【後編・今野千識さん】フェロー修了後に開けた道

2016/9/12 TFJフェロー

 

Teach For Japan第2期フェローを経験した今野千識さんに、全3回のロングインタビューを行いました。前編・中編では、フェローになった理由や、学校現場での葛藤の日々を語っていただきました。いよいよ後編では、今野さんを突き動かす原動力となったものや、フェロー任期終了後に開けた道に、迫ります。(【中編】はこちら)

 

困難を乗り越える過程で

原動力となった、2つのもの

 

中編で語っていただいたような困難を乗り越えようとするとき、原動力となったものは何ですか。

 

原動力は二つありました。

 

一つ目は、仲間の存在でした。

 

同じ学校で働く仲間として、いつも手を差し伸べてくださった職場の先生方はもちろん、同志であるフェローの存在も、大変大きかったです。フェロー仲間の存在は、離れていても、いつも前向きに努力する原動力となりました。

 

Teach For Japanでは、公立学校へ教師として赴任する1ヶ月前に、約3週間の合宿型研修を行います。この研修は内容的にも体力的にもかなりストイックな研修なのですが、これを一緒に乗り越えたフェロー仲間は、かけがえのない存在となります。

 

この研修は、授業力やリーダシップといった教師として必要なスキルを学ぶ内容ですが、一貫して「私らしい教師としてのあり方」を問われるものでもありました。3週間徹底的に、自分の強さや弱さ、信念、想いに向き合ったのです。

 

この問いを乗り越えるには、恥ずかしいくらい、自分をさらけ出さなくてはなりませんでした。それこそ、心を丸裸にして、仲間のフェローと毎晩想いを語り合ったり、自分の根底にある悩みを共有しあったりしました。すると研修が終わる頃には、フェロー仲間は空気感までも共有できる、かけがえのない同志となっていました。

 

 

このフェロー仲間というのは、Teach For Japanで得られる大きなもののうちの一つですよね。では、もうひとつ原動力となったものは何ですか。

 

二つ目は、子どもたちです。困難を抱える子どもを支援したいと言いつつ、実は、私自身がいつも子どもたちに助けられていたのです。

 

私が、発した言葉や自身が醸し出している空気感を客観的に見つめ直したいと思ったとき、ヒントをくれたのは、いつも子どもたちでした。子どもたちが、無意識的にも一番直球で、私にフィードバックをくれていたのです。

 

 

なるほど。例えば、子どもたちは今野さんに、どんなフィードバックをくれたのですか。

 

例えば、自分でも気づかないうちに子どもに指摘することが多くなったとき、「先生の良いところはいつも良いところを見つけるところなのに、悪いところばかり見ちゃだめだよ」と言葉をもらいました。とてもストレートですよね。

 

子どもは本当によく周りや教師を観察しています。ストレートなフィードバックもありがたいですし、反対に、落ち込んでいる時は、一番に気づいて励ましてくれました。そうした時にもらったたくさんのお手紙は、今でも大切に、手元に置いてあります。

 

 

ストレートで驚きました。しかし、今野さんと子どもたちの間に信頼関係があってこそのフィードバックや励ましだと感じます。

そんな今野さんにとって、学級の子どもたちとは、ずばりどんな存在なのですか。

 

私にとって子どもたちは、愛しい仲間であり、良きライバルです。

 

教師としての任期が終了した今、物理的には離れたところにいますが、心はつながっているように感じます。子どもたちは、私の良き理解者であり、心から幸せを願いあう仲間だからです。と同時に、子どもが成長したら、自分も負けてはいられない気持ちになります。

 

子どもの圧倒的な成長スピードに負けないよう、今も、毎日を全力で生きています。

 

フェロー経験を通じて得たスキル

 

フェロー経験を通じて、「同志としてのフェロー」と「子どもたち」という二つのかけがえのない仲間を手に入れたわけですね。

スキル面に関して、フェローを経験する過程で得たものはありますか。

 

はい。一言で言うと、いわゆる「課題解決能力」が高まりました。細かく分けると、「察する力」と「情報収集能力」が格段に高まったと思います。

 

