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義務教育学校とは?小中一貫教育の新しいカタチ

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義務教育学校は、一人の校長と一つの教職員組織が9年間の学校教育目標を決め、一貫した教育を行う新たな学校種です。修業年限は9年間で、小中学校の学習指導要領を準用した教育課程を実施します。そもそもなぜ義務教育学校が制度化されたのか?また、義務教育学校の可能性と懸念点など、実践校の事例も交えながらご紹介します。

義務教育学校とは?

義務教育学校は、学校教育制度の多様化と弾力化を推進するため、小学校から中学校までの義務教育を一貫して行うことを趣旨として2016年から制度化された新たな学校種です。

〈特徴〉
組織  :一人の校長
     一つの教職員組織
     教員は小学校と中学校の免許状を併有が原則(当面は併有しなくても勤務可能)
修業年限:9年
教育課程:9年間の教育目標の設定、小中学校の学習指導要領を準用

文部科学省の統計によると、2016年に22の義務教育学校の開校以来、増え続け、2020年には126校が開校。そこで学ぶ児童生徒は約5万人にのぼります。

令和2年度学校基本調査(確定値)の公表について|文部科学省,P1, 令和元年度学校基本調査(確定値)の公表について|文部科学省,P1, 平成30年度学校基本調査(確定値)の公表について|文部科学省,P1, 平成29年度学校基本調査(確定値)の公表について|文部科学省,P1, 平成28年度学校基本調査(確定値)の公表について|文部科学省,P1, をもとに筆者作成)

義務教育学校制度化の背景

そもそも義務教育学校の制度化を理解するには、その大枠である小中一貫教育が推進される背景を知る必要があります。
文部科学省によると、小中一貫教育の定義は次の通りです。

小中連携教育のうち、小・中学校が目指す子供像を共有し、9年間を通じた教育課程を編成し、系統的な教育を目指す教育

(引用元:小中一貫した教育課程の編成・実施に関する手引|文部科学省,P17

では、なぜ小中一貫教育が推進されているのでしょうか。ここでは、5つの背景と義務教育学校を含めた小中一貫教育の3つのカタチをご紹介します。

小中一貫教育が取り組まれている5つの背景

小中一貫教育が推進されるようになったのは、小中学校で一貫性のある教育を行うことの重要性が見出されたことはもちろんですが、全国各地の自治体によって状況は様々であることから、取り組むに至る背景は多様です。また、複数の背景が絡み合っていることもあります。ここでは、2014年12月22日の中央教育審議会答申で議論された5つの背景をご紹介します。

・教育基本法、学校教育法の改正による義務教育の目的・目標規定の新設
・近年の教育内容の量的・質的充実への対応
・児童生徒の発達の早期化等に関わる現象
・中学校進学時の不登校、いじめ等の急増など、「中1ギャップ」への対応
・少子化等に伴う学校の社会性育成機能の強化の必要性

ここからは、それぞれの背景を詳しく説明していきます。

1. 教育基本法、学校教育法の改正による義務教育の目的・目標規定の新設

2006年に改定された教育基本法には、新たに義務教育の目的が明記されました。

義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。

(引用:教育基本法第五条 2|文部科学省

義務教育の目的が明確化したことで、小学校低学年の教員は「中学校を卒業するときの姿をイメージしながら日々の教育活動を行っているのか?」中学校の教員は「小学校のどの段階で何を学んで、何につまずいて今の姿があるのかを知ったうえで日々の教育活動を行っているのか?」という問いに向き合い、アプローチしていく重要性が増してきたと考えられます。

このような問いに向き合うことが、これまで学校段階が分けられていた小中学校がお互いに協力し、9年間の系統性・連続性に配慮した教育に取り組むきっかけとなりました。

2. 近年の教育内容の量的・質的充実への対応

2008年に告示された学習指導要領は、教科によって授業時数が1割程度増加し、教育内容の量も質も充実が図られました。

このような学習内容の変化に対応するために、小中学校の教員が連携し、中学校教員が小学校高学年に乗り入れ授業を実施をするなど、専門的な指導の充実や長期的な視点からの(充実した学習指導)教育実践への取り組みの重要性が増しています。

3. 児童生徒の発達の早期化等に関わる現象

6ー3制が導入された戦後と2013年を比べると、児童生徒の身長や体重の伸びの大きい時期は2年程度早まっており、女子の平均初潮年齢も早まっています。ここから、思春期の到来が早まっているのではないかという指摘があります。

また、自己肯定感や自尊感情に関する質問に対して、小学校高学年から急に否定的な回答が多くなるという調査結果や、不登校や長期欠席についても休み始めるのが小学校段階からという分析もあります。

