【イベントレポート】5日間連続開催!ALUMNI INTERVIEW DAY5 磯依里子さん~スタートアップ~
フェロー後、どのようなキャリアを歩んでいる人がいるの?これまで、どのような経歴の人達が参加してきたの?フェロー経験って、その後のキャリアにどのような影響を与えているの?そんな疑問にお応えするべく、Teach For Japan(TFJ)のフェローシップ・プログラム(2年間教師として公立小中学校に赴任するプログラム)を修了した方をゲストにお迎えし、イベントを開催しました!
【ゲストプロフィール】
▼DAY5 磯依里子さん
国際基督教大学を卒業後、Teach For Japan3期フェローとして、大阪府泉佐野市に英語科教員として赴任。フェロー任期終了後、2017年よりNPO法人じぶん未来クラブで法人営業に従事。現在は、SaaS系スタートアップ企業にて人事を担当。Teach For Japanでは、Teach For Allとの連携窓口を担当。2020年からは、Teach For Allのネットワークコネクターとしても活動している。
インタビュー記事:
https://teachforjapan.org/entry/interview/2020/03/18/shinsotsukyouin-tyugakkou-kyouikukakusa/
新卒でフェローに。子どもと大人の心に火をつけたい
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新卒でTFJのフェローになった磯さん。大学時代に中高の英語の教員免許を取得しており、東京都の教員採用試験に合格していたそうですが、「私は本当に学校の先生になりたいのか」という問いが生まれて悩んだのだとか。その理由は2つで、1つ目は自身の学校経験にありました。中高と私立学校に通われており、当たり前のように進学率を重視される教育システムが、子ども達に学力を注入して輩出する工場のように思えて、学校というものにあまり良いいイメージを持てなかったんだそうです。
また、2つ目として、大学に進学しない子ども達だってたくさんいるのに、社会からあまりスポットライトを当てられていないことに違和感を感じていたからでした。自分が先生になると、そんな学校や社会のシステムの歯車になってしまうんじゃないかと危惧していました。ただ、子ども達の一生に影響を与えられる学校の先生という仕事に魅力を感じていたのも事実だったため、様々なバックグラウンドの子ども達がいる公立学校で、かつ教師として厳しい環境で挑戦したいと考えていました、そんな時に出会ったのが、Teach For Americaでした。そこからTFJを知り、直感で飛び込みました。東京都の教員と一切迷わなかったわけではありませんが、お腹の底からやりたいと思えたのがTFJのフェローだったそうです。それは、様々なバックグラウンドを持つ同期と切磋琢磨し合えるだけでなく、Teach For Americaなど世界のネットワークと繋がれることも魅力的だったと話して下さいました。
実は磯さんはお母さまが教師で、勧めもあって教員免許を取得されました。そんな「とりあえず免許をとる」という気持ちから、教師が本命の進路になった背景には、大学で学ぶ中で起きた心境の変化があったからなんだとそうです。大学入学当時は国際関係を学びたいと思い、開発学や平和学などの授業に出られていた磯さん。しかし、学んでいくと全ては人にたどり着くことから、教育は凄い力を持っていると感じていったと言います。
そんな中、大学3年生の時に留学していたアメリカで衝撃的な体験をします。授業の中で学んだ、恵まれている家庭環境の子ども達は恵まれた環境で生きていき、恵まれない家庭環境の子ども達は恵まれない環境で生きていく傾向にあるという話を、身をもって感じたのだそうです。磯さんは現地で、移民の方々が多く住んでいる地域に学習支援のボランティアに行き、小学3年生の女の子を担当されたそうなのですが、その子は英語もままならず、そのため学校に行っているにも関わらず、算数の1+2も分からない状況だったんだとか。これを、アメリカのような格差社会だから起きている問題だろうと考えていたそうなのですが、帰国後、日本の子どもの貧困率が16%あると知り、課題感を持ったと話してくださいました。
