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修了生インタビュー aluminiinterview

地元和光市で、子ども達の学習支援のみならず、SDGsプロジェクトの立ち上げなど幅広く活動する

~アラムナイインパクト vol.4_関口寿子(49)_ SDGsコーディネーター、プロコーチ~

フェロー経験者であるアラムナイの今を紹介する本企画「アラムナイ・インパクト」。第4回目の今回は、子ども達の学習支援やSDGsプロジェクトに取り組む関口寿子さんです。

関口さんは現在、地元の埼玉県和光市で様々な活動をされています。その活動内容は多岐にわたりますが、今回は特に、時系列順に以下3つの実施中の取り組みと、1つの実施済みプロジェクトについてご紹介したいと思います。

1.和光市の中学生向けに、学習支援を行う取り組み『勉強カフェわこう』(2019年11月~)

2.コロナ禍で奮闘する、和光市の医療従事者に感謝を届けるプロジェクト『ありがとう循環プロジェクトわこう』(2020年4月~7月)

3.和光市で、SDGs関連プロジェクトを複数立ち上げる取り組み『わこサス』(2020年9月~)

4.不登校の中高生が通う、フリースクールの講師(2020年12月~)

フェロー経験後のキャリア形成に不安を感じている方は参考にして頂き、自身の行動次第で、様々なキャリアが描けることを確認していただければと思います。

出身大学上智大学文学部教育学科
職歴ぴあ株式会社
プロコーチ
Teach For Japanフェロー 小学校教員
勉強カフェわこう代表 (中学生の無料学習支援塾)
和光市チームSDGs「わこサス」代表(市民活動としてSDGsを実践中)
和光市環境審議会委員
和光市立大和中学校運営協議会委員

地元・埼玉県和光市で、子どもから地域まで巻き込んだプロジェクトを立ち上げる

まずは、現在の取り組みについてお聞かせください。中学生向けに学習支援活動などをなさっているんですよね。

現在の取り組みは、大きく分けて3つありますので、時系列順にお話しできればと思います。

まず1つ目は、2019年11月から行っている『勉強カフェわこう』という取り組みです。ここでは、和光市内の中学生向けに学習支援を行っています。

Teach For Japan(以下、TFJ)でのフェロー時代に、親の収入格差によって子ども達に教育格差が生まれることを目の当たりにしたのが、1つの活動理由です。また、学習だけでなく、親の子育ての考え方によって、子ども達の考え方が大きく変わることも実感しました。

そこで、学力差が生じやすい中学生を対象に、無料で学習支援が受けられる環境をつくりました。中学生は高校受験を控えるなど、これからの進路選択にも大きな影響を及ぼす大切な時期だと考えたからです。

実は、和光市内には既に1か所、同じような学習支援コミュニティがあったのですが、それは市の南側にあり、北側にはありませんでした。それなら、私たちが北側の役割を担おうと思ったんです。

この活動には、和光市のボランティアセンターの皆さんが力強くサポートしてくださいました。そのおかげで、市内在住者で中学生に勉強を教えたい、何か力になりたいと申し出てくださる方が、十分な数集まりました。

そこから地域センターを借りて、通常は月に2回開催しています。ただ、テスト前には3日間連続で開催することもありますし、受験前には週1回のペースで開催することもあります。子ども達の状況、要望に合わせて、柔軟に対応しています。

子ども達の役に立てていること、子ども達に必要とされていることを感じ、とても嬉しく、やりがいを感じながら活動しています。

今後は、小学生にも展開したいと思っています。実は中学生向けに始める前から、小学生向けにもやりたいと思っていたんです。その理由は、フェローとして小学校で勤務した際に、学力差は小学校から徐々に生じ始めると感じたからでした。

具体的には、助成金で購入したタブレットが数台あるので、小学生向けにZoomを使った学習支援を実施できないかと現在考えています。毎週決まった曜日の決まった時間に開催することで、小学生の学習の手助けになればいいなと思っています。

現在では、ノートやおやつなど寄付したいと言ってくださる方まで現れ、大変嬉しく思っています。これからも仲間たちと細く長く、続けていきたいと思っています。

現在の取り組みとは違いますが、コロナ禍においても新たにプロジェクトを立ち上げられていたんですよね。

第一回目の緊急事態宣言が発出された2020年4月に、医療従事者に感謝の気持ちを伝えたいと思い『ありがとう循環プロジェクトわこう』を立ち上げました。医師の友人がポロっと言った「(コロナで)死にたくない・・」という言葉がきっかけです。

