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【イベントレポート】世界のアラムナイに聞く!Teach First(UK)~Emma Russo(エマ・ロッソ)さん~

Teach For All(以下TFAll)とは、30年前にアメリカで始まったTeach For America のモデルを基に「すべての子どもが、素晴らしい教育を受けることができる世界の実現」という共通のビジョンに向かって協働するために設立されたグローバル組織で、各国の取り組みにおけるノウハウや情報の共有、意見の交換などを行っています。

Teach For Japan(以下TFJ)は、この世界59ヶ国に広がるグローバルネットワーク「Teach For All」における日本の加盟団体です。

各国では、TFJのフェローシップ・プログラムと同様に2年間、教師として子どもと向き合った人材が、教育のみならず様々な分野で活躍して周りを巻き込むことで、教育改革を推進することにチャレンジしています。

そこでTFJでは、そんな世界各国の仲間たちが、一体どんな想いやビジョンを持って教師の道を選び、そして現在、どのようなキャリアを歩んでいるのか、また他国の教育事情はどのようになっているのかなどを聞ける場として、毎月1名のアラムナイ(2年間のプログラム修了生を、TFAllではAlumniと呼んでいます)をゲストにお迎えする座談会を開催しています。

記念すべき第1回目は、グローバル・ティーチャー賞2019の最終候補としてトップ50に選出された経歴を持つ、Teach First(UK)のEmma Russo(エマ・ロッソ)さんでした。本記事では、そんなEmmaさんの座談会をサマライズしてお届けします。

Emma Russo (エマ・ロッソ、Teach First Alumni)

現在、GDST(Girls’ Day School Trust の略) というイングランドとウェールズにある女の子のための26校からなる私立学校グループの1つで、ロンドンのSouth Hampstead高校の副校長を務める傍ら、物理教師としてSTEM教育のディレクターを兼務しています。

STEMを活用して女の子をエンパワメントする教育の取り組みが評価をされ、バーキー財団が主催で、様々な教育課題に取り組んで成果を上げている教師を表彰するグローバル・ティーチャー賞2019の最終候補として、トップ50に選出されました。また、2020年には、英国物理学会から Daphne Jackson Medal賞が贈られました。

彼女は、ステレオタイプに捉われずに挑戦するよう人々を鼓舞することに対して、自身の実力と熱意を注いでいます。彼女の取り組みは、ドバイで行われたGlobal Skills& Education ForumとWomenEd UKで発表され、国際的にも認知されています。また、サウジアラビアとスウェーデンの教師とも協力した経験があります。

そして最近では、ロンドンで最も影響力のある教育者の1人として、イギリスで有名なフリーニュースペーパー「イブニングスタンダード」のプログレス1000にも選出されました。

イギリスの教育を取り巻く環境

収入格差と教育格差との関係性が言われている

ある調査によると、イギリスでは、貧しい家庭環境の子ども達は、そうでない子ども達に比べて、平均で18カ月の学習遅れがあると言われています。この問題に対しては、国としても強い危機感を抱いており、対策費用として日本円で約2400億円を投入しています。

また、コロナウイルス感染症の拡大を受けて、学校から排除されてしまったり、ドロップアウトしてしまったりする子ども達も見受けられることも問題視されています。

そこで、Teach firstでは、こうした教育課題を解決するために取り組んでいます。Teach firstは2002年に設立され、年間1,000人の参加者(フェロー)がいるんですよ。

そんな中で、私は2012年にフェローとなり、ロンドンのセントマリー・スクールに赴任しました。

日本の皆さんも同じだと思いますが、当初はとても苦労しました。私は専門が物理学ですので、物理を11歳から18歳までの子ども達に教えました。

ヨーロッパのリーダーシップ奨学金を利用して、スウェーデンへ

スウェーデンでは、エンジニアの学習環境を見学したのですが、すごくいい経験をさせて頂いたと思っています。特に、現地の教師たちと意見交換できたのが良かったですね。

オーク財団のリサーチプロジェクトにも参加したほか、Teach for Allを通じて、サウジアラビアで自身の教師経験をシェアする機会にも恵まれました。

世界的なネットワークがあることは、TFAllの一つの魅力だと思います。

Girls in Physicsというプログラムを立ち上げた

女の子のSTEM教育環境の改善を目指して

イギリスでは、物理学を学んでいる女の子が20%を下回る状況にあり、危機感を感じていました。また、その延長線上で、イギリスの女性エンジニアの割合は10%を切っており、これはEUの国々の中で最低の値です。

