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【イベントレポート】世界のアラムナイに聞く!②Alumni Stories in Teach For Latvia~Oskars Kaulēns(オスカル・コーレンス)さん~

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Teach For Japan(以下TFJ)は、世界59ヶ国に広がるグローバルネットワーク「Teach For All」における日本の加盟団体として活動しています。

Teach For All(以下TFAll)とは、30年前にアメリカで始まったTeach For America のモデルを基に「すべての子どもが、素晴らしい教育を受けることができる世界の実現」という共通のビジョンに向かって協働するために設立されたグローバル組織で、各国の取り組みにおけるノウハウや情報の共有、意見の交換などを行っています。

各国では、TFJのフェローシップ・プログラムと同様に2年間、学校教員として子どもと向き合った人材が、教育のみならず様々な分野で活躍して周りを巻き込むことで、教育改革を推進することにチャレンジしています。

そこでTFJでは、そんな世界各国の仲間たちが、一体どんな想いやビジョンを持って先生の道を選び、そして現在、どのようなキャリアを歩んでいるのか、また他国の教育事情はどのようになっているのかといったことを聞ける場として、毎月1名のアラムナイ(2年間のフェローシップ・プログラムの修了生を、TFAllではAlumniと呼んでいます)をゲストにお迎えする座談会を開催しています。

第2回目の今回は、校長として活躍しながら、大学で先生の専門能力開発を研究している、Teach For Latvia 修了生のOskars Kaulēns(オスカル・コーレンス)さんでした。本記事では、Oskarsさんの座談会をサマライズしてお届けします。

Oskars Kaulēns(オスカル・コーレンス、Teach For Latvia Alumni)

2011年から2013年までTeach For Latviaのフェローであり、現在はこの団体で、初任の歴史教員向けの研修に携わるほか、指導者としても従事しています。

また10年間、公立の中等教育学校で歴史・文化研究・政治・法律の教員として勤務し、その後5年間、Ventspils State Gymnasium No. 1で副校長として勤務した後、2020年からは、Friendly Appeal Cesis State Gymnasiumの校長及び歴史教員を兼務しています。

また、5年以上にわたり、生徒のスキルを意図的に開発するための教授法や、異なる学習レベルに対する教授法、そして、授業を観察したり、教員へフィードバック提供したりするなど、さまざまなトピックに関するカリキュラムを開発し、教員の専門能力開発プログラムを主導してきました。

さらには、欧州連合社会基金プロジェクトの一環である「カリキュラムにおける能力アプローチ」の分野において、社会および市民分野のカリキュラム開発の専門家として携わってきました。

2018年からは、ラトビア大学の教育学博士課程で学んでおり、その枠組みの中で、学校を作るための前提条件として、学校を拠点とした効果的な「ラーニング・コミュニティ(学びの共同体)」をどのように生み出すか、という観点から教員の専門能力開発を研究しています。

ラトビアの教育

これまでの経歴とは

最初に、私の経歴を簡単にお話しさせていただきます。

2011~2013年に、Teach For Latviaでフェローを経験しました。かといって、元々教育のバックグラウンドを持っていたわけではありません。政治学で修士号を取得しているのですが、その頃に教育に興味を持ち、現在教育学の博士号を取得中です。

Teach For Latviaでは、ラトビアの首都にあるRiga Lithuanian Secondary School(リガ・リチュアニアン中等学校)で、高校2年生を担当しました。その後、ラトビア北西の都市ヴェンツピルスに移り、Ventspils State Gymnasium No.1(ヴェンツピルス・ギムナジウム No.1)という学校で歴史教員をしながら、副校長という立場で先生のマネジメントに関わっていました。

その4年半後には、ラトビアの古都で、現在勤務しているFriendly Appeal Cesis State Gymnasium(フレンドリー・アピール・ツェーシス・ギムナジウム)という学校に移り、校長を務めながら中学1年生の歴史の授業を担当しています。

ラトビアとは

ここでラトビアの歴史について、少しご紹介したいと思います。

ラトビアは、日本の約66分の1に当たる人口192万人が暮らす、国土6万4000平方キロメートルの小さな国です。

13世紀から20世紀にわたり、ロシアやドイツ、スウェーデンなどたくさんの国々に支配され、1918年に独立した歴史があります。また、1990年まではソ連(現ロシア)の影響を強く受けており、ソ連の教育の在り方というのが、かなり生徒のマインドコントロールをするものであったために、そこから脱却するというのが教育上重要な課題でした。