これらを踏まえ、児童生徒の成長段階に適切に対応するという観点から、多様な教職員が児童生徒に関わることや教科指導における専門性の強化が求められ、従来の6ー3制の枠組みに縛られない柔軟な区切りを設けて指導体制を整えることの有効性が指摘されています。

4. 中学校進学時の不登校、いじめ等の急増など、「中1ギャップ」への対応

一般的に「中1ギャップ」は、小中学校間に存在する差異を指します。小学校6年生から中学校1年生かけ、不登校児童生徒数、いじめ認知件数、暴力行為の加害児童生徒数が大幅に増える特徴があります。

さらに、学習面でも「学校の楽しさ」「教科や活動の時間の好き嫌い」についての肯定的回答が低下傾向にあることや「勉強する内容が急に難しくなった」「量が増えて戸惑った」と感じる生徒が多いことも明らかになっています。

〈小中学校間に存在する差異の例〉

小中一貫した教育課程の編成・実施に関する手引|文部科学省,P12 をもとに筆者作成)

環境が変化することの意義や教育効果を理解しつつも、児童生徒の発達や身体的・精神的な負担も考慮した意図的な移行期間を教育課程に組み込むなどの工夫が小中一貫教育の取り組みにつながっています。

5. 少子化等に伴う学校の社会性育成機能の強化の必要性

地域コミュニティの衰退、三世代同居の減少、共働き世代やひとり親家庭の増加など様々な社会的背景により、家庭や地域における子どもの社会性育成機能が弱まっているとの指摘があります。

こうした状況の中、小中一貫教育を進めることで、多様な異学年交流の活発化やより多くの教員が児童生徒に関わる体制の確保などを実現し、学校を社会性育成の場として機能させることへの期待が高まっています。

小中一貫教育を進める3つのカタチ

小中一貫教育には、①義務教育学校と小中一貫型小学校・中学校があります。小中一貫型小学校・中学校は、さらに②併設型小学校・中学校と③連携型小学校・中学校に分かれます。ここでは、それぞれの特徴と設置イメージをご紹介します。

①義務教育学校

・一人の校長(副校長1人)
・一つの教職員組織
・教員は小学校と中学校の免許状を併有が原則(当面は併有しなくても勤務可能)
・修業年限9年(前期課程6年・後期課程3年)

※施設の一体・分離を問わず設置可能

②併設型小学校・中学校

・小・中学校の設置者が同じ
・校長は各学校に一人
・教員は各学校に対応した免許を保有
・修業年限は小・中学校と同じ

※施設の一体・分離を問わず設置可能
※施設一体型のイメージ図は、小学校と中学校が渡り廊下で繋がっている

③連携型小学校・中学校

・小・中学校の設置者が複数
・校長は各学校に一人
・教員は各学校に対応した免許を保有
・修業年限は小・中学校と同じ

※施設の一体・分離を問わず設置可能

(参照:小中一貫した教育課程の編成・実施に関する手引|文部科学省,P17, 「小中一貫教育リーフレット」|兵庫県, 小中一貫教育に関する資料|岡山県教育庁義務教育課

義務教育学校の可能性と懸念点

小中一貫教育の新しい学校種である義務教育学校にはどのような可能性と懸念点があるのでしょうか。ここでは、それぞれ3つずつご紹介します。(あくまで自治体や児童生徒の実態によりますので参考程度にご覧ください。)

3つの可能性

児童生徒の身体的・心理的発達に適した義務教育が可能

一人の校長、一つの教職員組織で、義務教育9年間の学校教育目標を設定することで、目の前の児童生徒に適切で、系統性・連続性を意識した教育課程の作成が可能になります。また、教育課程上の特例を設置者の判断で実施可能であるため、一貫教育の軸となる新教科等の創設や学年段階間・学校段階間での指導内容の入れ替えなどの工夫も柔軟に行うことができます。

精神的な発達や社会性の育成

1年生から9年生までの児童生徒の異学年交流を行うことが容易になり、規範意識や憧れの気持などの醸成が期待されます。

中1ギャップの緩和・解消と継続的な児童生徒への関り

教育課程を柔軟に変化・創造することで、小学校から中学校への意図的な移行期間を設け、中1ギャップが緩和・解消される効果が期待されます。また、9年間の一貫した教育課程を編成することで、教職員間での情報交換の活発になり、児童生徒の個性に応じた丁寧で継続的な関りが可能になります。

3つの懸念点

中高一貫教育との整合性

一つの自治体の中に小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校(中高一貫教育)が併存することになります。また、中高一貫教育が盛んな地域では、高等教育への接続が重視されている傾向が強いため、義務教育学校が根付きにくいと考えられます。

