探究の学習に深く関わりたいと思った理由を教えて下さい。
大久さん:私自身は親の意見を聞くタイプでした。大学で学生寮で暮らし始めて、フェローも含め自分で興味のあるものに参加しているうちに、人に言われてやるのではなく自分で興味のあることをすること、自分の価値観として決めることはとても重要だと思うようになりました。子どもたちにも「自分の人生だから自分で決める、他人にどう言われてもやりたいことをやった方がいいよ」と伝えていました。それに深く関わるのが「探究の学習」であり、言い換えると、自分の人生を「主人公」として生きるということだと思います。
-これからの展望を教えて下さい。
大久さん:「探究」を専門分野として関わりたいと思っています。人の生き方の探究にも興味があるので、コーチングや研修の会社も1つの選択肢です。
-TFJへの応募を考えている方に一言お願いします。
大久さん:TFJでの2年間は本当に楽しかったという一言に尽きます。大変なこともありますが、子どもと関わる仕事だからこその感動もあります。どこにいてもフェローの仲間とはオンラインでいつでもつながれて、みんなで2年間支え合えたのもすごくいい思い出です。2年間知らないところに行くハードルは高いとは思いますが、知らないからこそ感動できる場面や、初めての土地だからこそ見える景色もあると思います。是非一歩踏み出してみて下さい。
Q&A
-自分たちで時間を決めて質問をする活動は、どこからヒントを得たのですか?
大久さん:大学の時に勉強しました。教育実習の時にもやったことがあり、そのときはタイマーがなかったので時間が過ぎることがありました。その経験があったので、タイマーを活用しました。
-クラス全員を見ないといけない中、勉強が苦手な子に対応する時間をどのように捻出していたのですか?
大久さん:みんなが聞きに行く時間を有効に使っていました。できる子は子どもたち同士で話をして解決をして、苦手な子はこちらに来てくれました。それで本当に全員見てあげられていたかはわかりませんが、勉強が苦手な子を集中的に見ることはできました。
まとめ
現在は地域おこし協力隊として新たな土地で取り組まれている大久さんにお話を伺いました。大久さんは、学生時代から教育に対して真摯に取り組み続け、フェローの2年間は見知らぬ土地で仲間と繋がりながら試行錯誤されていました。そんな甲斐あって、修了後はご自身のやりたい方向性が定まり、新たな道に進まれています。
これからのご活躍、期待しています。
大久さん、ありがとうございました。
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