そして、2004年にEUの加盟国となったのですが、これをきっかけに近代的な教育改革が行われました。

ラトビアの教育システムとは

ここからは、ラトビアの教育システムについてご紹介します。

ラトビアでは、7歳までPre-school(幼児教育)があり、その後にPrimary education(初等教育)が始まります。初等教育は1~6年生まで、もしくは1~9年生までの2つのコースがあり、6年生になると、職業訓練学校に行くのか、中等教育学校に行くのか選択します。

だいたいの生徒は、9年生を終えるとSecondary education(中等教育)に進むことを選択し、10~12年生まで学びます。

また、この時期にはもう一つの選択肢があります。State gymnasiums(ステート・ギムナジウム)と呼ばれるもので、学力レベルが高い生徒たち向けに用意されているコースです。これは、初等教育6年生を終えた後に選択でき、7~12年生まであります。ここで学ぶと、その後は学力レベルの高い学校への進学権が得られます。

また、このほかにも10~12年生プラス1年間、専門分野について学べる2つのコースがあります。一つは、特別に専門領域を深く学べるSchool of special interestsというコースで、例えば音楽や美術といった学びを深めることが出来ます。もう一つは、Vocationalと呼ばれるコースで、いわゆる職業訓練学校です。

私は、Secondary education(中等教育)とState gymnasiums(学力レベルが高い生徒たち向けのコース)で教員を経験してきました。

ラトビアの教育課題とは

まずは、先生たちの年齢が高いことが挙げられます。平均年齢は48歳で、51%以上が50歳以上です。だいたいの教員は、62歳で退職します。若い教員不足には、強い課題感を持っています。

2つ目としては、小さな学校が沢山あるために、まとまりがないことが挙げられます。ある村の学校では生徒が30人しかいないのに対し、都市に行けば1000~1500人を抱える学校もあります。このような大規模校にお金が流れてしまうため、小規模校を統合しようという動きがあります。

3つ目は、2つ目とも関連があるのですが、教育格差が挙げられます。大規模校と小規模校、都市と地方で様々な教育格差が生まれており、問題視されています。

4つ目は、教員になりたい人たちが少ないことです。大学では、先生になりたい!という強い気持ちを持った学生ではなく、他に良い職業につけないから先生にでもなるかといった気持ちを持った学生が増えています。ゆえに、教員という職業に競争性が失われてきているのです。

5つ目としては、先生という仕事が低賃金であることが挙げられます。多くの教員は2~3つの学校に契約ベースで所属し、掛け持ちで働いています。

そして最後6つ目は、教員の教育スキル不足です。先生たちは、教えたいことはたくさんあるのですが、それゆえに知識ばかりを詰め込むような教え方に偏ってしまい、子どもたちに自分自身で考える力を養ってもらう教育というのが出来ていないように感じています。

ただ、ここでお伝えしておきたいのは、上記6つはあくまでもラトビアという国の課題で、全員の教員にこのような課題があるというわけではありません。素晴らしい教員もたくさんいます。

Teach For Latvia

Teach For Latviaのミッションとは

すべての子ども達が、可能な限り最高の先生から学ぶことです。貧しい子でも、どんな家庭環境の子でも、その子ども達が素晴らしい先生と出会えることを、ミッションとして掲げて活動しています。

つまり、教育の質というのは、イコール教員の質だと言えると思います。

私たちは、先生たちの質を上げていくことが必要だと考えているのです。そこで、国と共に、先生の質を高めるプロジェクトを行っています。先生は教科を教えるだけではなく、子ども達の人間性を育む役割を持っていると考えているからです。

これらを踏まえた、私たちTeach For Latviaのゴールは、以下の3つです。

1つ目は、情熱的でやる気のある先生を育てることです。そのために、先生になろうと考えている大学を卒業した学生を惹きつけることをミッションとしています。

2つ目は、先生の育成システムを国内に広めていくことです。まさに、大学機関と連携しながら、国内各地に広めている最中です。

3つ目は、先生のネットワークを作ることです。ネットワークを通じて、先生が教育方法や学校運営について意見交換できることを期待しています。

Teach For Latviaでフェローになった理由とは

ここで、私がフェローになった理由についてご紹介したいと思います。それは、以下の3つです。

1、子ども達にインパクトを与えられるような仕事をしたかったから。

2、最高の体験を子ども達に届けたいと思っていたから。

3、世界を変えたいと思っていたから。また、子ども達だけでなく先生に対しても、学びたい!という欲求を刺激したかったから。

これまでの経験で得た、教育に対する考え方とは

次に、私がこれまでの経験で学んだ、教育にとって大切だと思うことをシェアしたいと思います。

まず一つ目は、子ども達と信頼関係を築くことです。この信頼関係がなければ、子ども達と良い関係を築けません。

続いて2つ目は、子ども達と会話をすることです。これは、1つ目の信頼関係を築くためにも必要です。私は会話をする上で、その子供等を理解すること長い時間をかけてきました。そこから、子ども達それぞれのニーズを導き出すことが出来ると感じています。