具体的に言うと、子どもや保護者の方の悩みを聞いたとき、課題を見つけ出し、適切な支援を提供することができるようになりました。

 

フェローをする前は、助けたいという想いがあっても、そもそも何が問題なのかを把握したり、どう手助けしたりすれば良いのかがわからないことが多かったのです。

 

しかし、2年間、子どもたちや保護者の悩みを聴き、解決する方法を模索し続けた結果、当時者から本音を引き出す力や、言葉や行動の背景にあるものを見抜く力が身に付きました。そして、その人自身の特性や課題にあわせて、適切に手を差し伸べることができるようになったのです。

 

 

こうしたスキルは、ひとりで身につけていったのですか。

 

いいえ。この過程では、学校現場に既にいらっしゃる先生方から学ぶことが大変多くありました。

 

学校現場の先生方は、人の気持ちや本質を見抜く力が大変優れています。一言で言うと、「察する力」ですね。

 

且つ、常に様々な事柄にアンテナを張っていて、子どもや保護者のためにできることを見つけようとしているのです。これはまさに、「情報収集能力」といえると思います。

 

私自身、私の本音や課題を察していただき、手を差し伸べていただいたことがたくさんありました。

 

私は、2年間という期間限定ではありましたが、いわば熟達した先生方のすぐ下で、こうしたスキルを常に磨き続けることができたのです。改めて、大変貴重でありがたい経験だったと思います。

 

そして、実は現在も、多様な子どもたちや保護者と接する機会が多い仕事をしています。身につけた二つのスキルのおかげで、動揺せず、自信をもって仕事に取り組むことができています。

 

 

フェロー経験後に開けた道

子どもの家庭環境も含めた根本的な支援がしたい

 

現在、お仕事と平行して、精神保健福祉士の資格取得に向けてお勉強されているのですよね。フェロー経験が、どのように今野さんを、資格取得へ駆り立てたのですか。

 

フェローとして公立の小学校で教師をする中、いつも痛感していたのは、「子どもにとって家庭がどれほど大きな存在か」ということでした。

 

もちろん、多くの子どもが毎日大半の時間を過ごす学校環境を整えることは大変重要です。しかし、いくら学校環境を整えても、子どもの悩みを根本的に解決することはできなかったのです。

 

なぜかというと、子どもが心の底から求めているのは、安定的な「家庭環境」だったからです。ところが、学校の教師は、家庭の事情にまで足を踏み入れられないのが現状です。教師である私ができることは、学校で万全の環境を整えるよう努め、子どもが登校してくるのを待つことでした。

 

しかし、こうした家庭環境の問題は、子どもにとっての悩みであると同時に、保護者の方の悩みでもあることに気がつきました。保護者もまた、助けを必要としているのです。

 

そこで、私は精神保健福祉士という資格があることを知りました。この資格を取得すれば、家庭の相談にも乗ることが可能となります。

 

家庭も含めて支援することで、子どもが前向きに成長していく基盤を作りたい。こうした想いから、資格取得を決意しました。

 

現在歩いている道は、フェローを通じて教師をしないと見えなかった道です。そのため、フェローの経験は私の人生を大きく前へ進めてくれたと実感しています。

 

 

最後に、フェローになるか迷っている方に向けて、一言お願いいたします。

 

フェローの魅力は、今までのお話からたくさん伝えられたのではないかと思います。

 

今、フェローとして教師になることに、一歩踏み出せない方に一言伝えるなら、「絶対に、自分にしかできないことがある」ということです。

 

2年間という限られた時間で、できることは限られているのではないかと考えたり、自分が子どものためにできることがあるのかと不安になったりするかと思います。

 

しかし、赴任する学校には、必ずあなたとの出会いを待っている子どもがいると思います。

 

教師のあり方に正解はなく、教師の数だけ正解があります。

 

あなたを待っているその子には、あなたにしかできないことがある。これを伝えたいです。

 

 

今野さんの強い信念や行動力に触れ、大変勉強になりました。本日はお忙しい中、誠にありがとうございました。

 

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