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【コロナ禍の教育】世界の学校ではどう取り組んでいる?ーオランダ編

新型コロナウイルスの感染拡大は、日本だけでなく世界中に広がっています。【コロナ禍の教育】シリーズの第二弾は、筆者も2年間生活していたオランダに注目してお伝えしていきます。2020年9月にユニセフが発表した子どもの幸福度では参加国中1位にランク付けされたオランダでは、コロナ禍においてどのような取り組みを行っているのでしょうか? コロナ禍の対応に見るオランダの教育を探っていきます。

EU加盟国の教育概要とオランダの学校概要

【コロナ禍の教育】シリーズ第二弾となる今回は、ヨーロッパに位置するオランダに注目してご紹介します。

2020年9月にユニセフ・イノチェンティ研究所が発表した『レポートカード16ー子どもたちに影響する世界:先進国の子供の幸福度を形作るものは何か』で、総合的な幸福度1位と評価されたオランダ。日本でもオランダの教育に関する多数の書籍が出ていることからも注目度の高い国の一つと言えるでしょう。

まずは、オランダも加盟しているEU全体の教育概要に触れ、オランダの学校制度をご紹介します。

▼幸福度に関してはこちらの記事で詳しくご紹介しています
子どもの精神的幸福度ワースト2位!ウェルビーイングとは?|Teach For Japan

EU加盟国の多様性と教育の概要

オランダは、現在27カ国から構成されるEU(欧州連合)に加盟しており、1952年設立のECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)原加盟国の1つです。EU加盟国は、北欧のフィンランドやスウェーデンから、南は地中海のマルタ共和国やキプロス共和国、東西もギリシアからポルトガルまで幅広く、24の公用語が使われています。

EU加盟国内の人口は、約4億4,682万人で、そのうち15歳以下の子どもは約6,800万人です。(日本の15歳以下の子どもの人口は、1,512万人)

PISA2018やユニセフによる幸福度の調査で高い水準にあるフィンランドやオランダなどが教育先進国と言われることがありますが、それらの国々も宗教的・文化的に異なる移民に対する教育などの課題を抱えています。

参考
統計トピックスNo.125 我が国のこどもの数-「こどもの日」にちなんで-(「人口推計」から)|総務省統計局
欧州連合(EU)|外務省
Being young in Europe today – demographic trends|eurostat

オランダの学校概要

オランダの教育における規模を把握するために、オランダの小学校・中学校における学校数と児童生徒数を確認してみましょう。

(Aantal scholen in het primair onderwijs|Onderwijs in Cijfers, Ontwikkeling van het aantal leerlingen in het primair onderwijs|Onderwijs in Cijfers, Leerlingenaantallen voortgezet onderwijs|Onderwijs in Cijfers, Aantal vo-scholen|Onderwijs in Cijfersをもとに筆者作成,2019年のデータ)

次に、オランダの教育における概要を掴むために、学校制度を確認してみましょう。

オランダは下記の図のように、複線型の学校制度をとっています。

Het Nederlandse onderwijssysteem | beroepsonderwijs bedrijfsleven, Schematische weergave Nederlands onderwijsstelsel | Onderwijs in Cijfers をもとに筆者作成)

小学校卒業のタイミングで、中学校の進路を選択します。進路は、子ども本人の意思と保護者、担任の意見を加味して決定します。また、小学校の最終学年はEinde toets(最終テスト)があり、その結果も進路選択の参考になります。

学校の運営資金は公立私立に関係なく、児童の年齢や背景、人数によって決定されます。そのため、オランダでは学校の選択は保護者の義務とされています。さらに、学校は第三者機関である教育監査局に定期的に評価されており、その評価はホームページ上でも公開されています。学校裁量の自由度が高い分、客観的な評価もされている点がオランダの学校制度の一つの特徴であることが分かります。

コロナ禍での教育現場ーオランダ

オランダでは、2020年2月27日にはじめて新型コロナウイルスの感染者が報告されました。その後、感染は拡大しましたが、初動ではロックダウンをせずに感染対策を実施しています。(2020年10月には部分的ロックダウンを実施、2020年12月にはロックダウンを実施。)

ここからはコロナ禍において、オランダの教育現場ではどのような対策が施されてきたのかをご紹介します。

政府の教育機関への政策・支援

オランダ政府は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、2020年3月15日にオランダ全土の学校と保育所を3月16日~4月6日まで閉鎖すると発表しました。それと同時に、コロナ禍においても出勤が必要な仕事に就く保護者の子どもは学校や保育所で無料で受け入れることも明らかにしています。

【学校閉鎖が決定してから1週間の動き】

*(1)Yahoo!ファイナンス外国為替計算をもとに算出(1ユーロ=約126.3円)

学校が閉鎖となった翌日の3月17日には、文部科学省とその他の教育機関と協力して遠隔授業を行うためのオンラインプラットフォーム”lesopsence.nl”がweb上に立ち上げられました。翌日にはデジタル教材を無料で利用できるようにするなど、産学官が連携して動きます。ここから、学校閉鎖中の学びは遠隔授業を軸に行う方向で動き出していきます。