次に3つ目は、子ども達へのサポート体制を整えてあげることです。子ども達が高い目標を掲げることはいいのですが、そこまでの道のりをサポートしてあげることが先生として大切だと思っています。

4つ目としては、先生がそのクラスで学ぶ1番の生徒であるべきだということです。私自身は、これが一番大切なことだと思っています。先生自身が生徒の模範になることが重要です。

5つ目は、バリューをきちんと出していくことです。教室の中では、先生が発する言葉や態度が影響力を持つことを認識し、その上で行うべき行動を毎日の業務に落とし込んでいくことが大切だと感じています。

最後の6つ目は、先生たちが最も難しい生徒だということです。現在の校長という立場として、同僚教員をより良い方向に導いていくことの難しさを痛感しています。これからも、それぞれの先生に対して必要なサポートを提供していきたいです。

今後の展望とは

それでは最後に、私の展望を述べて締めたいと思います。それは、以下の3つです。

まず1つ目は、現在、校長として働いている学校を学習する組織として変革していくことです。

続いて2つ目は、自身の教員としての能力を向上させることです。

最後に3つ目は、自分自身がPhD((哲学博士))として大学で勉強しているので、これをやり遂げることです。

今回お話しした私の経験が、少しでも皆さんのお役に立てば幸いです。

Q&Aセッション抜粋

Q1:「教育が世界を変える」というTFAllの目標に対して、オスカーさんが感じていることとは、どのようなことですか?

A1:もちろん、長い目で見た時、また大きな世界観でとらえた時には、私たちのやっていることは小さなことだと思います。しかし、子ども達1人1人の小さな変化が広がり、大きなうねりになると思うのです。そして、世界が変わっていくと考えています。

私自身、幼い頃は恵まれた環境ではありませんでしたが、ある一人の先生との出会いで、人生が変わりました。だからこそ、教育は世界を変えられると信じています。

Q2:「先生たちこそ、一番難しい生徒だ」というお話がありましたが、オスカーさんは先生たちにどうあってほしいと考えていますか?また、オスカーさん自身、そのためにどのようなことに取り込んでいますか?

A2:先生が子ども達にとっての鏡であることが大切だと思っています。先生が子ども達に、人とより良い関係性を築きなさいと言うのならば、先生が率先してそういう姿勢であるべきだと考えます。

現在、私は校長として先生達に子ども達の鏡となることを求めていますが、自分がしてこなかったことを相手に求めることは出来ないと感じています。だからこそ、私自身も学びのサイクルを回しています。

Q3:ラトビアでも教師の残業、低収入問題があると伺いましたが、改善に向かっていると感じていますか?

A3:いろいろな要因によって引き起こされている問題のため、一概にはお答えできませんが、考えられる全ての要因をまとめて優先順位を精査し、それぞれの要因について細かく見ていくことが必要だと考えています。

例えば、小さな村で30人くらいの生徒しかいない学校があるとすると、運営上コストパフォーマンスが悪くなります。こういう問題が、国のいたるところで起きています。しかし、ただコストパフォーマンスが悪いからといって閉校すると、村にとって打撃となります。なぜなら、学校を中心にイベントが行われるなど、地域のコミュニティ・ハブとなっている場合が考えられるからです。

そういった背景をきちんと考慮した上で、次のステップを考える必要があると感じています。

参加者の声

ほかの国のフェローの方に、生のお話を聞く機会はなかなかないと思うので、とても興味深く、面白かったです。日本の教育との共通点・相違点も知れますし、すごく学びが多かったので、またぜひイベントに参加させていただきたいと思います。

ラトビアの教育現場の現状や問題、解決に向けてどうアプローチするかなどを、現地の教育者から直接お話を聞ける機会はまずないと思うので、今回のような貴重な経験は大変有り難かったです。

Thank you so much for the presentation today! I was really impressed with your words, “Every student is a separate world.”

I totally agree with you. Every person has a role in the world, and changing themselves (myself) is the first and foremost important thing to make a better world, I think.

I’m not in the education field currently, but I would like to contribute to education in the future.

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