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【木村彰宏・中編】学校現場での実践〜「100人のおとな」プロジェクトの意図〜

2016/10/01 TFJフェロー

 

Teach For Japanの第2期フェロー(教師)として2年間、公立の小学校へ赴任した木村彰宏さんに、全3回のロングインタビューを行いました。(前編はこちら)中編では、フェロー(教師)としての2年間の実践について、教えて頂きました。教師や教育に関心がある方、フェロー応募を迷っている方は必見です。ぜひお読みください。

 

====プロフィール====================================

木村彰宏(きむら あきひろ)

1990年、京都府亀岡市生まれ。大学卒業後、岩手県にて復興支援NPOに就職し、岩手県沿岸の子どもたちの学習・居場所づくり支援を行う。その後、2014年4月からNPO法人 Teach For Japan の第2期フェローとして奈良県内の公立学校に教員として赴任。フェロー任期中、心の知性「EQ」育成を主な狙いとしたSocial Emotional Learning をアメリカで学ぶ。2016年3月末のフェロー任期終了を受け、現在は東京にて株式会社LITALICOに勤務。

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やりがいを感じた瞬間は

子どもが前向きに変化する瞬間に立ち会ったとき

 

木村さんが2年間、教師を経験する中で、最もやりがいを感じた瞬間はいつですか。

 

私が2年間教師をした中で、最もやりがいを感じた瞬間のひとつは、子どもたちが前向きに変化する瞬間に、一番近くで立ち会えたときです。

 

変化する瞬間といっても、「今この瞬間大きく変わった」というものではありません。子どもと継続して関わる中で、徐々に変わっていく瞬間の積み重ねを見られたことが、大きな喜びでした。

 

長期的に見て子どもたちが変化した、具体的なエピソードはありますか。

 

それこそ学級の子どもたちの数だけたくさんありますが、その中でも一つ紹介しますね。

 

印象に残っているエピソードの一つとして、感情の表現の仕方がわからずよく泣いていた子が、1年間の最後に、教室でリーダーシップを発揮するようになった、というものがあります。

 

私が担任になった初めの4月、自分の考えや気持ちを言葉で上手く表すことができず、泣いたりすることで表現してしまう子がいました。その子は、1年間の学校生活を通じて表現の方法を学び、学級の子どもたちとも上手く打ち解けていきます。

 

そして、年度末に、学級の子どもたちがみんなでダンスを練習して私に披露してくれたのですが、そのとき主導してみんなにダンスを教えたのが、その子だったのです。

 

 

初任の教師として、心がけたこと

——学校に関係する方々と、早期に信頼関係を築く

 

フェローは、新人の教師としても、教員採用試験を合格する形ではない教師としても、大変なことが多いと聞きます。大変だったことはありましたか。

 

そうですね…大変だったというより、初めから注意深く心がけたことはありました。

 

それは、赴任された学校に関わる方々と、早期に信頼関係を構築することです。

 

主に、保護者の方々とは、意識的に関係を築いていきました。

 

私は赴任した当初23歳と若く、教師としても初任者でした。そのため、大切なお子様を預けてくださる保護者の方に心配をおかけしないよう、早期に信頼関係を作る事が重要だと考えました。

 

そこで、新学期が始まってすぐの段階で、学校通信を毎日出し、家庭訪問を繰り返すことで、関係を構築していきました。

 

保護者と信頼関係を構築したことで、ご心配をおかけしないこと以外に、プラスとなったことはありますか。

 

はい。たくさんあります。

 

例えば、学級の子どもたちと新しい取り組みをしたい時、信頼関係があると快く承諾していただけ、取り組みをスムーズに実行することができました。

 

他にも、保護者を通じて、子どもたちの家庭での様子や学校生活の感想を伺えたことは、やりがいや喜びにつながりました。

 

ある日、保護者の方から、「うちの子が、学校が楽しいと言っていて、先生とお話したいから朝早く行くと言って毎日7時には家を出るんです。」というお話を伺いました。

 

先生が忙しくない朝早い時間を狙って登校したという話を聞いた時は、その子を大変愛おしく感じました。

 

こうした、子どもの本音や行動の裏話のようなものを、子どもから直接でなく、保護者の方を通じて間接的に伺えたというのは、大変嬉しかったですね。

 

 

「100人のおとな」プロジェクトで

子どもたちに人生の選択肢を広げてもらう

 

子どもたちに前向きな変化を起こさせるために、何か積極的に働きかけたことはありますか。

 

はい。私は、子どもたちの短期的な成長だけでなく、特に長期的な成長を期待して、いくつかの実践を行いました。

 

その取り組みの一つが、「100人のおとな」というプロジェクトです。

 

これは、社会の様々なフィールドで活躍している私の知人に、ビデオメッセージを送ってもらい、それを子どもたちに見せるというプロジェクトです。

 

一般企業で働く方からお坊さん、大学生など、たくさんの方からビデオメッセージをいただきました。3分程の動画の中で、自分がどんな職業(学業)をしているのかを中心に、お話していただきました。

 

なぜこのプロジェクトを始めようと考えたのですか。

 

子どもたちに、様々なロールモデルを知ることで、人生の選択肢を広げてほしいと考えたからです。

 

今まで出会わなかった大人の存在や世界を知ることで、自分の将来にはもっと可能性があることや、勉強する意義を見出してもらいたいと思いました。

 

もちろん、私自身、学級の子どもたちがどのような環境で育ってきたか、全てを把握しているわけではありません。しかし、勉強に対してモチベーションが低い子の話を聞いていると、考えている将来の選択肢が、勉強の必要性を見出しづらいものばかりであることに気がつきました。

 

例えば、両親が大学に行っていない家庭の子は、そもそも「大学生になる」という選択肢自体を考えたことがないのです。

 

こうした現状を根本的に解決するには、まず子どもたちが今までの環境から見つけられなかった、人生の選択肢の存在に気づくことが重要であると考えました。その上で、こうした他の選択肢を実現する可能性を信じ、前向きに努力する力を付けてほしいと考えました。

 

実際、このプロジェクトを通じて、子どもたちに変化はありましたか。

 

はい。まず、子どもたちが、周りの大人の職業に対して、興味を持つようになったように思います。

 

例えば、ある日、お坊さんである知人からのビデオメッセージを、子どもたちに見せました。

 

その次の日が遠足だったのですが、お寺を見る機会があり、そこにお坊さんがいたのです。

 

すると、私の学級の子どもたちはみな、「きゃー、おぼうさーん。」と、まるでアイドルに対するように、走ってお坊さんに駆け寄っていきました。事情を知らない他のクラスの子どもたちは、あっけにとられていました。

 

この瞬間、ビデオメッセージの中の「お坊さん」が、本物の「お坊さん」に対する興味・関心を駆り立てたように感じ、嬉しく思いました。

 

それは面白いですね。子どもたちの、勉強に対するモチベーションに対する変化はありましたか。

 

はい。このプロジェクトだけが要因とは言えないですが、明らかに子どもたちの勉強に対するモチベーションが上がりました。

 

当初、勉強が嫌いと言っていた子たちが、もっと勉強したいと、放課後残ったりするようになったのです。また、夏休み中、数人の子どもたちが「先生、もっと勉強教えて。」と言ってきたので、臨時で図書館を使って勉強会もしました。

 

こうした子どもたちの自発的な勉強意欲は、大変嬉しかったです。

 

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>>>>続く後編は、こちら!