また、3月18日には、4月15日~予定されていた小学校最終学年のEinde toets(最終テスト)を実施しないことを決定します。これは、学校や保育所で受け入れている子どもたちのケアとステイホームをしている子どもたちへの遠隔授業を創り上げることに教職員のリソースを注力させるためという理由に基づいています。

そして、3月20日には、家庭でラップトップやタブレットの利用ができない子どもを自治体や学校がサポートするために、250万ユーロの予算が確保されました。実際に、16,000台以上のラップトップとタブレットがサポートを必要としている子どもに届けられました。

その後、遠隔授業を軸にした学びは継続的に行われ、小学校は5月11日から分散登校をしつつ学校を再開。中学校も6月2日から少人数クラスにしての週に1回の登校、1.5mの距離を保つなどのルールに沿って部分的に学校が再開となります。

参考
Aanvullende maatregelen onderwijs, horeca, sport | Rijksoverheid
Online platform helpt scholen om onderwijs op afstand te organiseren | Rijksoverheid
Uitgeverijen stellen digitaal lesmateriaal gratis beschikbaar | Rijksoverheid
Geen eindtoets in groep 8 dit jaar | Rijksoverheid
Extra ondersteuning voor kwetsbare leerlingen | Rijksoverheid
Ruim 16.000 laptops en tablets ingezet voor onderwijs op afstand | NOS

学校・教育機関での取り組み

学校閉鎖期間中は、遠隔授業を軸にした教育が進められます。ここでは、遠隔授業の取り組みや学校再開のルールに基づいた実践などをご紹介します。

小学校では、下記の推奨事項をもとに登校しました。

・クラスを半分に分ける
・学校に行かない日も教育を受ける(宿題をするなど)
・すべての教室に消毒用ジェル・石鹸・ペーパータオル・消毒用スプレーを設置する
・保護者は学校に入らない。送り迎えは時間をづらす
・子ども同士は1.5mの距離を取る必要はない

分散登校授業とオンライン授業を並行して行っている小学校の様子

(参照:Op deze basisschool wordt weer les gegeven: maximaal drie kinderen tegelijk | RTL Nieuws

ある学校では、1日を3つのブロックに分け、なおかつ登校する児童と遠隔授業を受ける児童に分けて学校を部分的に再開しました。登校したら最初に手の消毒を行い、入口と出口を明確に分けることで、ブロックで分かれた児童同士が接触しないような工夫がされました。

中等教育では、下記を必須のルールとして登校が再開されました。

・1.5mの距離を保つ
・教職員は健康である場合のみ学校で教育に関わる
・リスクグループ(70歳以上や呼吸器・心臓・糖尿病など基礎疾患がある人)でなくても体調に関しては慎重に考え話し合う
・家族や同居人を含めてリスクグループの人は学校での教育には参加しない
・体調不良の場合はステイホーム
・教室に入るときは手を消毒する
・ロッカーは使わず、上着やバックは教室に持って入る
・食堂は閉鎖したまま

間隔を設けてランチをとっている中学校の様子(机の上には一人一つの消毒液も設置)

(参照:De middelbare scholen zijn weer open | NOS Jeugdjournaal

さらに、推奨事項として下記のようなルールも。

・教育内容は学校が決定する。すべての教科でコアのないように限定するか、遠隔では適切にできないものをおすすめする
・生徒は毎日登校しない
・学校内の混雑を避けるために、授業開始・終了時間に変化をつける
・生徒は公共交通機関の利用をできるだけ避ける(特にラッシュアワー)
・生徒は科目が変わってもできるだけ同じ教室を利用し、教員が教室を移動する

参考
Advies: basisschoolleerling geen halve, maar hele dag naar school | NOS
Protocol voortgezet onderwijs: iedereen blijft op anderhalve meter afstand | AOb

保護者へのサポート

コロナ禍におけるオランダの特徴的な取り組みに、保護者への情報発信があげられます。学校閉鎖期間中に家に留まっていなければいけないのは、子どもだけでなく保護者も同じです。また、リモートワークしている保護者も多くいらっしゃいます。そんな中で保護者が子どもにどうか関わるかのヒントがオンラインプラットフォームから発信されました。

下記は、オランダ語がネイティブでない保護者へも届くようにメッセージを一枚の絵にして発信した内容です。

(参照元:Oudercommunicatie | lesopafstand.nl
※2020年12月末現在は、保護者の関わり方をより細かくまとめられており、上記の画像は未掲載。

・あなたは先生じゃないよ(自分自身の時間も必要)
・高いハードル設定はやめよう(子どもと一緒に楽しもう)
・計画を立てよう(休憩を忘れずに)
・気晴らしも計画に入れよう(ゲームだって〇)
・学びは一生続くもの(心と向き合う時間も大切)

まとめ

オランダの学校制度は、憲法で明らかにされているように設立の自由、理念の自由、学ぶ方法の自由をベースにつくられています。そのため、学校ごとに特色があります。そのような比較的自由度の高い学校制度が根付いているオランダのコロナ禍での教育は、政府が遠隔授業で学びを継続するという大きな方針を示し、予算を確保し、弱い立場にいる子どもたちや学校閉鎖期間中の保護者の関わり方に細心の注意を払いながら対策が進められました。コロナ禍における学校現場の対策に正解はありませんが、この記事が少しでもヒントになれば幸いです。

参考
Education|UNICEF & the European Union

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