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【コロナ禍の教育】ユニセフ報告書から考えるコロナ対策の重要性とは?

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深刻な経済社会的混乱を引き起こしている新型コロナウイルス。子ども達の生活にも多様な影響を及ぼし、中でも深刻なのが格差拡大と言われています。コロナの子どもへの影響を迅速に対処していく必要があり、行政のみならず、多方面からの対策の重要性が高まっています。今回、コロナ禍でなぜ、子どもを取り巻く社会全体のあらゆるレベルで対策が必要なのかご紹介します。また、既に導入されてきた対策もご紹介し、様々な立場からの働きかけの大切さも考えていきます。

コロナの子どもへの影響ー対策の必要性

2020年の感染拡大当初から約1年が経ち、未だ収束の見通しがつかない新型コロナウイルス(以下、コロナ)の世界的大流行。世界各地で一時的な休校措置を強いたコロナは、学校が再開した後も様々な影響を子ども達に与え続けています。

中でも、深刻な課題が教育格差の拡大です。ユニセフのアナ・グロマダ氏は次の様に述べています。

COVID-19は、ほぼ確実に、子どもの格差を広げることになるだろうと考えています。外での活動の減少や貧困の増加は身体的健康に、友達と会えず、外遊びができない、希望がもてないことなどは精神的幸福度に影響します。学力への影響も不公平なものになるでしょう。

(引用元:ユニセフ報告書「レポートカード16」先進国の子どもの幸福度をランキング|ユニセフ

コロナの影響は、それぞれの子どもに異なる程度の影響を与えるます。そのため、深刻な影響を受ける弱い立場にある子どもと、比較的影響を受けずに生活が続けられる子どもの間で「格差」が広がることが重大な課題とし議論されています。

社会全体に混乱を招いたコロナですが、なぜ、全ての子どもの経験が異なるのでしょう?ユニセフ報告書「レポートカード16」の枠組みとしても使われた、生態学的システム理論を用いて、簡単にご説明します。

生態学的システム理論の概要説明

2020年9月に発表されたユニセフ報告書「レポートカード16」が応用した、アメリカ人心理学者ブロンフェンブレイナーの生態学的システム理論。最大の特徴は、子どもを取り巻くエコロジーにおいて、子どもが直接経験する要因と、大きな社会の枠組みで間接的に影響を与える要因を包括的に考慮している点です。

ブロンフェンブレイナーは子どもを取り巻く世界を5つのサブシステム(図1)に分類しました。

図1(Child Development: An Active Learning Approach Third Edition|Levine and Munsch(2014)を参考に筆者作成)

各サブシステムの簡単な定義は次のとおりです。

表に示された各レベルの条件次第で、子ども達の成長軌道は変わっていきます。それぞれのレベルでの条件は子ども一人一人異なり、コロナ禍でも同様です。コロナに伴い経済的打撃を受けた家庭、受けていない家庭。休校中、親と積極的に連携した学校とそうでない学校。自治体、NGO・NPOなどが活発に働きかけている地域とそうでない地域。このように、同じ国・地域に住む子ども達でも、経験しているエコロジーの条件が異なります。結果的に、子ども達が経験するコロナの影響の大小も変わってくるのです。

コロナ禍で拡大していると議論されている教育格差についてご紹介している記事はこちら▼
教育格差ー日本における現状とコロナ禍で拡大する格差とは?

コロナの子どもへの様々な影響を分析し、生態学的システム理論をご紹介している記事はこちら▼
【コロナ禍の教育】ユニセフ報告書から考えるコロナの子どもへの影響

格差拡大を食い止めるためには? 

コロナに伴い、拡大すると言われている子どもの格差。OECD、ユニセフをはじめ、様々な組織が、格差の悪化を食い止めることの重要性を強調しています。そして、対策を導入するにあたり、各レベルで対策を講じる事が大切であり、OECDは次のように呼びかけています。

あらゆるレベルの政策を総動員して初めて対策の効果が出る。悪影響に苦しむ国民と接点を持って活動する各国政府、地方当局、NGOが連携し、広く開かれた方法で関わるということである。

(引用元:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が子どもに与える影響に対処する|OECD

コロナの影響は子ども達を取り巻く環境の至る所に及んでいます。家庭のみならず、学校、地域、自治体、政府、そして社会全体の価値観や関心事までも変容してきました。そのため、子どもに関わるあらゆるレベルで対策していく事が肝心と言われています。

コロナ禍で取られた対策分析

あらゆるレベルでの対策が重要ということですが、本記事では最後に、今回コロナ禍で子ども達への影響を対処するために取られてきた対策を簡単に分析し、幅広い取り組みの必要性を考えていきたいと思います。

各レベルで取り組みの重要性

コロナ禍での対策について、以前Teach For Japanが特集した下記のコラムとイベントレポートをもとに分析していきます▼
【コロナ禍の教育】世界の学校ではどう取り組んでいる?ー台湾編
【コロナ禍の教育】世界の学校ではどう取り組んでいる?ーオランダ編
【コロナ禍の教育】世界の学校ではどう取り組んでいる?ーインド編
【イベントレポート】アジア地域のCEOによるパネルディスカッション
今こそ、みんなで学校を支えよう