医療従事者の皆さんに向けて、感謝の言葉を書き綴った寄せ書きを送ることを目的として始めました。一人では無理だと思ったので、仲間集めをしようとFacebookで呼びかけると、あっという間にホームページを制作してくれる人、広報してくれる人など協力者がすぐに集まり、想像していた以上の大きなプロジェクトとなりました。

また、和光市内外の企業や店舗からも多くのご協力を頂き驚きました。そのうちの1社に、茨城県ひたちなか市に本社を置くコーヒー販売会社のSazaCoffee(サザコーヒー)さんがあり、社長が割引価格でパックコーヒーを譲ってくださることになったんです。

そのコーヒー代は、和光市商工会の加盟企業からのご寄付によるものです。これらのお力添えを結集し、千羽鶴にちなんで1000パックのコーヒーを地元の大規模病院に送ることができました。この贈呈式は2020年7月に行ったのですが、病院長や看護士長等も参列くださり、各種メディアにも取り上げていただきました。

この経験から、みんな思いはあるけど、どうしたらいいのか分からないと悩み、その一歩が踏み出せずにいるんだとわかりました。

私の役割は、そんな時に旗を立てることなんだと感じています。そして、想いを持った人と人、人と企業、人と行政を繋いでいくこと、コーディネートしていくことなのだと感じています。

コロナ禍で得た気づきも基に、仲間たちと共にSDGsプロジェクトに挑戦

そのような気づきを得られた後、また新たな挑戦として、SDGs関連のプロジェクトを立ち上げていらっしゃいますね。

2020年9月に、和光市でSDGs関連プロジェクトを複数立ち上げる取り組み、和光市チームSDGs『わこサス』を始めました。2019年にSDGs先進国のスウェーデンに視察に行き、日本でもSDGsに本気で取り組まなければいけないと思ったためです。

メンバーには、先ほどお話しした、『ありがとう循環プロジェクトわこう』のHPを担当してくださった方が今回も手を挙げてくださったほか、20人以上が集まりました。現在、5つのプロジェクトが立ち上がっています。

ここでは、そのうちの3つについてご紹介したいと思います。

まず1つ目が、エシカルファッション部です。近年、ファッション業界では、これまでの地球環境に負荷をかけるモノづくりを見直す動きが見られますが、これに対して、私たちは市民レベルで出来ることを考え、実践しています。

その中で、着なくなった洋服を循環させることから始めようと考えました。これが、大人向け洋服交換会です。

参加者の皆さんに家に眠る着なくなった洋服、あるいは着ていない洋服を持ち寄っていただき、それらを交換し合いました。余った洋服は古着屋さんに売り、そこで得たお金は活動資金として使わせていただいています。これが好評であったため、今後も衣替えの時期に合わせて、年4回ほど実施する予定です。

また、子供服の需要も高いので、子供服の交換会もやってみようと思っています。加えて、制服の譲渡会も実施しようと考えています。そうすることで、洋服や制服が買えない家庭に無料で提供できます。このように、洋服からリユースの考え方を促進していきたいです。

続いて2つ目が、ブックスワップです。ここでは、本の交換会『そらよみヤミー』を実施しています。

コロナ禍において、東京都調布市の中学生が始めた活動を、和光市でも行いたいというスタッフの思いを実現しました。私たちはこれに加えて、子ども食堂の要素も取り入れています。

コロナ禍では仕事を減らされたり辞めさせられたりする人も多くいると想像しています。そのため、十分に食事を摂れていない子ども達がいると聞きました。そこで、本の交換会の横で焼き芋などを配ることにしたんです。目的が本にあれば、本当は食事が目的の子ども達も恥ずかしがったり、遠慮したりせず、来やすくなると考えました。

既に2回、練馬区、和光市内の公園で開催しており、この4月にも開催する予定です。

最後3つ目は、多文化部です。同じ和光市内の方々と共に、日本や世界について学び、自身の生活に良い変化をもたらすことを目的としています。

直近では、フィリピン・ミンダナオ島のミンダナオ子ども図書館の館長さんをお招きし、Zoomで講演会を実施しました。なんと、この館長さんは日本人男性なんです。親から虐待を受けた子どもや、戦争で親を殺されてしまった子ども達などを集めて、大学までの進学をサポートするプロジェクトを行っているほか、周辺地域で読み聞かせや植林活動もされています。

