 
					北先生に出会ったことで何が変わったのか?生徒の視点から見た教育とは
- 修了生インタビュー
本記事では、Teach For Japan(以下、TFJ)のフェローシップ・プログラムの第6期生として教員になり、現在は一般社団法人Local Educationの代表理事も務める北敢さんと、北さんが小学校で担任をした2名の生徒さんに、どんな思いでどんな取り組みをしてきたのか、質問形式でお答えいただきます。ぜひ最後までご覧下さい。
▼【前編】「理想を実現するため何を行っているのか?北さんの考える教育とは」はこちら
https://teachforjapan.org/journal/26983/

北敢さん(Teach For Japan フェロー第6期生/小学校赴任)
大学卒業後、三井不動産、インテリジェンス(現パーソルキャリア)を経て、2018年よりTFJに第6期生として参画。福岡県内の小学校に3年間勤務した後、現在は、福岡県立西田川高等学校で教員を務める。学外の活動で地域のキャリア教育のコーディネーターを務める他、学校と地域を繋げるために学校内に留まらず一般社団法人Local Educationを設立し、代表理事も務める。教育で地域を変えるため、日々全力疾走!
<ゲスト>
和多初音さん(高校2年生)

荒川結晶さん(高校2年生)

▼YouTubeにて動画でもご視聴いただけます!
ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。
荒川さん:東鷹高校2年生の荒川結晶です。今とても緊張しています。よろしくお願いします。
和多さん:西田川高校2年生の和多初音です。今はどのような方がご覧になっているのかわからないので、とても緊張しています。よろしくお願いします。
ー北先生の当時(5年生・6年生の担任になった時)の印象を教えてください。
荒川さん:初めの自己紹介が印象に残っています。「千葉から来た、北から来た北先生」と言われて、都会の人なんだなという印象がありました。初めての遠くの人との関わりでした。いきなり世界が広がりました。
和多さん:自己紹介の時に、「5年生は大人として見ます」ということを言われて、結構堅い人なのかなと思いました。一番初めにもらった学級通信にも、そのように書いていました。
ー5年生に出会って、6年生で卒業するまでほぼ毎日学校で顔を合わせたわけですが、印象は変わりましたか?
和多さん:色々考えている人だなと感じるようになりました。価値語だったり理想の町のイベントを計画してくれたり、生徒のために色々考えてくれているんだなと思いました。
荒川さん:遠くの人は違うのかなと思っていましたが、意外と福岡に住んでいる人とかわらないなと思いました。
ー小学校5・6年生の2年間の中で、覚えているエピソードを教えてください。
荒川さん:私は小さいころから親や身内から、変わり者だねと言われていて、嫌だなと感じていました。それを先生に話した時に、「変わり者って誉め言葉やん。俺言われて嬉しいもん」と言われて、変わり者ということは周りとは違う視点があるということなんだと教えてもらいました。そういう考え方があるんだなと気づいたことが、一番印象に残っています。言われたときはよく分かりませんでしたが、「変わり者だけど将来に役に立つよね」などほめてもらえているんだなと感じることも出てきて、少しずつ理解できてきました。はじめからけなされていたのではなく、マイナスに受け取ってしまっていたことがプラスに受け取れるようになってきたのかもしれません。
和多さん:イベントについてよく覚えています。6年生はほぼコロナ禍で制限されていました。そのような中でも自分たちにできることをやろうということで、工夫して運動会をしました。他にも、この地域には雪が降らないので紙吹雪をしてみたり、できない中でも工夫してできるようにするという考え方を教えてもらえたことをとても覚えています。自分たちもできることはやりたいと思っていたし、そこに北先生も答えてくれていた感じです。
北先生:運動会は5月の予定で休校が解けた直後だったので、今年はできないねという話になっていました。他の学校でもいろいろな行事が中止になる中で、9月の修学旅行も中止になるかもしれませんでした。このまま何もしない6年生ってどうなんだろう、どうにかして何かできないかということを他の先生とも話していました。その中で生徒たちにも同様にやりたいという想いがあり、声をあげてくれていたので、どうにかして実現しようという方向で色々と考えました。修学旅行では、例えばバスを多めに借りて交互に座ろう、レストランではなくバスの中で黙食をしようなど。それでも行くことが大切だということで、工夫をしました。運動会も5月は中止になりましたが、11月に6年生だけの運動会をすることにして、先生主体ではなく保護者や生徒も一緒に考え、実現しました。
和多さん:色んなイベントを通じて、大人って案外子どものために動いてくれるんだなと思いました。
-6年生の時「理想の街田川」に取り組んだと思いますが、どのような印象でしたか?
荒川さん:作っているときに全部で12グループぐらいありましたが、現実的に考えるグループと、幻のような理想の街を作っているグループに大きく分かれました。私たちは現実的な町を作ったのですが、表彰で選ばれたのは幻のような街でした。街の中心に噴水があって周りに家がある街で、そんな発想もあるんだと気づかされた反面、何でこれが選ばれたの?という気持ちがありました。私たちは、既にある商店街を土台にあったらいいなというような施設をたくさん作りました。
和多さん:私は駅前の交差点を題材に、高齢者施設を作って空き地を公園にして、というような街を作りました。
北先生:二人は当時から中心的に動いてくれていました。思い入れがあった分、選ばれなかったのは悔しかったと思います。これは頑張ったから選ばれるというものではなかったので、頑張ったけど選ばれなかったというのも経験ですね。担任から現実的な方にも何か表彰をしてもよかったよねという話はありました。

