【中編・今野千識さん】フェロー経験を振り返って

2016/9/03 TFJフェロー

 

Teach For Japan第2期フェロー(教師)を経験した今野千識さんに、全3回のロングインタビューを行いました。中編では、2年間のフェロー経験を振り返り、当時のことを語っていただきます。教育に関心のある方はもちろん、新卒でフェローになるか悩んでいる方、女性でフェローに悩んでいる方も必見です。(【前編】はこちら)

 

教師として直面した困難

 

実際、2年間のフェロー経験を通じて大変だったことは何ですか。

 

一番大変だったことは、全ての子どもたちが自尊心を持ち、且つ、互いの個性を認め合う学級を作ることでした。

 

私が担当した学級の中には、自分自身を否定したり、そうした自己肯定感の低さやもどかしさから、問題を起こしたりしてしまう子もいました。

 

しかし、そうした問題を起こしてしまう子の話をよくよく聞いてみると、あることに気づきました。子ども自身が一番、問題を起こしてしまったことを悔やみ、直したいけれどどうすれば良いかわからない、という葛藤に悩んでいたのです。

 

このことに気づいてからは、自分自身を否定してしまう子も含め、子どもたち全員が学級という集団の中で、自分に自信を持ち、仲間を信頼し、信頼してもらうという経験を積ませることが重要であると考えるようになりました。

 

 

困難をどう乗り越えたのか(子どもと学級の変化)

 

学級を経営する上で、子どもたちが自他共に尊重し合う雰囲気を作っていくことは、どの教師も直面する難題と聞きます。

そうした困難を、どうやって乗り越えたのですか。

 

心の底から子どもたちの可能性を信じ、子どもの行動の本質的なところにある想いを汲み取ろうと、本気で向き合い続けることにより、乗り越えました。

 

この過程で一番苦心したのは、まず私自身の核にある想いを自分で正しく認識し、それを子どもたちへ伝えることでした。自分の心の中心にある、子どもへの願いや想いを何度も問い、自分自身でしっかり噛み締めるのです。そして、そこから生まれた、子どもが持つ可能性への信頼を、子どもへ全力で伝えました。これは最初からできたわけではなく、地道で、終わりのない作業でした。

 

子どもにこうなってほしいという願いは、本当に子どものためになるものなのか。自分や学校、保護者の事情に左右されていないか。子ども自身は何を願っているのか。・・・といった問いを、何度も繰り返し続けました。

 

なぜ、この気が遠くなるような地道な作業を続けたかというと、ここまでしないと、子どもの心の深い部分には、なかなか響かないからです。

 

子どもたちは、本当に感性が鋭いです。表面上取り繕って言ったり、学校や保護者、自分の事情を考えて発したりした「外側」の言葉に対しては、子どもも必ず「外側」で返してきます。

 

反対に、私が心の底から、その子のことを思って発した言葉は、驚くほどストレートに、その子の中心に届きます。すると、少しずつですが、子どもに変化が見られるようになるのです。

 

 

なるほど。多感な時期にあたる子どもたちは、「この大人は本心で言葉を発しているか」を鋭く見破ってしまうということですね。

具体的に、「本気で向き合うことで、子どもに変化が見られた」と実感した時のことを教えてください。

 

例えば、子どもたちの中には、自分の感情を正しく理解できず、言葉で表現できない子がいました。勉強がわからなかったり、運動ができなかったりして辛いとき、自分の「辛い」という感情を自分自身でも理解できず、暴れることで表現してしまうのです。

 

このとき、表面上の正論を説いたり、きれいな言葉を並べたりしても、子どもにはほとんど響きませんでした。学校や保護者のことを考えつつ、その子を良い方へ指導しようとしても、あまり通じないのですよね。子どもの方からの返事も、教師の事情を考えてくれた、表面上の言葉だったように思います。

 

しかし、様子をよく見て、ゆっくり話をすると、子ども自身が一番自分を責めていて、成長したいと願っている瞬間が、垣間みられました。私はその瞬間、その子の中に眠る、大きな可能性を感じずにはいられませんでした。

 

こうした子どもの本音や可能性に気づいてからは、自ずと、周りの事情からでなく、子どもと一対一の関係から生まれた言葉をかけるようになりました。その子を一人の人として、心の底から受け入れ、愛しい大切な存在だと伝えました。そして、その後の子どもの様子を見ることにより、さっき発した言葉は本当に心の底からその子のことを想った言葉だったのかを、常に振り返り、自省しました。

 

すると徐々に、子どもが私を信頼し、子どもの方から自分の感情や考えを、言葉で表現してくるようになりました。無口だった子が、「先生、昨日こんなことがあったよ」と話かけてくれるようになったのです。

 

この瞬間の喜びは、今思い出しても涙が出るほど、鮮明に覚えています。

 

 

子どもたちと「本気で向き合う」のは、言葉では言えても、実際にするのはとても難しいことなのですね。こうした一人の子どもの変化は、最初におっしゃっていた「全ての子どもたちが自尊心を持ち、且つ、互いの個性を認め合う学級」につながりましたか。

 

はい。大きくつながりました。

 

先ほど申し上げた、ある子どもに変化が見られ始めた頃、周りの子どもたちにも大きな変化が見られました。

 

子ども同士が、互いに互いを受け入れる姿勢を持つようになったのです。ある子が、上手く感情を表現できずに暴れてしまっても、「でもこの子は、本当はこんな良いところもあるから」と許したり、「この子はここが苦手だから」と助けてあげたり。学級全体で、互いに強み・弱みを受け入れ、助け合おうという空気が出来上がっていきました。

 

この学級全体の変化には、私自身驚きました。教師が子どもたちへ接する姿勢を、周りの子どもたちもよく見ていたのだと思います。

 

よく、学級の子どもたちは担任教師の鏡と言います。これは、私自身も深く実感しました。自分が頑張れば、頑張った分だけ子どもたちに反映される。反対に、ネガティブなことも全て子どもに反映されてしまいます。

 

 

今野さん自身に訪れた変化

 

こうした学級全体の変化を通じて、今野さん自身に変化はありましたか。

 

この、教師の状態=子どもの状態を実感してからは、私自身にも大きな変化がありました。

 

自分自身のことをもっと大切にしようと考えるようになったのです。もっとこうすれば良かった、といった反省を毎日していると、あるとき、自分の自己肯定感が低くなっていることに気がつきました。すると、すぐに子どもたちにも影響し、子どもたちの自己肯定感も低くなっていたのです。

 

そこで、私はどんなに失敗しても、反省はするものの自分を責めたりせず、自信を保つよう心がけるようになりました。また、頑張りすぎにも気をつけるようになりましたね。私が頑張りすぎると、子どもたちも頑張らなくてはいけないという雰囲気を自ずと作り出してしまい、子どもが閉塞感を覚えるからです。

 

嬉しいことも、苦しいことも、一つ一つの経験に、自分なりの価値を創造し、笑顔で子どもたちと接するようになりました。するとその笑顔や充足感が子どもたちにも伝わり、子どもたちも明るくなったように思います。

 

 

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