イギリスでは16歳までが義務教育で、その後はテストを受けて選択科目(専門科目)を選んでいくのですが、その中で、女の子の物理選択の割合はかなり低いのが現状です。

この背景には様々な課題がありますが、1つ上げるとすれば、女の子の中でSTEM分野に対する自信がないこと、実際に仕事のポジションがないことなどが挙げられます。

そのような現状を受け、学校全体として、STEM教育の現場における性別の平等を担保する必要があると考えました。そして、この考え方を学校や教師に理解してもらうことが大切だと考えました。

女の子だけで物理学を学べる環境を創出

そこで物理を学ぶ際に、10人の男の子に対して1人の女の子のクラスではなく、女の子だけのクラスを用意して教えることにしました。

そうやって女の子同士のコミュニティを作ることで、男の子達に委縮することなく、のびのびと学べる環境を作りました。

これに加えて、女性のメンターと女の子達をつなげる機会も作りました。なぜなら、STEM教育の分野において、ステレオタイプの教育環境を改善する必要があると感じたからです。

また、リサーチによって、女の子は男の子よりも早い(若い)段階で自分の将来の進路を決める傾向にあることが分かりました。そのため、出来るだけ早いうちから、STEM分野で活躍する先輩と出会える環境を用意しました。

その場では、エンジニアリング分野において、女性がどれだけ過小評価を受けているかということも話し合いました。そうすることで、女の子達は自分もやってやろうという気概を育んでいきました。

家族も巻き込んでコミュニティを作る

また、メンターである女性エンジニアに対して、女の子から「あなたは自分が学生だった時、STEM分野を歩むと決めて、どういった恐れや不安を感じていましたか?」といった素直な質問も出ました。

そして、女の子達の間では、同様にSTEM分野に対して興味を持っている者同士の活発なコミュニケーションが生まれ、仲良くなっていく姿も見られました。自分の学校にはいない、同じSTEM分野に興味を持つ女の子の存在は、心強かったのだと思います。

加えて、この場づくりでは女の子の家族も巻き込みました。なぜなら、進路選択には家族の応援が必要だからです。家族からの大きな後押しが得られることで、温かく寛容なコミュニティを作ることが出来ました。

ただ、イベントを開催することは簡単ですが、違う国に横展開する際には、なぜこれを開催するのかを考え直すとともに、その国ごとに抱える課題をもう一度見直す必要があると想います。加えて、学校レベルの支援だけでなく、政治レベルでの支援も大切だと感じています。

2019年度のGlobal Teacher Prize 2019 Top 50 teacherに選出

教師という仕事への尊敬を取り戻す

こういったGirls in Physicsなどの取り組みが評価され、2019年度のGlobal Teacher Prize 2019 Top 50 teacherに選ばれました。

こうした賞を頂けることが本当に素晴らしいと思うのは、表彰者だけが称えられるのではなく、教師という職業がどれだけ重要なのか、大切な役割を担っているのかを、世の中に知らせる良い機会になることだと思っています。

イギリスでは、先生や教師という職業、ポジションが社会的にあまりリスペクトされていません。そういった人々に対して、教師という職業がリスペクトするに値することを知らせる機会にもなると感じています。

現在は、サウス・ハンプステッド高校で副校長として働く

教師の仕事は毎日アップ&ダウンの連続です。 

辛いこともありますが、改めて、教師という仕事は「making difference(違いを作る)」ことだと思っています。人々の生活に、そして子ども達に影響を与えられる仕事だと感じています。

そこで、子ども達に教える際には、それが日常生活でどのように役立つのかを意識して教えるようにしています。

例えば、物理の授業で扱うコンセプトは、それ自体が抽象的でよく分からない場合も多くあります。そういったときには「なんで空は青いんだろう?」「どういう仕事に繋がるんだろう?」というように、日常生活に落とし込むようにしています。

また、学ぶことは楽しいということを意識的に伝えています。そして、子ども達が疑問をオープンに質問できる、発言できる環境づくりを心がけています。

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