赴任前は、自分なら何かできるんじゃないかと期待感を持たれていたそうですが、実際に赴任すると、1年目は何もできなかったと言います。赴任した大阪の中学校は、全国学力調査の結果が全国平均からマイナス10点以上あり、地域としても課題感が多かったんだそうです。最初の半年は、子ども達や先生のコミュニティに入ることに苦労し、体当たりの毎日だったと言います。子ども達から反発を受けたり、先生方からは東京から来たTFJの人ということで距離があったりしましたが、諦めず腹を割って話すことで徐々に分かり合えるようになっていきました。これには、磯さん自身の内面の変化も関係しており、最初に期待値を持って入ったことはおこがましかったということ、子ども達は一生懸命生きていて素晴らしいんだ、私が変えなきゃなんて思わなくていいんだということに気付けたことが大きかったと言います。
フェローの2年間を終える頃には、子ども達も先生も本当に素晴らしい存在だと感じるようになっていました。ただ、学校現場と社会のギャップも感じていて、具体的には、学校現場はIT技術の導入の遅れなどから民間企業に比べると50年ほど時をさかのぼったような感覚があったそうです。その後、公立学校を変えるには学校の外側からアプローチする必要があると感じ、教育系NPO法人に転職されました。そこでは、表現教育事業とキャリア教育事業を行っており、学校の子ども達向けや大人向けにプログラムを届けていました。その中で、こんなにも教育をより良くしたいと思っている人がいるんだと気付かされたと言います。
その後、SaaS系スタートアップに転職されます。理由は、NPO法人で子ども達の心に火をつけるプログラムを提供していましたが、周りの大人たちの心に火がつかないと子ども達にも火はつかないと感じるようになり、大人たちの心に火がつくような組織作りに興味を持ったからでした。また、自身のキャリアを振り返った時に、今まで教育業界で仕事をしてきており、民間企業で働いたことがなかったため、経験してみたいという思いもあったのだそうです。実際に働いてみると、学級経営と組織経営は似ているなと感じるんだそう。また現在、1on1を実施しているそうなのですが、それが子ども達との向き合い方と全く一緒だと感じるそうで、フェロー経験が生きていると話してくださいました。
直近は、今の仕事に一生懸命向き合いたいと思っていらっしゃいます。また、現在の会社に入って初めてエンジニアの方々と出会われ、これまでいた教育業界と違ったIT業界の仕事や働き方について知れたので、普段、教室で出会えない彼らの姿を子ども達にも見せられる取り組みが出来るといいなと思っています。また、磯さんご自身のように先生方がいろんなキャリアを歩めて、それが子ども達に伝播していくような仕組みが作れるといいなとも仰られていました。
参加者の皆さんの感想
参加していただいた方からのアンケートも一部ご紹介させていただきます。
磯さんのお話し、すごくよかったです。とくに「とにかく、飛び込んでぶつかってみる」というスピリット、大好きです。きっと大変な経験だったと思うのですが、それを包み隠さずお話しされていてよかったです。結局最後は、何をやりたかったのかに戻って考えたこと、その思いを伝えて自分が変わっていったこと、結局は人と人とのつながりが大事なこと、など、共感しました。
最後に、「悩むことはよいこと。悩んで自分の道を探さなくなったら、そこで止まってしまう」とおっしゃっていたのも共感しました。
「自分がいない方がいいんじゃないか?」とか、「どこかで、彼等を可哀想だとみている自分」とか、傷みが伝わってきて、「自分(私)だって、一人じゃ何も出来ないよな?」と、辛く、大変な経験をすることになるだろうけど、関わる人たち皆が、なにがしら成長したり、変化に繋がることだろうと感じました。
子供達と実社会で働く大人達の活動を繋げて見せて行くという事は、とても大事な事だと思います。自分の人生を真剣に考え続けて行動に移して行くという事が出来れば、その姿を子供達に見せて行くことも大切な教育だと思います。そういう大人が増えていけば良いなと思います。
参加者の皆さん、そしてゲストの磯さん、ありがとうございました!