• twitter
  • Facebook
  • 教師に応募する
  • お問い合わせ

【教育の最前線から④】「宿題をやる理由を知りたい」と言われ、こう答えた。

2016/5/22 TFJフェロー

 

小学校で3年生の担任として赴任しているSフェローが、教室での出来事をきっかけに感じたことを書いてくれました。教師として、試行錯誤しつつも、伝えたいことを伝えようとする姿と子どもの様子、そして教師と子どもとの関係が伝わってくる、あたたかい内容の記事です。

「本当は、宿題なんてどうでもいいと思ってる」

私のクラスには、宿題をいつも持って来られない子がいる。

 

もちろん、教師としての働きかけは一通りやったつもりだった。例えば忘れないように連絡帳に書かせても、持ってこなかったら休み時間がなくなるというルールが決まっても、叱られて悔しくて泣いても、結局はやってこない。

 

最近は、「宿題をやってこられなかった理由」と「次からどうするか」を作文に書かせることを試しているのだけど、今日の作文は・・・まぁ、あまりに適当すぎた。そこで、こりゃ一回話を聞いてみよう、と。

 

「これ、本当はどう感じているの?」

 

と、聞いてみた。話すと彼は少し涙目になりながらこんな本音を打ち明けてくれた。

 

「本当は、宿題なんてどうでもいいと思ってる」

 

ほぉ・・・こりゃなかなかの勇気だなと思った。これまで指導をしてもやらなかったということは、どう考えてもそれが本音だし、正直なことを言えば、そんなことは始めからこちらも分かっていたのだった(笑)。

 

続けて、

 

「宿題をやる理由を知りたい。だって学校で全部やったらいいやん。なんで家に帰ってからもやらなあかんの?」

 

と、話した。素晴らしいなと思った。言われたことを言われたようにやる、ということに疑問を持つことが少ないこの年代で、ここまで率直な疑問を持ち、それを口にできるのはなかなかできないことだと感じた。

 

迷いつつ、こう答えた。「エビングハウスって人が・・・」

とは言っても、関心だけしていればいいわけではない。教師なのだから、それを適切な指導につなげる必要がある。瞬時に色んな対応の選択肢が頭の中を流れた後、こう口にした。

 

「エビングハウスって人が発見したグラフがあって、人の記憶って放っておくと一瞬でなくなっちゃうんだって言うんだよね」

 

そう言って、明日から始まる運動会のプリントの裏にグラフを書いた。

 

「せっかくお前が一生懸命覚えたことが、1時間、3時間と経つとどんどん忘れていって、一日経ったら、もうほっとんど覚えてないんだよ。これってもったいないよね。だから宿題をして思い出すことでそれを食い止めるんだ。」

「でも、宿題をなぜやるのって素直に聞けるっていうのは、素晴らしいことだよな」

 

なぜそうしたのかは自分でもわからないのだけど、ここで反復学習についてしっかり話をしてみようと思った。自分としても宿題について個人的に思うことはたくさんあるものの、一つの事実を教師として正確に伝えることの意義を感じたのかもしれない。

 

そう話すと、

 

「何もせんかったら、やったことが0になっちゃうってことか」

 

と、彼はまんざらでもないリアクションだった。これにはこちらも意外だった。

 

もう給食の時間が始まっていた。みんなは大好きなカレーを食べている。ここまでの気づきを与えられたなら、教師として一旦は「引き際」だと思った。ここから先は、彼自身がどのようにするかだと思った。数日様子を見てみようかな、と。

 

「じゃあ給食食べようか」

 

そう話して、会話は終わった。

 

「今、脳が活性化しとる!」

そしてしばらくたったそのあとの昼休み、ある別の男の子が「漢字道場」という漢字の復習プリントにハマって、何枚もやっていた。

 

彼は3枚、4枚と同じプリントをがむしゃらにやっている。「◯◯くんは今、脳が活性化しとる!」と、先日宿題について話をした彼が口にした。きっと、彼の頭の中には忘却曲線があるに違いないと思った。

 

そして放課後、私が教室で寒い寒いと言っていたら、その子がパーカーを肩にかけてくれた。彼は居残って、宿題分のドリルを学校で終わらせてから帰っていった。「宿題」として家でやることはしなかったが、学校の授業をやった後に勉強をする意義は感じてくれたのかもしれないと思った。あるいは、せっかく勉強したことがゼロになるのだけは悔しいと思ったのかもしれない。

 

彼は、明日も宿題をやってくれるだろうか。それこそ、忘却しないといいのだが…。こちらも、また何度か働きかけていこうと思った。子どもに対して叱ったりペナルティを与えたりしてやらせるだけではなくて、こういう指導の仕方をしていきたいと思った出来事でした

(S)