-今たがわPlannersに属して活動されているということですが、参加の理由を教えてください。
和多さん:当時は理想の街田川で選ばれなかった悔しい気持ちが大きく、田川の町づくりの話になると思い出していました。たがわPlannersの話を聞いた時はその優勝したチームを見返してやりたい、自分の理想の街を実現してやるぞという想いで入りました。今は見返してやろうという気持ちより、街の中にいる人との関わりが多いので、それを大切にしたいと考えています。
荒川さん:北先生に誘って頂いたことがきっかけです。その時はあまり考えずとりあえず入りました。活動を通して、人と関わることが増えて、素敵だなと思っています。学校の先生にもたがわPlannersの人がいて、学校でその先生と関わって学校の中で話すのが楽しかったり、関わりがたくさんある街はいいなと思って活動しています。
-今後やっていきたいことはありますか?
和多さん:西田川の在校生年次で、田川探究がこれから始まっていく段階です。たがわPlannersで学んだこと、気づいたことを元に、まだ経験したことのない人のサポートもしながら田川探究を進めていきたいと考えています。田川に住んでいると場所の良さは知っているけど、人のよさには気づいていない人も多いと思います。そこを伝えていきたいです。高校を卒業した後も、何らかの形で田川に関わっていきたいです。
荒川さん:私の将来やりたいことは、人と関わるなかで教えたいし教えられたい、お互いに成長し合える環境の仕事につきたいです。そう思ったのは、たがわPlannersとして愛媛に研修に行った時にプレゼンテーションをしたのですが、経営者さんが高校生に対して「勉強になりました」と言ってくださって、年齢を問わず学べるのっていいなと思いました。そんなことをもっと頑張りたいなと思いました。
-北先生と出会って、影響を受けた事、変わったことがあれば教えてください。
荒川さん:学校やたがわPlannersのグループワークで、北先生の目線で考えてみようというのをやっています。何でこれはこうなるの?と言って、北先生の真似をしているのですが、そういう考え方がぱっとできるようになっています。
和多さん:先生を怒らせてしまった時、反省して謝ると思います。今までだったらそこで終わると思うのですが、先生は小学校の時から、そのためにどうするのか、今何をすべきかを深堀していました。それは今になっても癖になっていて役立っていると思います。自分のやったことに責任を持つというのもありますし、怒られたときに限らず、企画をする時にも一つで終わらせるのではなく、いろいろと深堀しています。
-北先生自身、大切にしている指針はありますか?
北:振り返りは大事だなと思っていて、振り返りの質を高めていくことは生きていく上でも大切だと考えています。自分で決定したからこそ、何がダメだったのかを考え、更に自分で決定していくという繰り返しだと思います。生徒たちは嫌だったかもしれませんが、6年生の時には、毎日自分で目標を立て毎日振り返りをするというのをやっていました。
和多さん:当時は大変でしたが、今になって振り返ると役に立っているなと感じています。
北先生:この前たがわPlannersでイベントをしたときに、もう一人私の教え子をいれた3人だったのですが、私がいなくてもほぼ3人できちんと振り返りができていました。私が課題だったなと感じていたことが、ほぼ本人たちの口からでてきたので、すごいなと思いました。高校生でここまで自分たちのことを振り返れる子はいないだろうし、それが習慣づいているなと思いました。自分自身を見つめる力は、どの年代でも大切だと思います。