これまで注目してきた対策は多種多様で子ども達と取り巻くエコロジーの各レベルに導入されていました。今回、生態学的システム理論の枠組みに沿って分類してみました。

マイクロシステム

<台湾>
子ども達同士で除菌を行い、お互いに感染予防に努めた子ども達

<オランダ>
学校再開のための子ども達の行動ルールを構築
健康状態良好である教職員のみ学校現場に出勤・基礎疾患のある人に登校を強いない

<インド>
建物の壁・町内スピーカーの応用、巡回訪問で屋外授業を続けた教員達
チャットアプリWhatsAppを活用し子ども達と直接連絡を取り続けた教員達

メゾシステム

<台湾>
感染拡大防止のため登校時の検温にむけ、保護者の協力を得た学校

<オランダ>
親がコロナ対応の重要な職業に就き、在宅勤務で子どもの面倒を見れない児童(0〜12歳)を保育所が受け入れ

<インド>
教員が親に連絡し、子どもの学習を支援した取り組み

エクソシステム

<台湾>
冬休み延期中の親の有休制度の導入
政府が各大学に対策本部を設置するよう指示・各大学が学内での感染追跡の責任、オンライン対応、休校/休講の対応の責任を担う
教員連合の活発な働きかけ・教育現場が必要とする支援を政府に要求

<オランダ>
国が親に対して、コロナ禍での子どもとの関わり方のアドバイスを発信

<インド>
テレビ局やラジオ局との協働で学習コンテンツの配信
オンライン対応に向けた教員研修の整備・予算約26億ルピー(約37億円相当)を確保
子ども達の精神社会的支援システムの構築(子ども・教員・保護者・学校向けのコンテンツを用意)

以下、Teach For All ネットワークの取り組み
<フィリピン>
Teach For Philippinesと協定している25の学校・コミュニティーに教員人材配備
Teach For CambodiaのCEOから、コロナ禍のオフィス運営・人材運営について学び活動に活かした

<カンボジア>
Teach For Cambodiaと協定している16校は、子どもたちの学習継続のために働きかけるフェロー達の人材確保ができた

<日本> 
オンライン授業、休校明けのメンタルヘルス・密を避けたアクティブラーニンなどに関した教員研修を実施

マクロシステム

<台湾>
失業した学生への助成金手配

<オランダ>
遠隔授業導入のための予算250万ユーロ(約3億1,500万円)確保

<インド>
オンライン学習環境充実のために予算約81億ルピー(約115億円)を確保
子ども達の栄養失調を防ぐべく、給食配達制度の導入

これらの取り組みから、コロナの子どもへの影響を抑えるためには、全てのレベルでの対策が必要であることがわかると思います。また、様々な立場の人々が子ども達のために対策を講じていることが読み取れます。

子ども達の成長を保証し、格差の拡大を阻止するためには、学習に直接関わることだけでなく精神的影響へのケアや栄養不足への施策など多岐にわたる対策が必要であることも見えてきました。OECDやユニセフも呼びかけていますが、経済面だけでなく、身体的・精神的健康のための支援も重要となりそうです。

あとがき

コロナ禍で様々な対応がされていることが分かり、小さな働きかけの積み重ね、様々な立場の人の取り組みの重要性に改めて気付きました。そして、それぞれの立場の人の「協働」の大切さも感じました。

数多くの教育課題に直面する日本、ネガティブな報道が多いのが現状です。そしてコロナの混乱に伴い、課題はさらに複雑化していくと思われます。課題の原因を「誰か」に一点的に責任転嫁するのではなく、客観的に課題の要を突き止め、アクションにつなげていくことが大事なのではないでしょうか。そして、対策を導入していくとき、政府・地域・教員・家庭が足並みを揃え、一貫性を持って一緒に考えていくことが大切なのではないでしょうか。近年、日本でも、教員や学校のみに頼る教育が変わりつつあるといいます。また、文部科学省も地域・学校・家庭の連携に向け積極的に指針を示しています。コロナの影響が深刻な今、引き続き、様々なステークホルダーの連携が重要となりそうです。

TFJはこのことを意識し大切にしながら、今後も活動に取り組んでいきたいと思います。

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まとめ

今回、新型コロナウイルスの子どもへの影響を対処すべく、あらゆるレベルでの対策の重要性を考えてみました。コロナ禍で子ども達の格差が拡大すると懸念されている昨今、様々な立場の人が対策を講じていることがわかりました。コロナは子ども達に長期的な影響を及ぼすと言われています。引き続き、有機的な対策を導入していくことが重要です。どのような対策が可能か、関われる対策はあるのか、考えていきたいと思います!

参考
Ecological Model of Human Development|Bronfenbrenner (1994) 
Innocenti Report Card 16|UNICEF
Multisystem resilience for children and youth in disaster: reflections in the context of COVID-19|Masten and Motti-Stefanidi(2020)
The Ecology of Human Development: Experiments by nature and design|Bronfenbrenner (1979)  
Timing is Everything: Coronavirus and the Chronosystem|Mulcahy (2020) 
Understanding the Most Important Facilitators and Barriers for Online Education during COVID-19 through Online Photovoice Methodology|Doyumğaç et al. (2021) – International Journal of Higher Education
コミュニティ心理学におけるコミュニティの定義とコミュニティ心理学の独自性|飯田(2014)
コロナ禍 子どもへの影響は「ストレスたまっている」との声も|NHK 
保育現場のマスク着用 子どもに表情伝わりづらいなど課題も|NHK
学校・地域連携評定尺度の開発と地域住民による評定|小泉(2000)福島教育大学紀要
学校・家庭・地域社会連携のための教育心理学的アプローチ アンカーポイントとしての学校の位置づけ|小泉(2002)教育心理学研究
学校、家庭、地域の連携と子どもたちの育ち : 三者間の予定調和を超えて|赤尾勝己(2017)関西学院大学リポジトリ
学校心理学に関する研究の動向と課題ー生態学的システム理論から見た学校心理学ー|中井大介(2016)学校心理学
政策最新キーワード:子どもの幸福度|同志社大学政策学部 藤本 
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が子どもに与える影響に対処する|OECD
ユニセフ報告書「レポートカード16」先進国の子どもの幸福度をランキング|ユニセフ

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