リーダーシップや自主性を養う機会の減少

既存の小学校では、5,6年生になると学校行事などにおいて重要な役割を担うことが多くなり、それらはリーダーシップや自主性が養われる機会となっています。しかし、義務教育学校では5,6年生は9年間の中で真ん中の学年となり、リーダーシップや自主性が発揮される機会が減少します。また、小学校の卒業式という区切りがなくなることで、成長を感じる機会が減少し、中学校への新鮮さが弱まるとの指摘があります。

学年数・学級数の増加による施設利用頻度の減少

一体型施設の義務教育学校では、学年数・学級数が増加することが考えられます。そのため、体育館や運動場、プールなどの学校施設の利用スケジュール調整が難しくなり、結果的に利用頻度が減少する可能性があります。

他にも、人間関係の固定化や転出入する児童生徒への個別対応の必要性、校長の職務荷重などが懸念としてあげられています。

工夫ある学びを実践する3つの義務教育学校

最後は、義務教育学校の可能性をうまく活用し、工夫ある学びを実践している3つの義務教育学校の実践をご紹介します。

教育課程の特例を活用~市川市立塩浜学園~

市川市立塩浜学園は、教育課程の特例を活用して「塩浜ふるさと防災科」を設定しています。「塩浜ふるさと防災科」の目標は次のの通りです。

ふるさと塩浜の歴史や自然環境に触れて理解を深めたり,自然災害発生を想定し,それに備えて地域の方々と協力しながら自ら考え自ら進んで活動したりすることで,地域に誇りや愛着を持った思いやりのある豊かな心と,自主的に問題解決を行う,たくましく生きる力を育む。

(引用元:小中一貫した教育課程の編成・実施に関する事例集|文部科学省,P6

9年間一貫した系統性・連続性のある教育課程として、保護者や地域の方々の協力を得て「ふるさと」に関わる内容と「防災」に関わる内容を学びます。

〈実践例〉

塩浜の生物と環境~嵐潮ひかる海原に~(第5学年)

実際に船に乗って海の様子を観察したり、海からふるさとを眺める体験などを通して、そこから生まれた疑問や課題をもとにテーマを決めて、調べ学習を行い、調べた内容をプレゼンテーションまでを行う学習です。

義務教育学校の教育|市川市立塩浜学園 をもとに筆者作成)

小学校高学年における教科担任制~品川区立品川学園~

品川区品川学園は、第5,6学年の全科目で教科担任制を実施しており、後期課程の教員が前期課程の「英語科」の授業へ乗り入れを実施しています。(「英語科」は教育課程の特例を活用)

第5,6学年において、学級担任7名と副担任2名、講師2名、区固有教員1名の合計12名で全教科を教科担任制にして時間割編成を実施しています。

(参照元:小中一貫した教育課程の編成・実施に関する事例集|文部科学省,P16

※英語科、市民科は教育課程の特例を活用した教科

乗り入れ指導~神戸市立義務教育学校港島学園~

神戸市立義務教育学校港島学園は、中学部教員が小学部の算数科、理科、英語活動の授業に乗り入れを実施しています。また、この乗り入れ指導により、下記2点の効果が期待されるとしています。

・中学校の専門性を生かした指導を取り入れることにより,小学校での発展的な指導が充実する。
・小学校の教師と中学校の教師がティーム・ティーチングを行うことにより,主体的・対話的で深い学びの視点に立った授業改善が推進される。

(引用元:小中一貫した教育課程の編成・実施に関する事例集|文部科学省,P18

〈乗り入れ指導(共動授業)の体制(平成28年度)〉

教科第5学年第6学年乗り入れ教員
算数科週3回週3回3人
理科週1回週1回1人
英語活動週1回週1回1人
小中一貫した教育課程の編成・実施に関する事例集|文部科学省,P18 をもとに筆者作成)

まとめ

義務教育学校は、義務教育の目的、ひいては教育基本法にある教育の目的を果たすためのやり方の一つです。私たちは、新たに制度化された義務教育学校を、新しく不確実なものとして遠ざけることができます。しかし、その理念・目的を理解し、子ども・保護者・地域・企業などすべての人が協働し、未来に向かってより良い教育を一緒に創造していくために活用していくことも可能です。すべては、私たちひとりひとりの選択と決断にゆだねられているのではないでしょうか。

この記事が、義務教育学校の理解を深め、新たな発想や行動につながる一助になれば幸いです。

参考
新しい時代の義務教育を創造する(答申)|文部科学省
資料7 新学習指導要領関係資料|文部科学省
教育基本法案について(説明資料)|文部科学省
学校教育法改正に係る国会論議|文教科学委員会調査室
小中連携,小中一貫教育とは何か|教育出版株式会社
学校教育法等の一部を改正する法律案(概要)|文部科学省
「小中一貫教育リーフレット」|兵庫県
小中一貫教育に関する資料|岡山県教育庁義務教育課
義務教育学校に関する資料 |岡山県教育庁義務教育課

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