-5年生で担任をして、5年後に高校2年生になってからも関わっているということですが、二人が成長したと思うことはありますか?
北先生:未だに関わりを持ってくれている二人に対しては、とても嬉しい気持ちです。長いスパンで人の成長に触れ合うことは、教師をやっててもあまりないことだと思います。それを私は体験できているので、嬉しいですね。当時は叱っていたこともありますし、二人からしたらストレスになることもあったかもしれませんが、そこまでやったのは間違いじゃなかったと思えました。
2人の印象は変わりませんが、色んなことがめちゃくちゃできるようになっているなと思っています。大人顔負けというか、本当に高校生の中で飛びぬけていると思います。それは小学校の2年間でかかわったからというより、その後の「自分で考える」思考が大きいと思います。まさに私が目指しているところです。もし先生がいなくなってもこれを続けていく、先生がいるからやるんじゃないんだよ、とずっと伝えていました。
質疑応答
Q:小学生に好かれる先生と高校生に好かれる先生は違いますか?
2人:違うと思います。
荒川さん:小学生は、生徒と同じ目線で一緒に遊んでくれる先生、やりたいっていったことをさせてくれる先生がいいと思います。
和多さん:高校生は、同じ目線で話してくれる先生、悩み相談をしても友達のような感じで話してくれて、先生ぶって偉そうにするのではない先生の周りに人が集まっていると思います。
Q:田川で活動する上で壁に感じることはありますか?
北先生:私は他の地域では活動をしたことがないので、田川だから感じている壁かどうかはわかりませんが、どうしても行政の力が必要だったり、不登校や学力の問題だったりする時は、何かを抜本的に変える必要があることもあります。その点は、スピード感を持ってなかなか動けないと感じています。ただ、行政のせいにしてしまうこともできますが、自分たちから変えようと思うと変えられる部分もあると思います。
例えば去年、たがわ教育フェスというイベントを開いて、イベントの内容をまとめ、田川市の教育長に提言をしました。市民の声を行政に届けるということを市民の立場からやることはできると思っています。都度壁を感じていますが、どう乗り越えるかを考え、進めています。
Q:なぜ継続して田川に関わっていこうと思われたのですか?
北先生:東京に居た時に、自分の役割は何だろうと迷うことが多々ありました。田川にきて、5万人弱の町にいて、自分が動くことで生徒たちが町を変えていこうとしている姿を見て、自分がここに存在していることで田川が変わっていくことがあるんじゃないか、存在意義があるんじゃないかなと考え、今もここにいます。
Q:北先生が担任ではなかったら自分はどうなっていたと思いますか?
2人:変わっていたと思います。
和多さん:深堀する考え方をしていなかったと思います。地域の活動に参加していることもなかったと思います。将来田川で何かをしたいという想いも生まれていないと思います。
Q:それぞれがやり活動をする上で、どうしてもお金がかかる場合どうしますか?
荒川さん:たがわPlannersの活動の中で、大人の方が助成金の活用について教えてくれたことがありました。それを知っているので、どうにかしてお金を得られる方法を考えます。
北先生:経営者の方が、高校生向けにお金の稼ぎ方に関する講座を開いてくれたことがあります。助成金もそうですし、ちゃんとビジネスをする、誰かにお願いする、投資をしてもらう等。そのような手段を知っているので、実現に向けて何かしらの方法を考えると思います。
-最後に、お二人が北先生に出会ったことで変化したということですが、教育は自分の中でどのような意味や価値があると思いますか?
和多さん:教育とは、勉強を教えるのではなく、考え方を学ぶことだと思っています。
荒川さん:全く同じです。数学とか国語とかは、将来いらないかもしれないですが、考え方や人間性は大事だと思います。
北先生:教育には責任があります。二人はプラスの変化を言ってくれましたが、もしかしたら私に出会わなかったら別の可能性があったかもしれません。私に出会ってしまったことが、ネガティブに働いている子もいるかもしれません。一方で、どういう人にどういうタイミングで出会うかはとても重要だと思っています。私に今できることは、私が全力で楽しんだり、生きている姿を見せて、そういう大人がたくさんいることを子どもたちに示すことだと思います。つまり、算数や国語ではなく「考え方」を伝えることだと思っています。

まとめ
TFJのフェローシップ・プログラムを受け、一教師としてだけでなく、地域の発展のために様々な活動を行う北さん、そして2人の生徒さんに話を伺いました。「先生との出会いや教育で人生が変わる」ということを、大げさではなく実感させてくれたインタビューでした。
これからも、北先生、関わる生徒さん、そして田川の町の更なる発展を期待しています。
▼【前編】「理想を実現するため何を行っているのか?北さんの考える教育とは」はこちら
https://teachforjapan.org/journal/26983/
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