今回実施した講演会の趣旨は、この活動をサポートするということではなく、フィリピンの子ども達を通して、参加者自身が日々の生活を見直してみようというものでした。というのも館長さんは近年、日本の子どもたちの元気のなさを危惧しており、日本の不登校の子ども達をフィリピンに呼んで、元気にして返すプロジェクトも行っているという背景があったからです。

私たち主催者は、寄付金付きのチケットを販売しましたので、講演会終了後に、寄付金を進呈するとともに、エシカルファッション部で保管していた半袖Tシャツなどを送りました。

このように、様々なプロジェクトが立ち上がっているのですが、そのどれもがメンバーが主体的に活動してくれています。それぞれのプロジェクトにリーダーがいるのですが、リーダー自身がやりたいことをやっているので、自発的にプロジェクトを回していけているのだと思います。

私はサポート役として、ヒトやモノ、お金をつなぐ役割をしていますが、一人で出来ないことでも、みんなでやれば出来るということを日々体感しています。先日は、和光市議会でも私たちのこの活動が話題に上がったとのこと、大変嬉しく思っています。

その中の一つに、畑活(はたかつ)部というのもあるんですよね。寿子さんのライフワークの1つになりつつある、畑に関する活動なんだとか。

こちらもサポート役として活動に参加しています。畑活部のテーマは「循環」。その一環として、「コンポスト」を和光市内に普及させ、できた堆肥を市民農園で使えるように地域で生ゴミを土に返して、また野菜にしていくプロジェクトを始めようとしています。個人的には、週に一度、有機農家さんのところにお手伝いに行くなどして、無農薬野菜の育て方を教えてもらっています。

私の実家が、祖父の代まで札幌で農家をしており、父も本業の傍ら自宅で畑をやっていたので、畑はとても身近でしたね。幼少期は、トマトは庭の畑からとってくるものでした。そんな環境もあって、虫もへっちゃら、自然が大好きになりました。

また、夫も子どもが小さい頃から家庭菜園をしていて、コロナをきっかけに私も本気で畑作業に取り組むようになりました。今年度初めて、夏野菜から冬野菜まで1年通しての栽培、収穫に挑戦したのですが、とっても楽しかったです。

フリースクールにも参加。フェロー経験も生かして、子ども達に寄り添いながら教える

様々な活動にまい進される中、フリースクールの講師も始められたんですよね。

2020年12月から、不登校の中高生が通うフリースクール・通信教育のサポート校の講師をしています。生徒は中高生合わせて40人くらいで、その中でも私は高校生向けに情報処理の授業を担当しています。そのほか、社会に出た時に使える敬語の使い方ワークショップなども行っているんですよ。どちらも、会社員時代に培ったスキルが生きています。

フリースクールで働こうと思った理由は、フェロー時代に、学校に来ている子ども達は教員の立場でサポートできているけれど、不登校の子ども達に対しても何か出来ることはないのだろうかと、気になっていたからでした。いまは、子ども達をサポートできること、元気になる姿を見られることに、やりがいを感じています。

気を付けていることは、横の関係で関わること、素の自分で接すること、強みを伸ばすことなどです。これは、フェロー時代から変わらず大切にしていることですね。

特に、フリースクールに通っている子ども達には、発達障害の傾向がある子、友達との関係づくりに不安を感じている子など、いろいろな子ども達がいるので、フェロー経験を生かして、一人一人に気遣いながら授業をすることや、授業中のリズム感、接し方に気をつけてかかわるようにしています。

それでは最後に、今後の展望を教えてください。

今の「わこサス」の活動は、今後も続けていきたいと思っています。しかし、今はボランティア主体の団体なので、活動費や人件費が今後問題になってくると予想されます。そこで現在、法人化を検討しています。

例えば、サステナビリティと教育を掛け合わせた講座事業を興し、講師派遣サービスを行うなどして、活動資金を工面していきたいと考えています。そうやって、私はマネタイズの役割を担っていきたいですね。

また、和光市内にはフリースクールがないので、市内の不登校の子ども達は、家庭学習や市外のフリースクールへの通学で勉強している状態にあります。そこで、『勉強カフェわこう』の活動や現在のフリースクール講師の仕事を通して得られた知見で、仲間とともにフリースクールを作ることも構想し始めようとしています。そうすれば、SDGsの4番目(教育)の部分を担っていけるため、『わこサス』の活動との親和性も高まり、それぞれの活動の幅が広がると期待しています。

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